13 決着をつけよう
一番の問題は、僕とシキガミさん達の連携が取れてないことだと思うんですがその辺どう考えてますか、ともひー?
「今日会ったばかりで連携もクソもないでしょ。こっちで隙を作りますから、何とか掻い潜って一撃入れてください!」
一喝されてしまった。正論だけどもうちょっと言い方があると思うんだ。僕は豆腐メンタルなんだよー? ……まぁ、地道にやりますかー。
というわけで隙を探してみる。
…………無理。知彦くんのシキガミさん達、土蜘蛛さんに集中砲火浴びせてる。これをかいくぐれって知彦くんは鬼か! 手え出させる気、皆無じゃないのさ!
為すすべ無く傍観者になるしかなかった僕だったが、ある事に気がついた。
「まぁ、流石に間髪入れずに長時間攻撃し続けるなんて、人外でも無理だよね」
受ける方も同じ事が言えた。あー、これ以上無いくらいの隙ですねこれ。知彦くんが言ってたのこれかぁ。とか思ってたらワンチャン逃しました。じとーっと恨みがましい視線を向けてくる知彦くん。
しょうがないじゃん! 初めてなんだから!!
「次! 次は頑張るから!!」
そして始まる第二ターン。再び火を噴くシキガミさんたちの技の数々。今度はタイミングを見計らって成功させないと、先輩としての威厳が地に落ちてしまう。……既に手遅れ? そんなことないやい。
――きた!
「てぇぇぇい!!」
気合いを込めて土蜘蛛さんに拳をぶつけた。やはり二本の腕に阻まれ胴までは届かない。崩れ落ちる二本の腕。だがあと一回、あと一回当てれば王手に届く!
『ぬぅぅ、こうも簡単に我が肉体を滅するとは……小僧、只者ではないな!?』
「――いいえ。ごく普通の一般家庭の武道少年ですが?」
そういえば葉狩さんにも聞かれたなぁ、似たような事。マジで何かあるかもとか思っちゃうじゃないですかやだー。
あと一撃受けると後がなくなるのが判っているので、会話中もガードを固めていて次の攻撃を撃てそうにない。村長なのに以下略。たぶん時の政府との戦いが、村長を立派な戦士にしてしまったんだろうなぁ……悲しい事件だったね。
「ごく普通の一般家庭の武道少年は、気合い入れただけで怪異を消滅させるとか無理ですよ。つまり先輩は普通じゃない武道少年ですから!!」
はい、後輩くんのダメ出し入りましたー。
「ああ、もうっ、わかったよ! 今度、時間がある時に調べとけば良いんだろ!?」
『我を前に随分と余裕ではないか。そんな日など来ぬわ!』
「――いいや、意外と余裕っぽいぞ」
意味深な知彦くんのセリフに、土蜘蛛さんは疑問を口にする事が出来なかった。
何故なら――
「――縛!」
鈴のような可憐な声が響き渡った。同時に現れた光の糸が土蜘蛛さんを拘束する。声の聞こえた方を見ると、長い黒髪をなびかせる巫女装束の女性と葉狩さん。ついでにシィもいた。
『ぬぅぅぅん!?』
「今のうちです、とどめを!」
拘束を解こうと力む土蜘蛛さんの野太い声を打ち消すように、討伐を促す葉狩さんの声が聞こえる。
「了解っ」
この隙に気合を入れ直して、強く一歩踏み込んだ。そして掌打を一発、続けざまに駄目出しの二発目。それで僕の仕事は終わった。少しずつ崩れ落ちて行く土蜘蛛さん。ここまでくるともう抵抗する気にもならないようで、粛々と最期の時を迎える——ように思われた、が。
「あちらの式神使いもそこそこに厄介だが……小僧、貴様の『力』は異常だ」
……なんか土蜘蛛さんってば、あからさまに厄介そうな台詞を口に出し始めたんデスガ……?
「いずれ――そう遠くないうちに貴様も知る事になろう。我と同じ境地を」
そんな事を言いながら足元から砂になって崩れていく土蜘蛛さん――って、唐突なシリアスモードで末恐ろしい置き土産するのやめてぇぇっ! フラグが、フラグが立っちゃうだろぉぉぉ!?
「ククク、クハハハハッ!」
不吉さを感じさせる高笑いを残して土蜘蛛さんは消えていった。




