File4―14 怪力強盗と血色の悪魔 〜俺/探偵の存在理由〜
〜レフト・ジョーカー〜
俺達は王城に泊まり込む事になった。
怪盗ダッシュは追い返せたが、恐らくヤツは再びやってくるだろう――そう考えて、セルベールが手筈を整えてくれたのだ。
セルベールが、俺達を部屋に案内してくれた。
「うっひゃあ、豪華……」
エルが息を呑む。
その部屋は、何というか……一言で表現するなら『すげぇ』としか言い様がない部屋だった。
照明は高そうなシャンデリアだし、まず天井高いしめっちゃ広いし、壁とか床とかめっちゃ白くてこう、すげぇ。
ベッドも寝転がらなくても、見ただけでわかるくらいにふかふかそうだ。
「……すげぇな」
「この国のトップですからね、ここは。レフトさんもごゆっくりくつろいでください」
「……ごゆっくりくつろげるかな……」
正直、ここまで広くて高級そうだと、くつろぐなんて出来なさそうだ。ドキドキしてそれどころじゃないだろう。ベッドで寝返り一つうてないかもしれない。
セルベールはイラ達に近づき、扉を指し示した。
「女子の部屋はあちらになってます。鍵も完備してますので、安心できると思いますよ。お食事はお手伝いがお持ち致します。お風呂とお手洗いは客間に一つずつ配備されてるので、ご自由にお使いください」
「あっ、あっちかぁ! イラちゃん、行こ行こっ?」
イラとエルは仲良く向こうの部屋へ走っていった。
俺は嘆息し、セルベールに苦笑した。
「こんなに豪華だと、落ち着けやしないかもな」
「そうですか? 他にも部屋はありますから、部屋が吹き飛ぶようなことさえなければどれだけめちゃくちゃになっても構いませんよ?」
「俺が気にすんだよ……」
俺は苦笑した。
とりあえず背負っていたライトをベッドに寝かせてやる。
「ありがとな、セルベール」
俺はお礼を言った。
しかし、そんな俺をセルベールはキョトンとした顔で見つめてきた。
「……何だよ」
「いえ……何かありましたか? なんか落ち込んでるように見えますけど」
「……流石は王子。鋭いな」
俺はセルベールに促され、ソファに座る。
セルベールがコーヒーを入れてくれたので、それを飲んだ。……セルベール王子にコーヒー入れてもらうとか、今朝起きた時には考えもしなかったな。それくらい、濃密な一日だった。
コーヒーの味はこれまた格別で、豆も最高級品なのだろうが、それ以上にセルベールの腕がいいんだろうと思わせる程に香り高く味わい深い一品だった。コイツコーヒー入れるのも上手いのな。
「レフトさん、砂糖まだ入れます?」
「さ、流石にもういいよ」
「けど、欲しいか欲しくないかで言うなら……」
「……欲しい」
セルベールが満面の笑みで砂糖を追加してきた。コイツ、俺を糖尿病にするつもりじゃあるまいな。
砂糖を入れたコーヒーをマドラーでグルグルと混ぜたセルベールは、そのカップを俺に渡して言った。
「……良ければ話聞きますよ?」
……セルベールのその言葉に、俺は確かに揺れかけた。
正直、誰かに甘えたい気持ちもあった。だが、甘えさせてくれる……とは違うが、そう言った気持ちになった時にそれを慰めてくれるライトは今、ベッドで眠っている。
……話した方が、いいのかな。
俺が迷っていると、セルベールは少しだけ微笑んだ。
「今回、僕がこの部屋を準備した理由。おわかりですか?」
「……怪盗ダッシュへの警戒のためだろ?」
「それは、建前です。本音は……」
そう言うと、セルベールは俺の手を取って続けた。
「……初めて出来た友達と、もっと話したかったからです。なのに、いざこうして来てみたらレフトさんはしょんぼりしています。これは友達としてはほっとけません」
「……そっかぁ。そうだよなぁ。なら……話そうかな」
俺はぐっと伸びをした。なんていうか、血が巡っていく感じがした。
そして俺は、先程起きた事を、ゆっくりと話し始めた。
****
〜タレイア〜
どうも、お久しぶりです。
第一王女リナリア様の執事、タレイアです。
お忘れの方は、File4―7をお読み頂ければ……って、私は一体何を言っているんだ? Fileって何なんだ。
同時に、私の頭の中にいくつかの情報が。
作者が、今まで存在を忘れてた……?
