全ては夢から始まった
ネタが浮かんだら書いていきます。ご容赦ください。
ここはどこだろう・・・
自分は何故ここにいるのだろう・・・
自分、榊真悟は考える・・・
榊真悟37歳、サラリーマン、〇〇県〇〇市在住、独身。趣味は某動画巡回。少しオタク気味のところもあるけれど、人なんて絶対何かしらの趣味や興味を持っているのだから、そんなに変な事はない。
昨日は帰宅後、いつものように夕飯を食べ、動画巡回後入浴、就寝・・・その筈だ。
なら今の状況は?
無限とも思える漆黒の空間、そこに漂う自分。上下も分からなくあるのは浮遊感。感覚としてはプールで脱力して浮いている感覚。
体は・・・少しだけ動く。といっても本当に少しだけ、全身に力を入れて数センチ動く程度。
「・・・・・・」
声は出ない。口は開くがそれだけ。だが呼吸はできている・・・訳が分からん。
思考は大丈夫、問題ない。
結論
死んだか・・・・・・しかし死ぬほど仕事に忙殺されていた事もないし、体調も悪くなかった。
ただまぁ、何がきっかけで死ぬか分からない世の中、こういう事もあるのだろう。
『お前はまだ死んでいない。』
!!
急に頭の中に声が響く。
焦る自分。目を必死に動かして周りを見る。首も動かしたいが殆ど動かない。
そんな感じでパニックに陥っていると、急に頭上に気配を感じた。
だ・れ・だ
声に出そうとするが声が出ない。
『中々に面白いモノが見られた。ふむ・・・これでどうかな?』
ドンッ!!という衝撃と共に体に自由が戻る。と同時に本能的に防御体制を取って周囲を警戒。
とほぼ同時に正面に薄暗く光る何かが現れる。輪郭は人のように見えるが・・・
『ふむ・・・これでは分からんか。ならば・・・』
次の瞬間、人らしき輪郭が急速に形を変え1人の男の姿になった。白い貫頭衣を身に纏った男・・・恐らく年齢は40代後半、背は180近い。衣服のせいで体格はよく分からないが細身という事はないだろう。
『君の記憶を見せてもらって、一番会話をしやすそうな姿を取らせてもらったが、どうかな?』
物腰は柔らかいのだが、全身を襲う圧力が凄まじい。正直かなりキツい。この頭に直接響いてくる声も合わさって限界も近い。
『・・・あぁ、これではまともに話も出来ないか。』
正体不明の圧力が無くなると同時に全身から汗があふれ出す。
「これでいいだろう。全く、人間とは脆弱だな。」
「ハァハァハァ・・・声が・・・出る?・・・」
「さて、もういいかな。そろそろ話をしたいのだが。」
男がおもむろに右腕を振ると、漆黒の空間が一変した。何も無い空間に天地が作られる。どこまでも青い空、見渡すと360度の大海原がありそこに小島が一つ。小島にはテーブル1台と椅子が2脚。
「先ずは掛けたまえ。ゆっくり話をしようじゃないか。」
男は笑顔でそう言った。
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「何か飲むかい?」
二人が席に着いたところでおもむろに聞かれた。確かにのどはどうしようもない位にカラカラだ。主に目の前の男のせいで。
「それについては悪かったと思っている。で、何を飲みたい?と言っても君の記憶からその飲み物を再現するだけなのだけれどね。」
「・・・なら、紅茶が飲みたいです。」
「紅茶・・・・・これだな。いろいろあるようだが・・・ダージリンというので良いかな?」
男がテーブルの上で今度は左腕を振ると、そこには白磁のティーセットが現れていた。男がポットから紅茶をカップに注ぐと、とても良い香りが漂ってくる。
「毒は入っていない、飲むといい。」
男も自分のカップに紅茶を注ぎ、おもむろに口をつけた。
「初めて飲むが・・・うん悪くない。君も飲みたまえ、君の記憶している味だ。」
言われて恐る恐る口をつける。心地よい香りと口にした時の程よい渋み・・・美味い。一服を入れた事で心にも余裕が出来た。
「気分はどうだい。もう落ち着いただろう。」
「そうですね・・・いくつか質問しても?」
「構わないよ、何が聞きたい?」
「先ず・・・あなたは誰ですか?というか何者ですか?」
「ふむ・・・私が何者かという事だが・・・簡単に言うと君たちがいる世界の管理者だ。神と言われていたりする。」
「神・・・ゼウスとかオーディンとか天照大神とか・・・ん?でも天照大神は女神か・・・」
「どの地で何と呼ばれているかは様々だが、概ね正解だ。今の姿はさっき言った通り、君と話すのに君が話しやすい姿をしているだけでどんな姿にでもなれる、例えば・・・こんな感じに。」
と言うと共に男の姿が急速に変化して、あっという間に見目麗しい女性の姿になった。まるで二次元の女性が三次元に変換されたような。
「これも記憶を見せてもらって、あなたの描く理想の女性像を参考にしてみたのだけれど。」
「やめてくださいしんでしまいます。」
「あら、この姿になるとあなたは死んでしまうの?それはいけないわね。」
そう言うと元の男の姿に戻る。
「言葉のアヤですよ。ただ黒歴史になるような所を見るのは勘弁してください、いや本当に。」
「ハハハッ、いやこれは失礼した、以後は気をつけよう。あぁ、そういえば自己紹介がまだだったか。私は■■■■と言う」
「ッ!?・・・よく聞き取れなかったのですけど。」
「やめたほうがいい。無理に聞き取ろうとすると死ぬぞ。」
「マジですか・・・」
え・・・死ぬの?なんで?
