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みえこま〜見えないはずの物が見えて困ってます〜  作者: ぽて
第2章 夏はスリルとサスペンス

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2 森の館殺人事件



 夕食時。美味しいご飯をたらふく食べていたら、ヒュンッと何かが頬の側を通り過ぎた。


「……一体何が……?」


 違和感の残る頬。そこに当てた手を見てみると……赤い一筋の線。ふと背後の壁を見てみると一本の矢が刺さっていた。


 大事になった。

 事態を把握するにつれて、青ざめていく宿泊客と従業員たち。一組だけいる親子連れのお子さんが、不穏な空気を察知して泣き出した。


 そりゃー、ご飯食べてる最中に矢が飛んで来れば、ねぇ?


 一連の光景をしっかりと目撃してしまったとある男性客は、「こんなヤバイ食堂で飯が食えるか! 俺は部屋で食べる!!」とか言って部屋に篭ってしまった。台詞から行動まで全てが死亡フラグっぽいなと思ったけど、心の中にしまっておいた。本当になったら怖いので。


 弓の位置を確認したら、時限式っぽい仕掛け。そして致命的な場所へは当たらないような仕様になっていた。森の館での夕食は基本的に客が一堂に会して食べる。その際のアットホームな雰囲気が、この森の館の売りの一つでもあるのだが−−これは食事時間中には誰も席を立たない事を利用した罠だ。


 しかし、よりによってなぜ僕がターゲット? 人様に恨まれるような事した覚えとかまるで無いんですけど……。え、まさかの無差別テロ的な? 飯テロなら大歓迎だけど、武力テロはちょっと……。ただ、こんな森の中の少人数しか泊まれないペンションでテロ起こすメリットがサッパリわからない。


「あの、氷上君。頬の怪我、手当てしなくてもいいんです?」


 短い間に色々と起きすぎて、思考まで高速化していたらしい。現実に戻ったのは、葉狩さんが心配そうに声をかけてくれたおかげだった。


「へ? ……ああ、言われてみれば」


 浅く掠っただけなので既に血は止まっていたが、なんか傷口が空気に触れてヒリヒリする。


「私、救急箱借りてきますね!」


 痛みで表情が歪みでもしたのか、僕の変化を感じ取った葉狩さんはタタタッと素早い足取りで食堂から出て行った。


『ぴにゃぁぁぁぁっ、にゃぁぁぁぁーっ!? 後ちょっとで串刺し妖精になるとこだったぁぁぁっ!!』


 ところでシィさん。かなり際どい位置に居たのは知ってるから黙って? 正直うざい。





 さて、ちょっと状況確認でもしてみよう。シィは放っておいたらなんか勝手に静かになった。めいいっぱい叫んでたら気が済んだらしい。今は葉狩さんの部屋に行ってる。女の子同士でパジャマパーティーするんだってさ。


 こうして一人になると考えてしまうのは、やはり夕食の時の事だ。


 ちなみに、本日の宿泊客は僕らを含めて五組。まずは見事な死亡フラグを立てちゃったお兄さん。次に子連れの親子三人。なんか無茶苦茶甘々なカップルに、大人しそうで少々地味そうな文学系お姉さんの総勢九名になる。シィさんは除外です。だって視えないからネ!

 他に、このペンションのオーナーさんと、その奥さんの二人が現在この『森の館』にいる人間の全てだ。


 この中から僕らを抜いた九名の中に、罠を仕掛けた人間がいる。……ま、死亡フラグのお兄さんは除外していいか。ガチで怯えてたからなぁ。あと、親子連れのお子さんも。見たところ小学校低学年っぽかったし。あの歳で時限式トラップ仕掛けたとは思いたくない。どこのソルジャーだと問いたくなってしまう。

 普通に怪しいのはオーナーさん夫婦。罠に対する位置取りとか一番把握できそうなんだけど……動機がなぁ。無いんだよね。このペンションを一生懸命盛り立てようとしてるのは見てるだけでもわかっちゃうし。わざわざこんな事するかなぁ? ドッキリミステリーツアー的な催しとか? ……あれ、それならアリかも?


 騒動の時の蒼白になった顔が演技だとは到底思えなかったけど、なんかもー考えるの面倒いからドッキリミステリーツアーでいいや。


 さて、もう寝ようか。明日は目的地までの移動が待ってる事だし。





 −−翌日。

 朝食の時間になったので、葉狩さん達と連れ立って食堂に向かった僕ら。


 そこで知ったのは、あのお兄さんの死亡フラグが成立してしまったという事実だった。



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