せっかくだから、セルベール様が話すタイミングで戦闘の続きを……?
何だこの情報は?
私は首を傾げたが、謎の焦燥感を得たのも事実だった。
「……まぁいいでしょう」
それより今は、目の前の白いスライムのようなナニカだ。
私は我らが王城の屋根の上に、不振な人物を発見した。それを私が追いかけ、何をしていたのかと問い詰めると、その不審人物は試験管からこの白いスライムのようなナニカを二体出して逃げてしまったのだ。
この白いスライムみたいなナニカ……仮称『白スライム』とでも名付けますか。白スライムを放っておく訳にもいかない。
白スライムは私に襲いかかってきた。
「全く……何回目なのですか」
私は白スライムを蹴り飛ばし、左手を屋根を転がっていくそれに向けた。
左手に、花びらのようなオーラが収束していき、やがてそれは一つの花束になった。
私は呟く。
「『滅却羅光花語』」
その途端、左手の花束は光り輝き――そして、極太の光線を放った。
色とりどりの光線は白スライムを飲み込むが……
「……やはりダメですね」
……白スライムはやはり死ななかった。
どうすれば死ぬんだろうか。さっきからずっと、何度も殴って蹴って消し飛ばしてを繰り返しているのだが、すぐに再生してしまう。
「しかも二体……面倒ですね」
私は背後から迫ってきたもう一体の白スライムを回し蹴りで対処する。
さっきまでなら、それだけで白スライムを蹴り飛ばすことが出来たのだが……。
「――!?」
白スライムが、足に絡みついてきたのだ。
私はそのまま足を取られ、無様に屋根の上を転がってしまう。
「くぅ……私とした事が」
私は即座に体を花びらの塊に変化させた。
白スライムも、絡め取っていた私の足が急に幾重もの花びらになり、散っていったので驚いているようだった。
花びらの塊となった体は、夜風に吹かれて形を崩し、天へと舞った。
今宵は月が綺麗だな――そんな事を思いながら、私は体を収束させる。花びらが再び人型に集まっていき、そして私へと変わった。
これは私の取っておきの一つ。体を花びらの塊にして散らす事で、敵のありとあらゆる攻撃を無力化させることが可能だ。
銃弾が来ようと斬撃が襲おうとも、花びらをただ散らすだけ――そして、相手が大振りの隙を見せた瞬間、再び人型に戻り渾身の一撃を放つ。
それが私の必勝パターンの一つだった。
この花びらの弱点としては、炎などで一気に全て燃やされるなどすると、やはり花びらなので大きなダメージを負ってしまう事くらいか。
だが、眼下の白スライム二匹はそういう攻撃はしてこない。
私は天空から白スライムへ、月をバックにカカト落としを食らわせる。
「『風吹万華桜』」
私の渾身の一撃は、白スライム二匹を押し潰し、白の屋根にべしゃりと貼り付けた。二匹の白スライムは押し潰された結果、完全に一つとなり、屋根に色づくただの白塗料になった。
そんな状態になった白スライムに、私は更に手を突き出す。まだ、殺りきれていないからだ。べちゃり、と手袋をつけた手に白スライムがへばりついた。
「『散華妖々詼諧』」
そう私が呟くのと同時、私の手の触れた先から、白スライムはどんどん色とりどりの花びらと化し、夜風に吹かれて星空に舞い散っていく。
それはとても幻想的な光景であり、私の“屋根掃除”のお終いを彩るフィナーレだった。
「さて……結構疲れましたね。お嬢様、怒ってなきゃいいけど」
私は即座に城の中へ……リナリアお嬢様の部屋に戻る。
しかし私は、案の定城内が喧しくご立腹であったリナリアお嬢様の鬱憤晴らしに付き合わされる羽目になったのだった……。
「じゃあタレイア。今から私は貴方を縛るから、大人しくしてなさい」
「……はい……」
