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9/9 -September_Nine-  作者: 懐中時計
第一章 大いなる樹
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第五話 『盗賊団・黒蛇竜 後編』

後編です。

 馬を走らせて一時間ほどたった頃、サクソン市の高壁が小指の爪ほどにも満たない大きさになり、道も徐々に大小不揃いの小石が増えて乗り心地が悪くなる。

 流石に寝心地が悪いのか、子供たちは呼吸を合わせたように瞼を擦りながら大きな欠伸を見せた。


「おはよう。もう少ししたら目的地に着くからね」


「「はーい」」


 子供たちにとって今日は引っ越し以来の遠出になる。冒険者や商人にならない限り基本的に街の中で育ち街の中で一生を終える。この子たちには外の世界を知り、広い世界にその手を伸ばして欲しいとユリウスは考えていた。


 しかしいつの間にかオルテシアの膝枕を借りて爆睡しているこの女冒険者を見て、冒険者を目指そうと思うかどうかと聞かれれば、まあ、ないだろう。


 こうやって荷台のなかで揺られているとふと幼い頃の記憶が蘇ってくる。オルテシアと共に荷馬車に潜り込み、行きついた森で運命と出会った。もしかしたらこの子たちも運命に巡り合うのではなかろうか、とユリウスの勘は何かを告げていた。


「うーん……寒いな」


 太腿を擦り合わせるように身じろいだファムは、ようやく目を覚ます。流石に着の身着のまま寝ていれば、体が冷えるのは当たり前だろう。


 膝枕から上半身を持ち上げ思いっきり体を伸ばすとぽきぽきと骨の擦れる音が時より聞こえてくる。眠気は引いたのか、意識ははっきりしているようで、遥か後方に見えるサクソンを眺めては地図を取り出す。


 横に縦にぐるぐると地図を回していると、オルテシアが正しい方向を指し示す。自分が地図を逆さまに持っていたことにへらへらと笑うと徐に赤く細い棒を取り出し地図に何かを書き込んでいく。


「何を書いているんだい?」


「ん? ああ、これはあれだよ。森の中で視界が確保できない危険な場所を記しで分かるようにしてるのさ。今の時期は黒蛇竜とは別に盗賊団が現れるんだろう? 森を経由してサクソンへ向かう奴らも多くないと聞くし、警戒はしておかないとな」


 丸印で数カ所に目印をつけていく。それには、ユリウスすら知り得ない危険と思われる場所もあり、ファムの迷いない手捌きに感嘆の声が漏れる。


「なるほどな。というか、地図見ただけで視界が通る通らないがすぐ分かるようなものなのか?」


「こればっかりは経験だよ。ユリウスはエーランドを見たことがないだろ? あそこは自然と寄り添っている国だからな、森がどのようなモノなのかは物心つく頃には体が覚えるようになってるんだわ。標高の高低差、木の種類、日差しの角度なんかで大抵割り出せるぜ」


「へぇ、これは後で街の冒険者にも教えてあげたほうがいいかも。後で見せてもらっていい?」


 オルテシアの提案を快く受け入れると、書き込みが終わったのかユリウスの足元に広げて見せる。

 『ここと、ここ、それとここも』と指さしで説明をいれつつ最も注意すべき個所を分かるように二重丸で囲っていく。ユリウスはそれをしっかりと頭に叩き入れ、ファムの一言一句を聞き漏らすことないように真剣な態度で臨んでいた。


 初めて彼の仕事を間近で見ることになったオルテシアは、二人が真面目な会話をしていると理解しつつも、キリっとした凛々しい表情にうっすらと頬を染める。


(仕事ではあんなに格好良く見えるんだ……普段の柔らかな雰囲気とはまるで違う。なんとなくだけど、私を置いて一人で冒険者になった理由が分かった気がする)


