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コオロギたちの明けない夜  作者: 凡骨滓生
1/2

前編

俺たちは今、田舎のド真ん中にある小さな公民館にいる。

どうしようもなく眠い。

なぜこうなったんだ。





「なぁ浩太、これ面白そうじゃね? 」

悪友の玲二が携帯の画面を見せながら言った。

画面には、黒い背景の中心に赤い大きな文字でこう書かれていた。


生死を賭けたデスゲーム!勝てば賞金300万円、負ければ死!


「……なんだこれ、うさんくせー」

俺は溜息を吐くようににつぶやいた。

「でも勝てば300万だってよ! 嘘だったとしてもいい暇つぶしにはなりそうじゃん? 」

携帯を見ていた玲二が陽気な口調で言い返す。コイツはいつも能天気だ。

もう一人の仲間・圭吾が会話に入ってくる。

「あのなぁ、これもし本当だとしても勝ったって300万ぽっちだぞ?んで、負けたら死って……

どう見たってハイリスク・ローリターンだろ」

俺たち3人はいわゆる腐れ縁。気まぐれで集まってはこうやって夜の飲み屋でバカ話をしたりと

自由気ままに過ごしている。

そうやっていつものように駄弁っていると俺たち3人の輪に一人の男が入ってきた。

「おい、なにやってんだよバカ3兄弟」

「あ、龍平さん!ちわっす」

「どうも」

「うっす」

玲二につづいて俺と圭吾が挨拶した。

龍平さんは、ここの店で知り合った人だ。

まぁ、知り合った経緯はお互い酔っぱらった中で起こった殴り合いのケンカなんだけど。

「あぁこれか。そういや俺の知り合いがこのデスゲームとやらをやるって言ったきり連絡つかねーんだよな」

「マジですか。やっぱこれヤバいやつなんじゃ……」

圭吾が、低く小さい声でつぶやく。コイツは案外ビビりなんだよな。

「でもさ。賞金もらっちまって独り占めしようとしてるかもよ。300万なんて俺たちにしてみたら大金だしな。お前らさ、もし300万手に入ったらどうするよ? 」

この人まさか俺たちを巻き込もうとしてるのか。

「いや、でも正直な感じ自分は手出したくないですね……」

圭吾はさっきと同じ低く小さい声でつぶやく。

コイツも何かしらの嫌な予感を感じ取っているのだろう。

「なぁに勝てばいいんだよ。それとも何だ、お前ら俺の言うこと聞けねぇのか? 」

こうなったら俺たちは断れない。この人にはいろんな意味で逆らえないのだ。




こうして俺たちは龍平さんに連れられてこのド田舎の公民館へとやってきた。

周りには民家や外灯はあるものの電気は点いていない。おかげで暗くて周りがよく見えなかった。

時間は今21時48分。ゲーム開始は22時からだ。

なぜか扉には鍵がかかっていない。俺は扉を開け中を覗いてみた。

中には、丸テーブルがあり椅子が5つ配置されていた。

他にも色々ありそうだが、暗くてよく見えない。

「このゲームの参加者って俺たちの他にもいるのか? 」

「ええ、いますよ」

俺が言ってから、すぐに背後から聞きなれない声がした。

「うおっ」

圭吾が短く叫んだ。

後ろを振り返るとそこには無地の灰色Tシャツにジーンズの恰好で無精髭の、いかにも、胡散臭そうな男がいた。

「あんたも参加者なのかよ? 」

玲二が問う。

「そうですよ」

胡散臭そうな男がそう返すと、唖然としていた俺たちの間をすり抜け中に入っていった。



中心にある丸テーブルに俺たちは座った。

電気は点いたみたいだから、よかった。

真っ暗の中だと圭吾辺りが発狂するだろうからな。

「皆さん、お集りいただけたでしょうか? 」

どこからか低い男の声がした。

その声はどこかこもりがちであった。

「あ……スピーカーから……」

圭吾が視線を向ける方を見ると、そこには黒い大型のスピーカーがあった。

「誰か近くにいるのか!? 」

龍平さんが声を張り上げる。

しかし、返事はない。

「早速ですが、ゲームの説明をいたしましょう 」

そういうとスピーカーから発する不気味な声が淡々と説明を始めた。

指示をもとに端にあるキャビネットを開ける。

そこにあったのはトランプであった。


ゲーム内容はいたって普通の10ラウンド方式のポーカーだ。

1つを除いて。

勝者はただ1人。他すべては敗者となり死が確定するらしい。

俺たちに戦慄が走る。

胡散臭い男が俺からトランプを奪い、カードを切り始めた。

そして、それぞれ平等にカードが配られる。

文字通りデスゲームのはじまりだ。



―― ゲームは淡々と進行されていき、最終ラウンドとなった。

現段階での順位は1位が龍平さん、2位が胡散臭い男、3位が俺、4位が玲二、最下位が圭吾。

圭吾からは恐怖や焦りが、玲二からどこかしら余裕さが表情から伝わってきている。

玲二に至っては、この期に及んでまだ能天気な考えでいるのだろうか。

俺は1発逆転の手札があれば勝てるかもしれない、が。

それでいいのだろうか。

もし俺が勝った場合、玲二や圭吾、龍平さんが犠牲になってしまうかもしれない。

たとえ大金が手に入っても分かち合える仲間がいないのでは、ただ虚しいだけではないだろうか。

そんなことをふと考えていると少し出遅れてしまった。

配られた俺の手札をおそるおそる見てみる。





ペアが1つも揃っていない。いわゆる『ブタ』であった。

これをもし交換しても、勝てるカードが出るとは限らない。

血の気が引いていく。

もし負ければ俺も死ぬことになってしまうのだろうか。

敗者になるかもしれない恐怖から思考力が奪われつつあった。



その時、圭吾が急にテーブルを叩いて、叫んだ。

「いい加減にしてくれよ!こんなポーカーで命賭けれらるか!

俺は抜けるぞ! 」

圭吾は立ち上がり、その場から逃げようと走り出した。


圭吾が入口の扉を開けた瞬間、何者かに首を掴まれてその場から思い切り投げ飛ばれた。

「ゲームの途中です。席に戻ってください」

そこには、フード帽を深くかぶり、サングラスにマスクといった、怪しい風貌の大男がいた。

「わ、分かったよ……」

圭吾は仕方なく席に戻る。

ゲームは再開された。

俺たちとは対照的に、龍平さんや胡散臭い男は不敵な笑みを浮かべている。

よい手札に恵まれたのか、それとも大金を前にして油断が出ているのかは分からない。

俺の手札は交換したものの、ワンペア揃ったのみ。これでは勝ち目がない。

俺は敗者になるかもという不安の渦に飲み込まれていった。


5人の手札が公開される。圭吾はノーペア、玲二は俺と同じワンペア。

俺たちの負けはほぼ確定した様なものだった。

圭吾はもう既に死人のように顔が青ざめている。

龍平さんと胡散臭い男、一体勝者はどちらなのだろうか。

俺は2人の手札を覗いてみた。


〈後編へ〉


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