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みえこま〜見えないはずの物が見えて困ってます〜  作者: ぽて
第2章 夏はスリルとサスペンス

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5 だいたい怪異のせい



 神はいた。

 いや、それは正確じゃあない。怪異はいた。昨今、世の中では何でも妖怪や怪異のせいにする風潮があるが、今回の出来事もそうだったらしい。


 何故かはわからないけど、唐突にそいつは姿を現したのだ。……もしかしたら、グダグダになった空気に耐えきれなくなっただけかもしんない。


 そいつはなんか、からし色のオニだった。トレンドに合わせてかリアルでは無くデフォルメ仕様。ギョロッとした目にタラコくちびる。服は腰ミノ一丁に、腕には棍棒。子供向けゲームに出てきそうな感じ。

 なんか隣で葉狩さんが「かわいい」とか呟いてるんですけど、キミそーいうのが好きなんだねー。


『ふくふくふくしゅうぅぅーっ!』


 そんな中で放たれたオニの第一声はなんかおかしかった。え? あれ鳴き声なの?


 ……あー、アイツ今出てきた理由とか特に無いのカモ。本能で生きすぎでしょ。とりあえず『ふくしゅう鬼』とでも呼ぶとしよう。


「な、なんだよアレは!?」

「なんかキモいんですけど!」


 いつもの如く『境界』化現象で他のお客さんの姿が見えなくなった。……と思ったら、バカップルだけは巻き込まれていた。


「恐らく、ターゲットだから巻き込まれてしまったんでしょうね……」

「……なんて不運な」

「それだけ犯人さん−−浅井さんの恨み辛みが大きいという事だと思うんですが……」


 その割には、なんというかシリアス味が足りない。敵のビジュアルがコミカルすぎなんだよなぁ。これじゃあシリアルだよ? 雑魚で噛ませな餓鬼さんだってもうちょっと怖い外見してるってのにさ。ちなみに浅井とは犯人のおねーさんの名前だ。もちろん被害者さん情報。


 とか思ってたら、なんか 浅井さんがアレを見て満面の笑みを浮かべた。


「神様! あなたが出てきたって事は、もう我慢せずに殺ってしまって良いんですね!」

『ふくふくふくふく!』


 まさかの電波系おねーさんだったぁぁ!? しかもあんなのを神様扱い! 発言もイロイロアウトだよ!!

 あと、ふくしゅう鬼。お前まさか『ふく』以外の言葉しゃべれないのか?


「ちょ、おま、本気なのかよ!?」

「あたしたちが何をしたって言うのよぉ!?」


 バカップルたちが 浅井さんの本気を感じ取って慌てふためいている。どうやらまだ犯人さんの正体に気付いてないようだ。まぁ、女性は化けるって言うしね。現にさっき見せた写真に写ってた彼女と、いま僕らの前にいる彼女は殆ど別人だ。

 それにしても……あいつらまじ何やらかしたん? 被害者さんからその辺の詳しい事情は聞いてないからわからない。なんか嫌な予感したから止めておいたんだよね、すごいドロッドロの愛憎劇的なもの聞かせられそうな予感がしたからさー。僕、昼ドラ展開はまじ勘弁。


「うふふ、あはははは!!」


  浅井さんがいつの間にか取り出したナイフ−−女性が持つには大振りの刃で、刺されたら凄い痛そう−−を構えて、狂ったように笑いながら男に走り寄る。−−って、呑気に眺めてる場合じゃない!


「ひぃっ、来るなぁ!」

「ちょ、マジなの!?」


「氷上くん!」


 バカップルの動揺した叫びをBGMに、葉狩さんの鋭い声が飛ぶが僕は既に動いている。じゃなきゃ間に合わないので。


「怪異は私がどうにかします!」


 彼女なら、あのファンシーな妖怪もどきなどに遅れを取ることはあるまい。今回は突然の神隠しだったのと、武装解除があったからトレードマークの薙刀が無いけど。

 僕は心置きなく、浅井さんと男との間に割って入った。そうして浅井さんの手首を掴み、勢いを殺したところでナイフを叩き落とす。浅井さんにしろバカップルにしろ、ナイフを拾われると面倒なので誰もいない方に蹴り飛ばすのも忘れない。人外相手ならともかく、人間同士で『殺られる前に殺れ』を実践されたら堪ったものじゃないからね!


「くっ、邪魔しないでよ!!」

「気持ちは理解出来ないことも無いですけど、人として黙って見てるわけにはいかないので……」


 腕を捻り上げて浅井さんを拘束する。なんか一般女性とは思えないくらい力が強くて、動きを止めるだけで精一杯だ。浅井さん、ドーピングでもしてるんですか?

 バカップル達は恐怖で腰を抜かしていた。情けない、とは言うまい。さて、これでコッチは取り敢えずひと段落だけど……。


 チラッと葉狩さんの方を見てみる。シィか念動力で動きを封じて、葉狩さんがお札のようなものをふくしゅう鬼に投げつけると、鬼は青白い炎に包まれた。


『ふく、ふく……ふ……』


 そして、まともな断末魔すら残せずふくしゅう鬼は退場した。まじで何だったのあいつ?




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