「君の世界では様々に呼ばれているが、それは正しい名前ではない。その時私の声を聞いた人間が己の出来る理解の中で名付けただけだ。もし人が私の名前を正しく理解しようとしたら、その情報量で脳が焼き切れて、よくて廃人、悪くて死だ。だから君も今私が口にした名前を理解しないで、自分の理解できる名前で呼ぶといい。」
さらっと恐ろしい事を言ってくれる。まぁさっき名前を聞き取ろうとしたら頭にフィルターのような物がかかった感じと軽い頭痛がしたから間違いないのだと思う。フィルターみたいなものは守ってくれたのだろう。
「それなら管理者さんと呼んでもいいですか。」
「それは構わないがいいのかい?」
「一番馴染のある名前は天照様なのですが、男の天照様というのも・・・某マンガならともかく本来の日本神話では女神なので。」
「ならもう一度女性になろうか。それなら問題ないだろう?」
ニヤリと笑うと体が発光しはじめる。
慌ててテーブルに頭をこすり付けてお願いした。
「ハハハッ、君は・・・やはり面白いな。」
「さいですか・・・。」
(もう真面目なのか不真面目なのか分からないな。)
「それはまぁいいとして、次の質問です。今の自分はどういう状況なんですか?」
「最初に言ったが、君は死んだ訳ではない。現在眠りについている。今は君の精神だけをこの空間に引っ張ってきている状態だ。」
「仮死状態みたいなものですか?」
「そこまでではない。魂まで引っ張ってきていればそうなのだろうが、もっと弱い力だ。君の体に何らかの干渉があれば直ぐに目を覚ます程度のものだ。」
「干渉・・・それは誰かが体に触れなくても?」
管理者は頷いた。
「分かりました。それじゃあ何故自分は呼ばれたんですか?」
そう、これだ。これがある意味一番分からない。
「簡単に言うと、君に管理者をやってもらいたくてな。」
は?
自分が・・・管理者?
「それは冗談ですか?」
「冗談でこんな事はしない。」
「人間を辞めてあなたの同類になれと?」
「それは無い、というか不可能だ。人が私の領域に至るには良くも悪くも何かしらの偉業を成さなければならない。その上で奉られ、信仰された者のみが私の領域に至れる。君は何も成していないだろう。」
「そうですね。」
「もう一つ言うと人の身から至った者は管理者にはなれない。」
「それは何故ですか?」
「人から至った者は1つの力に特化しているからだ。逆に言うと、その1つの力でしか力を行使できない。」
「それは他の神様も同じでしょう。」
「その通り。だから君なのだ。何の才能にも特化していない君だから管理者になってもらおうと思ったのだ。」
「いや・・・まぁ凡人ですから。」
「これは私の余興の一つと思ってくれたらいい。私のような者でないただの凡人が世界をどう管理していくのか、それが見てみたい。」
結論・・・・・神様のお遊びに巻き込まれた、と言う事か。なら・・・
「世界を滅ぼしても?」
「そんな事はしないだろう、君は。」
「・・・まぁしませんけど。無駄な殺生は嫌いですから。」
ばれてーら・・・・ま、ばれてるわな。
「なら決まりだな。それでは・・・」
「すいません、いいですか?」
「ん?」
「お願いと質問があるのですが。」
「何かな?」
「先ず・・・とりあえず管理者はいいのですが、やるのは自分が寝ている時だけでお願いします。それと今こうしている事は、自分が起きたら忘れるようにしてください。」
「理由を聞いても?」
「ここでやった内容を覚えていると起きている時に間違いなくなにかやらかしそうなので。」
それと自己嫌悪とかな・・・
「いいだろう。なら君がこの世界にいる間にあった事は君が起きている間は封印しておこう。眠りについてこの世界に来た時に全てを思い出す。それでいいかな?」
「それでお願いします。それと質問なんですが、管理者をやるという事は何かしらの力を使えるという事ですか?あと力はどれくらいの範囲になるのですか?」
「その辺りは任せる世界が決まったら考えよう。・・・そろそろ時間か。」
管理者が顔を上に向けたので、自分も顔を上に向ける。
上空から白が降りてくるのが見えた。
「もう少し話をしたかったけれど、時間切れのようね。それじゃまた今晩会いましょう、真悟。」
気が付くと女性になった管理者が後ろから後ろから抱きしめられていた。背中に感じる柔らかい感触と女性特有の甘い香りが鼻孔をくすぐった。硬直しつつも視線を横に向けると管理者はとてもイイ笑顔で自分を見ていた。
一通り自分の反応を楽しんだらしい管理者は、ゆっくり離れると笑顔のまま霞のように消えていった。
「心臓バクバクだったのばれてただろうなぁ。明らかに狙ってたもんなぁ・・・記憶を封印してもらってよかった。こんなの覚えていたら、起きたときシャレにならん。」
そんな事をぼやきながら自分は白の中に消えていった。
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♪~♪~♪~
目覚ましの携帯が鳴り出す。布団の中から手を伸ばし、メロディを止めて時間を確認する。
「もう朝か・・・」
夜更かしした覚えは無いのに疲れが取れない。というか肉体的というより精神的な疲れが取れていない感じがする。
そんな事を思いながらベッドから出る。
そしていつもの1日が始まる。