5 さようならリュウグウ君(仮)
僕らの前には再びあのリュウグウ君(仮)が舞い降りていた。−−が、先日のように問答無用で襲いかかっては来ないようだった。
「Gyaooouuu、Gyaaaa−−」
この間と違って何かしゃべってるっぽいが、残念ながら何を言ってるのかわからない。テレパシーとかそういう都合のいい能力とかないし。
『−−アイツ、「よくもワシの舎弟ども消して、シマ荒らしてくれたのう」って言ってるよ』
おぅ、万能通訳さんがいた模様。……まあ、シィはあっち側だからね。それにしてもリュウグウ君(仮)、意外にもヤクザテイスト……舎弟って餓鬼の事? この流れはもしかして、御礼参りというやつではないですか?
そういえば潰した目が何か完治してるんだけど、まさか別個体って事は無いよね?
「Gyao、Gyaouuu……」
『「それと、そっちの小僧には昨日の御礼もせんといけんしのう」……だって』
あ、同一リュウグウさんなんですね良かっ−−良くないよ! バッチリ、ターゲットロックオンされてるじゃん!!
シィが「一体何をしたの?」って目でこっち見てる。後ろ暗い事は一切してないよ! 生き延びるために精一杯足掻いただけだよ! 容赦なくアイツの両目潰したけど。
「Gyaoooooo!」
これは流石にシィの通訳がなくても判った。いざ尋常に勝負、と言ったところだろう。……あっちが空飛んでる分、こっちはハンデ付きなのに「尋常に」も何もない気はするが、まぁニュアンスで。
ちなみに昨日までは投石しか出来なかった僕。しかーし、今の僕には対抗手段がある! そう、あの餓鬼たちを一掃した新必殺技が!!
「てやぁぁっ!」
リュウグウ君(仮)目がけて衝撃波を放つ。的がでかいので直撃コースだ!
−−だが。リュウグウ君(仮)は衝撃波と同じ方向に揺らめく事で、威力を殺してしまったのだ。
……まさか敵に『当たらなければどうということは無い』をやられるなんて……! いやこれむしろ上位版の『当たっても受け流せばどうということは無い』だ。投石のがマシとか、新必殺技の立場って一体……。そして、衝撃波よりも打撃、打撃よりも斬撃……やっぱり包丁を鞄に忍ばせとけばよかった!!
『ヨシトの必殺技、ぜんぜん効いてないよぅ!?』
シィがすごく慌てている。…それにしても、優雅に揺らめきつつこちらを見下ろすリュウグウ君(仮)が憎い! よし、こうなったら投石でもう一回アイツの両目潰そう。
「シィ、その辺の石集めて!」
『うん!』
僕も隙を見て拾った石をリュウグウ君(仮)に投げつける。が、読まれていた。上昇する事で華麗に避けられる。同じ手が通用する程バカではないという事か……さすがボス。運よく当たっても身体にかすり傷を付けられるかどうか……。
今度こそヤバい?
「シィ。さっきの戦いで使ってた技、アイツに効く?」
『大きすぎてムリっ!』
数が多かったり、大きすぎるとダメなのか……待てよ?
「石は……石には使えない?」
『それなら大丈夫だけど……』
「なら、石を自由に動かしたりは……」
『出来るよ……って、まさか』
「僕が囮になるから、シィは固定砲台ヨロシク! 目を狙うと良いんじゃないカナ!」
じゃあ、いってきまーす。と、飛び出す僕。
当たらないのは分かっているが、とりあえず気を引くために投石する。人だろうが人外だろうが、チクチクと嫌がらせされれば鬱陶しくなるのは同じようで、リュウグウ君(仮)も更にこちらへ意識を向けてくれたようだ。まぁ、元々シィには気を払っている様子は無かったから当然といえば当然なんだけど。
シィの攻撃が入れやすい位置へ、リュウグウ君(仮)を誘導する。そして−−
『えぇーーいっ!』
シィの放った石がリュウグウ君(仮)の片目にヒットした。
「Gyaaaaaaa−−!!」
よし、当たった!
いくら再生できるといっても痛いものは痛いのだろう。空中で激しくのたうちまわるリュウグウ君(仮)。この勢いで地面に落ちてくれれば、他にもやりようがあるのだが……。
しかし、僕の思いを裏切るかのように突如リュウグウ君(仮)はその身を翻し、シィへと向き直る。
なっ!? アイツ、まさかシィを優先的に排除する気なのか!
自分を傷つけられる可能性が高いのが僕ではないと気が付いたが故の行動に違いない。これではいくら挑発したところで無意味だ。
「シィ、逃げて!」
この位置からではシィを助けられない−−!
「−−大丈夫。後は私に任せてください」
そんな心強い台詞と共にシィの前へ踊り出たのは、薙刀を構えた葉狩さんだった。
そして攻撃のため接近してきたリュウグウ君(仮)と葉狩さんが交錯する。その瞬間−−
「はぁぁっ!!」
葉狩さんは気合の入った声とともに薙刀を一閃。次の瞬間にはリュウグウ君(仮)は上下真っ二つになっていた。暫くはピクピクしてたが動かなくなり、やがては塵になって消えていく。……やっぱ刃物強い。そして、さようならリュウグウ君(仮)。結局、彼の正式名称は分かりませんでした。