「お姉ちゃん、お顔赤いね。具合悪いの?」


「こういう時はね、おててでおでこをさわると分かるってお母さんが言ってた」


 少女が惚けているオルテシアの額に手を伸ばす。ひんやりとした感触に『ヒャッ』と声が洩れる。何事かとファムとユリウスは彼女に顔を向ける。


「だ、大丈夫。何でもないから続けて」


 少女の手を優しく外しながらそう言うと、少女のぷにぷにとした頬をつんつんと突く。


 姉妹のような仲睦まじい姿に少年は思うところがあったのか、ファムの肩越しに地図をのぞき込む。何やら難しい文字が至る所に書き記されており、少年がなんとか読めたのはサクソンとマギアステラという名前だけだった。


「ねえねえ、このマギアステラってなに??」


 少年は目的地である花束の直ぐ近くに書いてあった名前に指を差しながらユリウスに尋ねる。ユリウスはその質問に驚きながらも、しっかりと応えていく。


「おぉ、よく読めたな。そうだな、マギアステラというのは、俺たちの遥か昔のご先祖様。かつてこの星に住んでいた人類の祖が遺したと言われている不思議な球体のことをその名で呼んでいるんだよ。ここアルメリア王国には二十カ所以上これらが見つかっているんだ」


「マギアステラはとてつもなく固いんだぞー。例えばこの剣を思いっきり叩きつけても傷一つつかない。むしろ剣が折れるぐらいなんだ。重さもかなりのものでね、大男が数十人集まろうが一メルほども動かせないのだよ」


 手振り身振りで説明を加えるファム。一つ一つの仕草はとても分かりやすく、子供が理解しやすいように配慮しているのだろう。


「この際だ、必要な分の花束を集めたら見に行ってみるか? ここなら視界も通っていて待ち伏せされる危険性も低いだろうし」


「いいんじゃないか? 花束集めは割とすぐ終わるだろうからな。知識を増やしておくのは悪いことじゃあない」


 ユリウスは地図を持って立ち上がると騎士の一人に声を掛ける。目的地の花畑から近い距離にあることもあって、騎士は頷き帰りに立ち寄ることを承諾した。


 しばらくして、林道に差し掛かると、前から旅の一行が向かってくるのが見えた。


「おぉそこな騎士様お聞きくだされ。今日の森はやけに魔物の姿が目につきまする。幾らか冒険者様が片付けてくれましたが、まだそこそこの数はいると思われますゆえお気をつけて」


 年季の入った御者のおじいさんが、馬の足を止め騎士と話をしているようだが、荷台にいるユリウスたちには声が遠すぎて聞こえていない。


「ご忠告痛み入ります」


 一行とすれ違いざま、荷台で息を整えている冒険者が目に留まる。赤色のタグをつけているのは中級に昇格した証。森の魔物程度で息が上がってしまう冒険者なら、鉢合わせたのが盗賊ではなく魔物であったことは不幸中の幸いだろう。


 旅の一行が無事次の街に辿りつけることを祈りながら、ユリウスたちを乗せた荷馬車は森の中に進んで行った。


 最初は道なりにまっすぐ進んでいたが、地図に示された場所に向かうには途中で右折する必要がある。道と呼べるか怪しいが、馬車一台分は通れそうな脇道が作られており、花屋の店員はここを潜って行ったのだろう。


「少し揺れますが舌を噛まないようにして下さいね」


「ハハハ、大丈夫大丈夫これしきなれっ――!」


 調子に乗っていたファムは、早々に舌を噛み悶絶する。あまりの馬鹿さ加減に子供たちすら笑ってしまうほど。何をやっているんだとユリウスは頭を抱え、心配性のオルテシアはファムの口を開けて状態を見る。


 そんなことを数回ほど繰り返しているうちに、馬車は狭い脇道を抜け、少し開けた場所に出る。目的地の花畑はここではないようだが、もう一つの目的であるマギアステラがそこにはあった。