「あら不満気ね。騒がしくしたお仕置き、別のにする?」
「ハハハマサカ。ゼンゼンヤルキデスヨー」
そもそも、お嬢様の部屋の近くで騒いだのは私ではないため、私は全く悪くない。
しかし、お嬢様にとってはそんな事は関係ないのだ。ただただ、日頃の世界への恨みを私で晴らすのみ……私はお嬢様にとって、憂さ晴らしのサンドバッグのような存在なのだろう。
私を縛り終えたお嬢様は、身動きの取れない私を窓からベランダへと蹴り飛ばした。縛られているため受身も取れずに、私は無様に倒れ込んだ。
「お仕置き。一晩寒空の下で反省なさい。後、風邪引かないように気をつけなさい」
「はい、引かないように頑張ります」
そう言うとお嬢様は窓を閉め、鍵をかけてカーテンを閉めた。
……私は、天人族の使いであり、かなりこの世界でも上位の存在であるはずなのに……どうしてこんな……。
頬に一筋、生温かいのにどこか冷たい、そんな何かが走る。それは少しだけしょっぱかった。
「ハクシッ! ……夜風と月の光が、身に沁みますねぇ」
三月後半とはいえ、まだまだ夜は冷える。
私は星空と、未だに舞い散る元白スライムである花びらを見ながら鼻をすすった。
……私、一方的に可哀想だなぁ。
そう自分自身に同情し、涙を流しながら……。
****
〜レフト・ジョーカー〜
「……って感じ」
俺は今まで起こった粗方をセルベールに話し終え、コーヒーをすすった。
俺が二ュエルに負けたこと。ライトが怪盗ダッシュに負けたこと。バーン・アイシクルの野郎にその弱さを指摘されたこと。他にも、色々……。
「やっぱり、この事件から手引いた方がいいのかな」
俺はコーヒーを飲み終え、ため息をついた。
セルベールはおかわりを注ごうとしたが、これ以上飲むと眠れなくなりそうなので手で制した。
「……俺達、やっぱり憲兵の劣化版なのかな。探偵って、何のためにいるんだろ」
なぜだか、ボロボロと心のわだかまりが言葉になって漏れ出てくる。奥底に秘めた弱音が、軋む。
セルベールが聞き上手なせいだ。俺は髪を掻き乱した。
「……僕はそうは思いませんよ」
セルベールは、俺にそう言った。
コーヒーをぐいっと一気飲みし、セルベールは続ける。
「憲兵って、具体的に動き始めるのに結構色々と手続きとかが必要なんです。国からの許可とか、色々とやらなきゃいけなくて」
「……まぁそうだろうな」
「だから、どうしても取り零す事件とかあるんですよね。例えば、ストーカー被害とかは問題です」
そういや聞いた事がある。
憲兵にストーカー被害を相談しても、大抵はまともに取り合ってはくれない……という話。
いや、それだと語弊があるか。一回目は『様子見』の判断を下されてしまう……そう言った方が正しいか。
「ストーカーって、実は勘違いでした〜って事も多いんです。もし、相談を受けて動いたストーカー被害が勘違いだったら、色々と踏んだ手続きが、それに費やしたお金と時間が全て無駄になってしまいます。その手続きのお金と時間で、他の重大な事件を解決できたかもしれない」
セルベールは目を伏せた。
……本当は、セルベールも勘違いであろうがなかろうが、全てのストーカー被害を解決したいんだろう。だが、セルベールは既に大人の事情というヤツを知りすぎている。だから、どうしても現実的な判断しか下せない……。
精神的には大人になっても、体と心の根っこはまだ子供。子供の部分が理想論を吠えても、大人の部分がそれを強引にねじ伏せる。それがセルベール・ウィンダリアという男なんだ。それがどれほど辛いものか、俺には想像することは出来なかった。
「被害者の都合や事情を無視し、完全に損得勘定だけで動くのは、あまり褒められたものではありませんが……それでも、損得勘定で動かなければ組織は破綻してしまうのです」
