File2―0 その女、転生者につき 〜機械の相棒と転生少女〜
ヒロイン2人目です。ポニーテールでリストバンドがトレードマーク……?
〜レフト・ジョーカー〜
どうも、俺はクールでハードボイルドでめちゃんこカッコいい探偵、『レフト・ジョーカー』だ。
さて、これまでの状況を整理してみよう。
一つ、肉屋の娘で成長途中の発展途上(笑)な、『イラ・ペルト』が俺の助手になりました。
個人的にイラを助手にするのめっちゃ嫌だったけど、地味に交渉というか、脅しが上手いんだよイラの奴。
なのでまぁ、今回は負けてやったというわけだ。もっとやれば本当は俺が勝ってたけど、イラの熱意に免じて負けてやったのだ。
……だから決して、イラの拳の風圧とセクハラ探偵レッテルにビビったわけではない。
二つ、俺がイラが助手になったことを調査報告書に追記したら、何故かイラが俺を殴り飛ばした。殴り飛ばされた俺は見事にゴミ箱にホールインワン。不意打ちだったとはいえ、我ながらダセェ。
しかし、俺はただ単に報告書の最後の行に『肉屋の娘なのに乳に肉から摂取した脂肪分が全く貯まらないうるさい少女、イラ・ペルトが助手になった』……と書いただけなのに、あそこまで怒らなくてもいいと思う。
三つ、俺がイラに殴り飛ばされた瞬間、俺の相棒であり、【機人族】の『ライト・マーロウ』が帰還。長期滞在が必要な依頼だった為、会うのは二週間ぶりくらいになるか?
ライトにはとりあえず今さっき書いた調査報告書を読んでもらい、今の状況を理解してもらった。報告書を閉じた時にイラの胸をちらっと確認してたから、多分最後の一行まで読んだと思う。
まぁ要するに『助手が怒って俺を殴り飛ばした瞬間に相棒が帰ってきた』――ただそれだけの事だ。
「……しかし、キミに助手ができるとはねぇ」
俺達は今、テーブル席に座っている。
俺とイラの座っている向かい側に座るライトは、興味深そうに俺とイラの二人を見据えた。
イラには、ライトが報告書を読んでいる間に簡単にライトの事を紹介してある。
イラは少し緊張した面持ちでライトを見つめていた。
すると、ライトはイラに話しかける。
「で、キミは……ペルトさん、でいいかい?」
「あ、いや、普通に名前を呼び捨てでいいですよ」
「じゃあ、折衷案という事で……イラちゃん」
「あ、じゃあイラちゃんで……」
……『ペルトさん』と『イラ』の折衷案が『イラちゃん』? よくわからんが、まぁ別に蒸し返す程の問題でもないか。
「僕の事は気軽にライト、と呼んでくれて構わない」
「じゃあ、ライトさん」
「さん付けはちょっと落ち着かない。呼び捨てにしてくれたまえ」
「じゃあ……ライトくんで」
「くん付けか……まぁ、それなら」
どうやら議論は終わったようである。
俺はソフト帽を被り直し、イラの頭に手を置いてバシバシと叩きながら、この場を纏めることにした。
「ま、そーゆーこった。コイツ、助手になったんでよろしく」
「ちょっ、バシバシやめてくださいっ!」
バシーン! と、俺の手がイラの剛腕によって叩かれた。
痛ぇ……! こいつホントは【地人族】だったりするんじゃねーの?
そんな事言ったらまたぶん殴られそうなので言わないが。
「さて、と……それじゃあ、ライトは今回の依頼の報告書頼んだぜ」
俺はそうライトに告げると、その場から立ち上がり、暇だし散歩でもしようかとドアの前に移動した。
すると――
「すみませんっ、今、何年の何月何日何曜日ですかっ!?」
バァン! と、扉が開かれた。
ちなみにうちの喫茶店のドアは内側に開く観音開き式のドアだ。
まぁだから、このように勢い余って喫茶店に突っ込んでくるバカがいた場合、ドアの内側にいた人間はそのドアと激しいキスを交わすことになる……即ち、今回の例に則って言えば俺がその被害者だ。
「ウばぁッ!?」
俺は後ろへよろめき、激しく打った顔面を抑えながら倒れた。
鼻血出た……鼻折れたかも……痛い……。
「うあっ、は、鼻血が、あああああ!?」
「えっ、探偵さん落ち着いて、とりあえずティッシュです!?」
涙目で、鼻血が垂れないように上を向いてあたふたする俺に、イラがあたふたと俺にティッシュを渡してくる。
そんなあたふたな俺達を横目に、ライトはいきなりこの喫茶店に突っ込んできたバカを冷静な目で見据えた。
「……ふむ。急にどうしたんだい、お嬢さん?」
両方の鼻の穴にティッシュを突っ込んだ俺は、ようやくそのバカを見る事が出来た。
そのバカは、女だった。ポニーテールに結んだ黒髪に、黒い目に……着ているのは、学校の制服だろうか? この辺の学校のものではないが……後、両手首にスポーツ用のリストバンドを巻いていた。左腕なんてリストバンドと腕時計が両方とも巻かれている。左腕のリストバンドは、見栄え的にも取った方がいいんじゃねぇか?
