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みえこま〜見えないはずの物が見えて困ってます〜  作者: ぽて
第2章 夏はスリルとサスペンス

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10 絶体絶命!?



 目がさめるとそこは森の中だった。


「一服盛られるとか人生初の体験だったなぁ……」

「……できるなら一生したくない経験ですけどね」


 声のした方をみると、ちょうど知彦くんも目を覚ました所だったようだ。薬の効きが良すぎたのか、ふらつく頭を抑えている。……それにしても、なぜにこんな場所で放置プレイ?


 何か理由があるのだろうかと、周りを見回してみる。


 ――木、木、木、木、鬼面のマッスル、木、木、木。


 …………鬼面のマッスル?

 その容貌は異様だった。何しろ腕が六本ある。しかもムッキムキ。胴には虎ジマの毛皮を身につけている。


「…………ど、どちら様でしょうか?」


 なんとなく予想はついていたけれど、怪異違いという可能性も僅かにあるので聞いてみた。


『今は土蜘蛛と呼ばれておる』


 い、意外とフレンドリー? そしてやっぱり怪異違いというわけではないらしい。でもさ、村を治めるだけなのに、そのマッスルは必要なんですか? 外敵を腕ずくで追い出すのに必要? ……あっ、はい、そうですよねー。


 知彦くんが胸元から何かを出そうとして、「チッ」と舌打ちした。寝ていた間にボッシュートされてたみたいだ。抜け目ないなぁ、容認派の人。


『若き退魔師どもよ。一つ提案があるのだが?』


 提案とな。土蜘蛛さんは意外と紳士らしい。まあ襲うつもりなら、わざわざ目が醒めるまで待ってはいないか。


「どうせ、この村のことは見逃せとでも言う気なんだろう?」


 知彦くんが苛立ちを隠せない声音で返した。


『その通りだ。大半の者はあちら側に行くに際して賛成しておる』


 容認派のことですねーわかります。大半が賛成って事は、玄海さんのような反対派の方が少数派って事なのか。

 でも、問題なのはシィの『こっちの人が、あっちで暮らすのは大変だよ』という証言である。


「あっちは色々と危険が多いと聞いてますが……?」

『その為に我がおるのだ』

「つまり、村は土蜘蛛さんが守ると?」

『――然り』


 力強いお返事有難うございます。……なんかあんまり問題なくない? アフターケアも万全っぽいし。知彦くんにアイコンタクトしてみた。なんか、アホの子を見るような表情された。


「アンタ達は良くても、こっちからしてみれば大規模霊災害なんだよ! 近隣地域にかかる迷惑と、それを後片付けする方の身にもなれ!」

「ちなみに、どんな迷惑が……?」

『それは我も興味がある。近頃の情勢にはとんと疎くてなぁ』


 僕どころか土蜘蛛さんにまで問われ、「は?」という顔で固まる知彦くん。つーか土蜘蛛さんってば意外とお茶目さん?


「……まず、ここが物理的にも霊的にも空白地帯になる」


 ……ふむふむ。


「物理的な空白地帯になった場合、マスコミを誤魔化せない。当然騒ぎになるだろうな」


 そうなれば矢面に立たされるのは残った関係者各位である。けれど、関係者各位って言っても今回の顛末について話せる人はほぼいないだろう。だって「土蜘蛛さまに土地ごと連れてかれちゃいましたー」とかバカ正直に答えたって信じてくれるはずもない。


「アンタは村人の事を大層大事にしているそうじゃないか。残った村人たちに対しては何も思わないのか?」

『無論、あえてこちらに残った者達に対してもこの想いは変わらぬ』

「最近のマスコミ攻勢は酷いらしいからな、下手をすると犠牲者がでるかもしれないぞ」


 それでもやる気か? と知彦くんがたたみかける。『むぅぅ』と唸る土蜘蛛さん。


「ちなみに、霊的空白地帯になった場合も割と悲惨だな」


 えぇっ、まだ何かあるの!?


「この地域を中心として周りの地が『あちら側』に呑まれやすくなる。それに『結界』を補修できたとしても穴がある分手薄になるから、『あちら側』からの大物流入が防げなくなる可能性は高い」

「大物が出てきたらどうなるの?」

「この辺りには対抗できる退魔師がほぼ居ないので、少なからず犠牲者が出るでしょうね」


 ……まぁ、今回僕らがここに居るのもそれが理由だもんね。


「アンタが治めていた頃と今じゃあ、そもそも時代が違いすぎるんだよ。それでもやる気か?」


 知彦くんの鋭い視線が土蜘蛛さんに突き刺さった。




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