「ちょっとストーップ!」


 ファムの掛け声に騎士は馬の脚を止め、荷台から飛び降りたファムとユリウスはマギアステラの下まで接近する。一面に苔が生え見上げるほどの大きさのそれは、概算でも縦横五メルは確実にあった。


「なんでこんなでかいマギアステラがこんなところにあるんだ? おかしいだろ」


 ファムの疑問は尤もだった。地図にマギアステラの位置が載っているということは、調査団がこの森を隅々まで調査したことが過去にあるからだ。


 しかしこのマギアステラはファムが持つ地図には記されていない。こんな分かりやすい場所にあって見逃したはずもない。意図的に記載されなかったのか、本当に誰も見つけられなかったのかユリウスたちには分からない。


「ファム、記述しておいてくれ。帰りに寄って少し調べよう。場合によっては組合に報告を上げなければならないからな」


「ほいさ」


 パパッと地図を開きマギアステラが位置していた場所に星印を付ける。他の丸印と混同しないためだが、お茶目な印にユリウスはクスッと笑う。


「お前今失礼な事考えたろ」


「いやいや、可愛いところもあるんだなって、二百歳のわりに」


 小突き合いながら荷台に戻ると、少年が興味津々な表情でユリウスたちを見ていた。


「取り合えず、先に花束からな。帰りにまたここに寄るからその時にじっくり見ようか」

「うん!」


 少年の頭を撫でつつ様子を伺っていた騎士に左手で丸を作り発進の合図を送る。

 騎士はそれを確認すると再び鞭を撓らせ馬をゆっくりと進め始める。

 徐々に後方に遠ざかっていくマギアステラは遠目でもその形を認識できるほど、やはりこれを記載していない地図は何かしらの意図が介在しているに違いない、と声に出さずとも二人は感じていた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「うわぁぁぁ……きれい」


 少女は一時間と少しの道程の後に辿りついた色彩鮮やかな光景に、ただただ見惚れ、目的である花の回収を忘れてしまっている。少年も同じく、心を鷲掴みにされたように一歩も動くことなく一面に広がる花畑を眺めていた。


 流石にいつまでも見ているだけでは日が暮れてしまうため、ファムとオルテシアは扇動するように花畑の中に足を踏み入れていく。


「ほら、どうした! こっちにこいって」


「う、うん」


 少女は少年と手を繋ぎ、恐る恐る進んで行く。花を踏みつぶさないように慎重に足を運び、オルテシアの手を取るまで一分以上も掛かってしまった。


 荷馬車に残っていた騎士たちは、なんとも微笑ましい光景に日々の疲れを癒される。


 ユリウスはというと、事前にファムから教えられた死角となる箇所を順に見て回っていた。藪を突いてなにもいないか丁寧に確認し、ちょうど花畑を一周する頃には、手一杯に花を抱えた少年と少女の姿がそこにはあった。


「おっ結構集まったね。スエルタ様もきっとお喜びになられるよ」


「えへへ、ファムのお姉ちゃんにいろいろ教えてもらったから、スエルタ様にそれを渡すんだ!」


「ねー」


 なにを教えてもらったのかはどうやら秘密らしい。ファムもお前には秘密だと言いたげな表情を向けると、こちらもまたオルテシアと何やら秘密話をしているようだ。


 仕方がないので先に馬車に戻るが、騎士の一人が見当たらない。


「もう一人はどちらへ?」


「ああ、用を足すとかであっちの茂みの方へ」


「そうですか、分かりました。帰ってきたらすぐに来た道をそのまま引き返してマギアステラのあった場所までよろしくお願いします」


 騎士が頷いたのを確認してユリウスは皆の元へ、時間が迫っていることを告げに行く。


「えぇまだここにきて二十分も経ってないぜ?」


「いやいや、二十分も居たなら十分でしょ。遅くなればそれだけ日暮れに間に合わないからな」


 仕方ない、とファムは少年と少女を抱えるとそのまま荷台の前までジャンプする。残されたオルテシアはユリウスの手をしっかりと握り、ユリウスの一歩後ろについて行く。幼少時代を思い出したのか、ユリウスの笑顔が昔と今で変わっていないことにオルテシアは嬉しさを感じた。