セルベールはそう、自分に言い聞かせるように言った。
俺はそれを黙って見ている他出来なかった。
「だけど……探偵は、違うでしょ?」
セルベールの目が、少しだけ希望に光った。
それは縋り付くような瞳。ヒーローの背中に憧れるような、そんな瞳だった。
もしかしたら探偵を侮辱しているように聞こえるかもしれません。そうセルベールは前置きし、語り始めた。
「探偵は、国からの許可とかは必要ありません。だから、すぐに捜査に突入できる……被害者の方に、寄り添ってあげられる。そこが、憲兵と探偵の一番の違い……利点だと、思います」
俺は、セルベールに同調した。
何となく、勇気づけられた気がした。
「……そうかもな」
「僕にとって、レフトさん達探偵は救世主に見えるんです。この人達なら、僕の夢見た理想論を……僕が諦めたそれを、実現してくれるんじゃないかって」
セルベールは少しだけ頬を染めてぽつぽつと語る。
なんだか、くすぐったい。
俺は身動ぎした。
「確かに、バーンさんからしたら探偵は劣化版なのかもしれません。けど……劣化版だからこそ出来る事もあると思う」
セルベールの語気がだんだん強くなる。
俺を励まそうとする気持ちが、強く伝わってきた。
「レフトさんにはこの事件は降りて欲しくない。これは友達の義理とかではなく……人の上に立つ者として。この国の第一王子として、貴方にこの事件を任せたい」
「……セルベール」
「探偵だから出来ること。それは必ず存在するから……だから、そんな弱気にならないでください」
――そうか。
探偵だから……劣化版だから、出来る事。
それはきっと、憲兵には出来ない事。
俺は、自分の存在意義を見つけた――そんな感覚を覚えた。
「ありがとな、セルベール!」
俺は居ても立ってもいられなくなり、ソファから立ち上がって駆け出した。
「えっ、レフトさん、どこ行くんですか!?」
「あの野郎の所、行ってくる!」
言わなきゃいけない。
今、セルベールに言われて気づいた事。それを、アイツにも……バーン・アイシクルにも、伝えてやる。
俺はドアを蹴破るように開け、廊下を駆け出した。
「あ、セルベール! 暇だったら、ライトが目覚めるかもしれねぇからここいてくれ!」
最後にそう、付け足して。
****
〜セルベール・ウィンダリア〜
「あ、セルベール! 暇だったら、ライトが目覚めるかもしれねぇからここいてくれ!」
「えっ、ちょっと!?」
そう言うとレフトさんは外へと出ていってしまった。
……僕は一人、取り残される。
いや厳密には眠っているライト・マーロウさんを含めて二人だけど。
「……まぁ、今夜は暇なのでいいですけど」
そう言いながらも、落胆は隠せない。
そもそも、今夜僕が無理して暇を作ったのは、初めて出来た友達であるレフトさんとゆっくり話したかったからだ。
なのに……出ていってしまうとは。
「なんて言うか……無鉄砲というか、火の玉小僧と言いますか」
ぶつくさと自然と不満が漏れ出てくる。
僕は思ってたよりも落ち込んでいるらしい。
僕は自分自身に苦笑した。
「はぁ……寂しい」
ソファの上で体操座りになって、膝の間に顔を埋める。
レフトさんに昼間言われた『案外寂しがり屋』という言葉がグルグルと脳内に渦巻いた。
「……別に否定はしませんけど。けど、ねぇ」
ため息一つ。
僕はヤケになって二杯目のコーヒーを飲んだ。
寝れなくなっても構うもんか。フンだ。
そう僕がやけ飲みしていると――ライト・マーロウさんが寝ているベッドが、動いた。
「……聞いてたよ。王子様」
声が、響いた。
紛れもなく、この声は、多分――
