第6話 職業『遊び人』を否定出来ない俺のお話
寝転びながらステータスを眺めていると、コンコンと部屋の扉がノックされた。
「はい?」
「邪魔するぜ」
俺の入室許可も待たずに入って来たのは4人の男子生徒。
「お前等か」
「うぃーっす」
見た目ガラの悪そうな野性味溢れる風貌の男・・・榎木田 悟志。
「どうしたんだよ?」
「部屋でおとなしくしてたんだけど、やっぱり落ち着かなくてね」
苦笑を漏らすは校内1のイケメン・・・明智 悟郎。
「うむ。そんな暇な時に、悟志が我らに声をかけて来てな。特にする事も無し、適当に集まろうという話になったのだ」
妙に芝居がかった話し方をするは長身痩躯の優男・・・瀬田 宗治。
「ん・・・いつもの面子」
特に目立つような風貌ではなく、特徴も見当たらない平凡で無口な男・・・田中 太郎。
特徴的でなく目立たない名前故に逆に目立つ、そんな名前だ。
学校ではだいたいこの5人で行動することが多い。
コイツ等とは1年の時からの付き合いだ。
「で、どうすんだよ?」
「別にどうもしねぇよ。暇だったから来ただけだしな」
よっこらせと適当に床に腰を下ろす悟志。
もう完全に我が家の様な寛ぎっぷりだ。
少しは遠慮してほしいもんだ・・・いや、俺の家じゃねぇけど。
他の3人も適当に腰かける。
別に良いんだけどね。
「そーいや、お前等って『基本職』何だったんだ? 悟志が『武闘家』なのは知ってんだが・・・・・・」
「僕は『魔法使い』だったよ」
悟郎は魔法使いか・・・まぁ、イケメンで頭も良いし、見た目通りって感じだよな。
「某は『創作師』だ」
宗治は美術部と演劇部を掛け持ちで所属し、親の都合で書道や茶道もやらされてた芸術肌の男だ。
物を作る創作師は向いているのかもしれない。
旅芸人も向いてそうだ。
「・・・・・・『盗賊』」
ボソリと呟く太朗は盗賊か。
まぁ、なんかコイツ影薄いし、戦士とかよりは向いているだろう。
たぶんだが。
「そういう和也は何だったのだ?」
「あ、僕も気になるな」
「・・・・・・おそらく期待を裏切らない」
「お、太朗正解だ」
「どういう意味だ、オイ?」
首を傾げる宗治に、なんとなく察した風な悟郎と太郎に、悟志はニヤッと嫌な笑みを浮かべやがった。
仕方なしに、渋々と、俺は自分のCLASSを明かす。
「・・・・・・『遊び人』だ」
「ほう、成程。確かに和也に向いた職業だな」
「・・・・・・予想通り」
「まさに和也を表した職業だね」
「使えねぇゴミ職業だし、正にお前向きだな‼」
「よーし、テメェら全員表出ろやゴラァ」
どいつもコイツもバカにしやがって、今に見ていろ。
「俺は必ず『賢者』や『スーパースター』になってやる‼」
「気の長い話だな。それまでせいぜいくたばらないように気を付けろよー?」
「この野郎・・・・・・‼」
悟志の奴全く信じてないな。
フッ、まぁいい。
遊び人は孤独なのさ。
「それで、遊び人の和也君」
「お前も喧嘩売ってんのかよ、悟郎」
「ゴメンゴメン。いや、この部屋に集まったのは、和也なら何か遊び道具を持ってるんじゃないかって思ってさ」
「ふむ。確かに和也は学校に色々持ち込んでいるからな」
「・・・・・・よく清水に怒られてる」
「別に授業中に遊んでる訳じゃねぇから良いじゃねぇか」
ホント、クソ真面目な次期生徒会長候補だ。
まぁ、今はいいか。
「つっても、鞄とかはこっちに無いからな」
召喚された時、俺達は学校でホームルーム中だった。
鞄や荷物は、全部教室に置いたままだろう。
所持品なんてポケットに入れてるものしかない。
「お前らは何持ってんだ?」
「オレは財布とスマホとハンカチくらいだな」
「僕も似たようなモノかな。後は生徒手帳とポケットティッシュ、ボールペン・・・・・」
「某も財布とスマホとハンカチと・・・後はのど飴か」
「・・・・・・俺も似たようなモノ」
皆大差ないな。
「まぁ、俺も財布とスマホとハンカチとポケットティッシュと生徒手帳とボールペンとチューインガムと・・・・・・」
言って、ポケットの中から物を取り出して床に並べる。
「それとトランプ、マグネット式の将棋、オセロだろ、囲碁に、UNO・・・・・・」
「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
「それとBATTLE鉛筆、定規、消しゴム」
「定規に消しゴム?」
「ほら、定規飛ばしとか、消しゴム飛ばしとか」
「「「「・・・・・・・・・・・」」」」
皆の呆れ顔がこっちを向く。
何だ?
「やっぱ遊び人だな」
「だね」
「他に形容のしようが無い」
「・・・・・・かける言葉もない」
「解せぬ」
こんなもん基本だぜ?
呆れながらも遊ぶ道具がある事には変わりなく、みんなでトランプに興じるのだった。