 全員乗車した頃、慌てた様子でもう一人の騎士が帰ってくる。どこまで行っていたのか気になるが、肩を上下させるほど呼吸が荒いことから相当長い距離を走ってきたのだろうと予測はつく。


「み、みなさん……はぁ、はぁ、まずいですよ。さっき見たこともない武装を持った集団を見掛けまして、後を付けてみたのですが、どうやら帰り道にあるあの丸い石の前でなにかをし始めたんですよ」


「見たことのない武装? それはアルメリアやエーランド、バルトラとも違うということですか?」


 騎士は「はい」と答えた後、その者たちが「短剣のようなもの」を所持していたとユリウスに伝える。しかしその答えにファムが息をのんだ。


「――黒蛇竜だ」


 二人の間に緊張が走る。『黒蛇竜』と聞いて騎士二人はなんの名前か理解できない。なにかの魔物程度にしか考えが行かないだろう。オルテシアも同じだ。


「だがおかしくないか。お前がサクソンに辿りついたのはほんの今朝だろ、なんでそいつらがたった六時間でここに現れる? なにかがおかしくないか」


「分からない。あいつらが俺以上の身体能力を持っていたとしても、こんなに早くなんて普通じゃない」


 と、ここで議論していても埒が明かない。ユリウスはファムをこの場に残し、帰ってきたばかりの騎士を連れて偵察に赴くことに。その間にファムは地図を広げ、できるだけ早くサクソンへ戻ることができる迂回路を探し出す。


『いいかファム、十分経って俺が戻らなかったら、迂回路からあいつらを逃がせ。騎士だけが戻ってきても同じだ、お前はそのままサクソンへ入り、市長へこのことを報告しろ』


「何が俺が戻らなかったらだよ。ふざけやがって……」


 有無を言わさず騎士を連れていってしまったユリウスにファムは文句を言いつつ言われたとおりに行動する。


 途中ガチャガチャと鎧の擦れる音が目立つと言い、騎士にそれらを外させる。そもそもよく見つからずに戻って来れたものだとユリウスはこの騎士の技量に驚くばかりだが、流石に二度目ともなると安心はできない。


「あいつらか」


「そうです。あの者たちが不思議な道具を取り出してあの球体に張り付けたりとかしていたんですよ」


 近付きすぎないようにできるだけ離れた位置から謎の集団に目を向ける。騎士の証言通り、先程のマギアステラでなにかをしようとしているようだった。


 しかしその集団は、皆黒いコートを羽織り、表情が一切見えない。袖口も手を隠すほど長く、持っている物を判断するには難しい。唯一コートの外に出しているのは、黒色の短剣だけだ。


(あれが武装、なのか? いやしかし誰も展開しているようには見えないぞ)


 ユリウスが見る限り、ただの短剣のように見える。


「あの短剣がその武装ですか? 見た感じ普通の短剣のように見えますが」


「いえ、あそこの者たちではなく――こっちですよ!!」


 ユリウスの問いに、騎士はどこからか取り出した剣を振りかざして応える。


 咄嗟に殺気を感じ取って、間一髪にその一太刀を横に飛ぶように避けた。はずだったが、ユリウスの右腕にはざっくりと肉を抉るほどの切り傷ができていた。


「これはどう受け取ったらいいのでしょうか」


「なに、あんたらが言っていた黒蛇竜。そのお仲間が俺ってだけですよ。ああ安心してください、あっちの騎士は本物の騎士ですから」


「そう言うことでしたか。あなた、あの騎士を殺したのですね」


 剣に付いた血を舐めると、男は気持ち悪いくらいの笑みを見せる。それはユリウスの問いに応えているようなものであった。


「ああ、咽喉に剣先を突き刺したら、自分の血で溺れて死にやがったよ!! アハハハハッ!! いやぁ愉快愉快。死に際のあいつの目、涙で溢れて、嗚呼、これだから人殺しはやめられないねぇ……!」