「寂しいんだって? なら、僕が話し相手になってあげるよ――」
――ライト・マーロウさんが、目覚めた。
彼はむくりと起き上がり、僕を見据える。
謎の圧を感じる視線を受けながら、僕は僅かにたじろいだ。
「あ、タメ口になっちゃうけど構わないよね? ……レフトはタメ口なんだし」
「え、ええ。どうぞ」
何故だろうか……言葉の節々に、トゲを感じるというか……冷たい風のような言葉が僕を貫いていくような、そんな感覚。
僕は自然とライト・マーロウさんの視線から目を外していた。
「さ、話そうか。とは言っても、何を話そうか……キミから話しなよ。生憎僕にはまだキミと話す話題がないしね」
……あ、多分僕、この人に快く思われてないな。
今更気づいた事実に、僕は頬を引き攣らせた。
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【小話】〜レフトとセルベールが話している間のイラと映瑠のガールズトーク(女子は別室)〜
「……広いねぇイラちゃん」
「ベッドもふかふかですよ。なんですかコレ」
「これが王家のベッドなんだね!」
「こんな高そうなベッド、逆に落ち着かなくて寝れなくなりますよね」
「あははわかる。イラちゃんと枕投げしたかったけど、無理そうだね……」
「どんな枕でも枕投げはしませんよ私……」
「えっ何で!? 楽しいよ枕投げ!」
「枕投げすると、寝る時絶対枕がゴワゴワするじゃないですか! 枕がゴワゴワすると悪夢とか見ちゃうでしょ!」
「イラちゃん意外と繊細なんだね……」
「意外とってどういう意味ですか意外とって」
「まぁ大丈夫だって。怖い夢見ちゃったら、私が一緒に寝てあげるよ〜?」
「子供扱いしないでください! 例え怖い夢を見ようとも、一人でも寝れますから!」
「ホントかな〜? レフトくんみたいに、強がってない?」
「ホントです! 私と探偵さんを一緒にしないでください!」
「……ていうか、イラちゃんってなんでレフトくんの事『探偵さん』呼びなの?」
「……え?」
「いや、なんか他人行儀じゃない? その呼び方」
「そうですか?」
「いやまぁ、二人共かなり仲良いとは思うけど」
「いや仲良くないですよ別に……」
「仲良いよ。この前イラちゃんが居眠りしちゃってた時、レフトくんも寝てたんだけどさ。二人共同じポーズしてたよ」
「そっ、そんなのたまたまでしょ!? 有り得ませんから、あんなのと仲良いなんて!」
「口で否定するなら、体に聞くまでだよ――!」
「えっちょっ、待って、何を――あははははははははは!?」
「くすぐり拷問の刑だ〜! 正直に言うまで、くすぐるぞ〜!」
「ちょっとそんな所、やぁん! ひぅ、首だめ首、そこ敏感ですからっ……っ! ひゃっ、どこ触ってんですかぁ、んっ」
「無駄に喘ぎがえろいぞイラちゃん! ここはどうだ、えいやっ!」
「ひゃあああああ!? やだっ、太ももだめ! やっ、耳に息吹きかけないでください……あうっ」
「どこくすぐってもいい反応するねイラちゃん……全身敏感なんだねぇ……女の私でも……若干、……興奮してきたよ」
「息荒くなってませんかエルさん!? あふっ、脇腹っ、あっ、つんつんするのやめてっ、んっ」
「あ、まだ脇くすぐってなかったね。そいやっ」
「はっ――あははははははははははははははははダメダメ待って待ってあははははははははは!?」
「ふふふ、まだまだ夜は長いよ……? ……ってあれ、なんでイラちゃんをくすぐり始めたんだっけ」
「……っ、しっ、知りませんっ、覚えてませんっ」
「まぁいっか。ほれほれほーれほれほーれ!」
「やっ――やあああああああああああああん!?」
――この後めちゃくちゃケンカした――




