12 僕、いらない子じゃないってよ!
依然として続く、土蜘蛛さんと知彦くんの攻防。僕いらない子では疑惑がわき上がる最中のこと。
「何ぼーっとしてるんですか氷上先輩!」
「……え。僕、必要な子?」
「当たり前でしょう!? 俺じゃ火力足りないんですよ!」
いや、でも――
「知彦くんのシキガミでも火力足りないのに、僕の攻撃が通るとは思えな――」
「そんなのやってみないと判らないでしょうが」
「でも実際、さっきは防がれちゃったわけですしおすし……」
「さっきのは俺から見ても防がれて当然の一撃だったんでノーカンです!」
素人目に見てもダメダメな一撃ってことですかそれは。否定はしないけどさぁ。
「だからって僕の一撃がシキガミさん達より火力高いとも思えないんだけど……」
……だってビジュアル的にも地味だし。
「――四の五の言わずやれ!」
「はいぃぃッ!!」
シャレにならない怒気を放たれれば、僕も動かざるを得ない。うぅ、本当に先輩遣いの荒い後輩君だよなぁ……。
まずは小手調べ。正面から掌打を一撃いってみますかー。シキガミさん達の攻撃の合間を縫って土蜘蛛さんに近づく。今度は踏み込みを強く意識して――
「せいッ!!」
『なんのぉぉッ!』
ちっ、空いてる両腕で防がれた。けど効いてないわけじゃない。
『むぅん?』
どうやら僕の一撃を受けた腕が痺れて動かなくなったようだ。だが、会心の出来ではないとはいえ効果は薄いように思えた。仮に胴に一撃入れても決定打にはなりそうもない。ナナメ四十五度も基本的な原理は同じだし、っていうかアレは除霊的な役割の方が大きいんだっけ?
土蜘蛛さんは鬼っぽいけど、何かに憑かれているわけではなさそうなのでどっちにしても意味はない。
これより火力が高いというと……必殺技のアレくらいしか思い浮かばないんだけど……。
「やるだけはやらないと知彦くん怒るだろーなぁ……」
ふと彼の方を見てみると、相も変わらず土蜘蛛さんとの激しい攻防戦を繰り広げるシキガミさん達を的確に指揮している。
すぐに技を放てるように腹に力を入れて、乱闘の中に飛び込む。乱れ飛ぶ不可視の刃やら火の玉やら水の円錐を避けつつ、金鬼さんの邪魔にならない位置へ。時折とんでくる土蜘蛛さんの攻撃を避けつつ機を待つ。
腕が六本もあるから割と防御が硬いんだよね、この人。てゆーか本気で村長には必要ないスキルですよねぇぇ!?
そんな思いを抱きつつ、他の攻撃を阻害しないタイミングをうかがっていると、ちょうどいい空白が。よっしゃー、やっちゃうぞ!
「てえぇぇぇーい!!」
当然、防ごうと土蜘蛛さんは腕をクロスさせたのだが——
『なん、だと……!?』
「えっ?」
驚愕の声を上げることになった。それは僕も同じく。
なんと僕の放った必殺技は土蜘蛛さんの腕を容易く粉々にしてしまったのだ。僕の技を受け切った腕は砂のようにホロホロと崩れ去っていった。……えっと、腕ならあと四本あるから二本くらい無くなっても大丈夫ですよね!?
「『姫』が言ってはいたけど、先輩の潜在能力ヤバイですね……」
え? 僕の必殺技って凄いの!? ……いやまぁ、一撃で土蜘蛛さんの腕がチリになった時点でアレではあるんだけども、あんまり実感がわかない。だって、ちょーっとだけ気合入れただけだよ? この威力には僕自身もビックリなんですけどー。ホントに。ちなみに残る腕は四本なので一回二本無くなるとすると、単純計算であと三回当てれば土蜘蛛さんを倒せるよ! やったね!!
「よし! なら、もういっぱーつ!!」
『クッ、受けられないのであれば避ければ良いだけの話!』
続け様の一撃はひょいっと避けられてしまった。まあ当然ですよねー。追撃とばかりに知彦くんのシキガミさんたちが集中砲火を浴びせる。けどさっき知彦くん自身も認めていた通り火力が足りないのか、全弾命中したというのに決定打にはならない。
さーて、どうやってあと三発ぶち込もうかなぁ……?