 男が左に、右に捉えどころのない奇妙な動きを見せると、それはいつの間にか目の前まで迫っていた。

 鼻先を掠めるように足元からせり上がってくる切っ先。ユリウスはそれを後へ下がるのではく、斜めに体を傾ける最小限の動きだけで躱す。標的を捉えることのなかった切っ先は先ほどまでユリウスの立っていた場所から後方数メルに渡って地面を分割する。


「アヒャヒャッ! やるじゃない。流石上位冒険者ってかぁ? いいねぇ、いいねぇ愉しめそうだ!!」


「いや、私には貴様と戯れている暇はない」


「あ?」


 ユリウスの口調が変わる。まるで男性から女性へと性別が入れ替わったように。

 男はユリウスの態度を訝し気に見つめると、なにかを理解したように発狂する。


「おい、おいおいおい!! お前それ――アヒャッ、アヒャヒャヒャッ! そうか、お前喰われてんな!? いつからだ、いつからお前はそんな狂っちま、」


「黙るがよい」


 ゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 男は最後まで喋ることなく、唐突に足元から発生した高熱の火柱に呑み込まれる。

 頭上の枝葉を焼き尽くし、空まで伸びるその炎は、勢いの衰えないままそこにあり続ける。


 靴が溶け、服が燃え、皮膚が焼ける。


 咽喉が焼け、目が蒸発し、頭皮が焼け爛れて地に落ちる。


「アァ、あああぁぁァァァアぁあああ!! イヒ! イヒヒヒヒッ!! そうか、お前は……落ちるところま――」


 さらに勢いの増す炎に、男は炭のようになるまで焼かれ、炎が収束すると跡形もなく消え去った。

 ユリウスは溶け崩れた短剣のようなものだったものを赤い瞳で見つめ、次にこちらに敵意をぶつけている集団へと澄んだ顔を静かに向けた。


「おい、あれなんだよ! もしかしてユリウスの野郎がなんかやっちまったのか!?」


「わ、分かりませんよ! 私だってあんなの初めて見るんですから!!」


 いきなりド派手な火柱が上がったが、何が起きているのかここでは何も知ることができない。


 子供たちはなにやらその光景に驚きつつも凄いと喜んでいる。子供たちがパニックにならずにすんでいるのはファムにとっては有り難いが、あれが普通ではないということだけは理解できる。


「あっ、こことか行けそうじゃない?」


 ファムが指を差した場所は古くに坑道として掘られたトンネルだった。


 しかしいつの時代のものか見当もつかない。もしどこかが崩れ落ちていたら自分から袋小路を作ってしまうことになる。それだけは一番避けたいところだが、他に最短距離でサクソンへ向かう方法が見当たらない。


(俺の武装だったら子供二人程度なら両脇に抱えてサクソンまですぐ行けるってのに……この荷物と馬車じゃそう上手くはいかないか)


 ファムは頭を悩ませる。どうやったら見つからずにこの場面を突破できるのか。見つからずに? 見つからずに……


「いや違う、こうすりゃいいんだ!」


 ファムは地図を持ったまま騎士の隣に腰を下ろす。


 騎士は何事かと反応するが、ファムはお構いなしに、ここに行けと地図上のある点を指差した。

 騎士はその場所を見て絶句する。


「いやここは流石に無理ですよ! 子供に何かあったらどうするんです!?」


「いいから行くんだ!」


 ファムが騎士に行くように指示した場所。


 それはユリウスが黒蛇竜の者たちと対峙しているまさにその場所だった。




次回 第六話『魔醒襲来』

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