表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/28

9 退魔師のお仕事・その2



「退魔師のお役目ですが、他にも重要なものがあります」

「重要なもの?」


 思わず聞き返す。

 妖怪変化的な物を倒す以外に何があるんだろう?


「それは『境界』と呼ばれる場所の修復です」

「境界……?」

「境界というのは文字通り、『こちら側』と『あちら側』の境目の事を指します」


 彼女の説明によると、僕らの住んでいるのが『こちら側』で、シィたちが本来住んでいる世界が『あちら側』だそうな。境界は例の神隠し空間を指すようだ。

 普通の人間だと『あちら側』は勿論のこと、境界ですら足を踏み入れる事は出来ないらしい。


「あの、葉狩サン? 話を聞くに普通の人が入れない境界とやらに僕、紛れ込んでたっぽいんですけど……?」

「氷上君は普通じゃ無いので問題ありません」


 ちょ、葉狩さん、笑顔でそういうこと言わないでぇぇー! むしろ問題あって欲しかったよ! 普通が一番だよ!?


「神隠しは『こちら側』の人間が何らかの理由で、境界を越えて『あちら側』へ行ってしまう事を言うんですよ」

「なんらかの理由……?」

「先ほど境界の修復と言いましたが、境界というのは本来、『あちら側』へ普通の人が行かないようにするための、一種の結界なのです」


 それって普通じゃない自覚のない人は神隠し遭い放題なのでは……? そう聞いてみると……。


「普通じゃない人はだいたい自力で戻って来られるので問題無いです」

「えぇー……」


 退魔師さん達における、普通じゃ無い一般人への扱いがひどい件。もうちょっと優しくしてくれても良いんですよ?


「あとは……逆に『あちら側』から大物が『こちら側』に来られない様にする堤防の役割もありますね」

「−−と言う事は、今ここにいるシィは大物じゃ無い、と」

『ヨシトのばかーっ。どうせ私は小物ですよぉー!』


 あ、シィさん檄おこ? ごめんごめん。だからポコポコと頭にアタックするのやめて下さい。痛くないけど、うざったい。でもなごむー……フクザツな気分です。


「因みに結界も完璧では無いので、中者とか小物は割とガバガバです」


 あくまでシィについては言及しないんですね。彼女なりの優しさなのかな?


 それにしても……大物以外はガバガバて、どう考えてもマッチポンプじゃないですかやだー。

 そんな考えが表情に出ていたのだろう。


「人間の力は、氷上君が思っているほど万能ではないですよ?」


 窘められてしまった。……まぁ、大物の侵入を阻止出来てるだけでもすごい事なんだろうなぁ。


「ただ、大物ではなくとも中には境界に穴を開けて、一般人を誘拐しようとする妖異などもいます」


 −−ですから決してマッチポンプなどではありません。ええ、決して。


 やけに力強く否定するあたりが疑惑のデパート状態なんですがー……まあそういう事にしておこう。退魔師業界の闇なんて知ってもヤバイだけだし。


「そういうのを防いだ上で、穴を塞ぐのもお仕事って事かー」

「ええ。それで氷上くんに手伝って欲しい事なのですが……」


 無理矢理引き込んだ引け目でもあるのか一拍置く彼女。


「まず前提として、この町は特殊な造りになっているという事を頭に入れておいてください」

「特殊な造り……?」

『うーん……それって、この町がすごく居心地いいのと関係ある?』


 あ、居心地いいんだ。


「恐らくは。この町は風水的な見地で四神相応の地と呼べる造りになっているんです」


 規模的には、流石にかつての都である京都には及びませんが。と、葉狩さん。霊的な加護が大きい分、どうしても『そちら』寄りになってしまうんだそうな。

 シィが居心地が良いと感じるのは、この町が彼女たちのホームグラウンドである『あちら側』に『近く』なっているのが大きいらしい。


「ですが……それを差し引いても、ここ最近この町では境界に迷い込む方の数が極端に多いのです」

「……え? 退魔師の人は一人しかいないのに、数なんて把握できるものなの?」


 もしかしなくても、僕とリュウグウ君(仮)との初遭遇も把握されてたりするんだろーか……?


「それに関しては結界に仕込まれている仕組みのお陰ですね」


 人が迷い込んだ時は、町のどの辺りなのか教えてくれる機能がついてるとのこと。

 他にも昔からの経験則で、怪異や妖異とつるんでる人は境界に迷い込みやすいんだと。…………昨日の僕とシィがまさにそれでした。知らぬ間に自分から厄介ごとに全力ダッシュ決めてただなんてまさかそんな……。


「−−と、話が逸れてしまいました。氷上君に手伝って欲しいのはこの異常の原因究明と、妖異退治の二つになります」

「境界の修復とやらはスルーでいいの?」

「そちらに関しては前任者に頑張っていただきます。氷上君だって、修復してくれって言われても困っちゃうでしょうし」


 うん、そーですね。やり方とかサッパリ判らないしね! どうせ特殊技能必須とかそんなんでしょ、それ。


「では、早速。町の探索へ赴くとしましょう!」


 −−へっ? 今から!?


 ちょいとアクティブ過ぎやしませんか葉狩さんや……?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