まぁとにかく、そんな少女があたふたとこの喫茶店に飛び込んできたのだ。
少女は続けて聞いた。
「今、何年の何月何日何曜日ですか!?」
「今は二〇五〇年の三月二三日、水曜日だが……一体全体、どうしたんだい?」
「……時代は合ってる? タイムスリップした訳じゃ、ない……」
少女は落ち込むように深く項垂れて、何かブツブツ言い始めた。
いや、考え込む前に謝れよ……俺、鼻の両穴から鼻血出てんだけどアンタのせいで!
手をわなわなと震えさせていると、イラが慌ててその手を隠し、俺にこそっと話しかけてきた。
(探偵さん、落ち着いてください!)
俺も負けじと小声で応戦する。
(これが落ち着いていられるか! 鼻血が出てんだぞ!)
(もう! ハードボイルド気取ってるならそれくらいで動揺しないでくださいよ!)
(気取りじゃねーよ正真正銘ハードボイルドなんだよ俺はー!)
(もうそれでいいからじっとしててください!)
(それでいいって、そんなどうでもよさげに言うな! バカ!)
小声で口喧嘩が始まった。
ライトは何か面白いものでも見るかのようにこちらをニコニコしながら見ているが、気にしない。
俺とイラは、互いに互いを言い負かすことだけを考えていた。
(バカって言いましたねー!? ブーメラン発言って知ってますか、バーカ!)
(はァっ!? バカって言う方がバカなんだよ、このバカ!)
(じゃあ探偵さんもバカじゃないですかバカバカ!)
醜きバカバカ応酬が始まった。
……何やってんだろう、俺達。
心ではわかっていても、プライド的に一歩引くことが出来ない。俺達は互いに互いを『バカ』の一言だけで罵り合っていた。
そんな俺達を見ていられなかったのだろう。ライトがため息を吐き、俺達に苦笑した。
「……ねぇ、レフト、イラちゃん。小声だけどすごくうるさい」
「ライトは黙ってろ!」
「ライトくんは黙っててください!」
「わお。仲良し」
「「仲良くない!」」
ピッタリとイラと言葉が揃ってしまった。これではまるで俺とイラが仲がいいみたいじゃないか。
俺とイラは、互いにそっぽを向き、鼻息を荒くした――って、鼻息荒くしたせいで俺の鼻に詰めてたティッシュがミサイルみたいに吹っ飛んだ!?
ああああ鼻血がティッシュなくなったからポタポタ垂れてきた……うわぁズボンについた、これシミになるよな畜生!
お気に入りのズボンが……最悪の日だ……元はと言えば――って!
「って、そもそもお前は誰なんだよッ!」
俺はようやく、今の状況を混乱に貶めた元凶――即ち、喫茶店に突っ込んできたバカ女を指さした。
バカ女は、ビクッと肩を跳ねさせた後、ハキハキと自己紹介を始めた。
「あっ、うん! 私『園寺 映瑠』、一七歳のもうすぐ高校三年生! 皆からは『エル』って呼ばれてるから、気兼ねなくそう呼んでよ……後、多分私、こことは違う世界出身かも」
「……はぁ?」
「こ、こことは違う世界って……どういうことです?」
「ほう……非常に興味深い」
……こうして、俺達は『園寺 映瑠』と出会った。
俺は、よくわからんがとりあえず『また面倒臭いのが来たなぁ』と思った……。
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【キャラクター設定】 〜ライト・マーロウ〜
・身長……一七四センチ
・体重……六五キロ
・種族……機人族
・年齢……多分一七歳(製造ナンバーから逆算した結果)
・職業……私立探偵
・誕生日……製造ナンバーによると二月二一日
・レフトとの関係……相棒
・周りから見たレフトとの関係……保護者
・内心尊敬してる人……レフト・ジョーカー
・その事を本人に言ってみてはどうですか?……絶対やだ。絶対調子に乗るから。調子に乗ったレフト程ウザったらしいものはない。




