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みえこま〜見えないはずの物が見えて困ってます〜  作者: ぽて
第2章 夏はスリルとサスペンス

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1 遠征の夏



 ここ二、三ヶ月は、町で起こるちょっとした騒動の解決やら後片付けやらで過ぎていった。おかげで餓鬼さんの集団くらいではもう戸惑う事も無い。最早、事務処理みたいなものである。……それにしてもホントどんだけいるの餓鬼さん。と、思うくらい湧いてくるんだけど何なのあれ? まさか分裂してるの? ……ここ最近は、葉狩さんの前任者である退魔師の和尚さんが死ぬ気で境界の補修してたから、かなり落ち着いてるけど。

 ちなみに未だ異変の原因は見つからず。プロが片手間−−和尚は変わらず副業に専念している模様。世の中結局お金ということかもしれない−−に探している状態なので進展がない。目立った被害があまり無いので、小康状態では? とのこと。


 −−と、それは置いといて。


 夏休みです。ちなみに学校の屋上で作戦会議するのにも、さすがに限界がきた−−本来は危ないので立ち入り禁止になっているし、部活をしてない僕らは休日に学校に行く必要性が無い−−ので、最近はもっぱら和尚さんの家を貸してもらっている。僕的には学校行くより遠いのが難だが、自動的にお茶とお菓子出てくるのが良し。

 ばーちゃんが生きてた頃は、自宅でもおやつ出てきてたんだよなぁ……。それも手作りの和菓子。おいしかったよなー。いや、今も時々だけど市販品でなら出てくる事もあるんだけどね。母さんにはお菓子作りの才能無いからさ……。


「−−さて。待ちに待った夏休みですが、今度は遠征です!」



 葉狩さんの地味に弾んだ声。実は夏休みが楽しみだったんだね?

 ……そして人手不足ですもんねー退魔師業界。夏休みの学生とか格好の餌食ですよねー。いや、ついでにタダで旅行できると思えばお得? 旅行費とかは当然、あっち持ちだろうしさ。


『えんせい、えんせい!』


 うむ。やったらめったらはしゃいでるシィさんだが、意味わかってるのかなコレ? それはともかく−−


「海? それとも山?」


 これ、重要。行く場所によっては、持っていくものも変わるからね! 場合によっては水着回も期待できるんだろうか? わくわく。


 結果は果たして−−


「−−今回は山です。ちょっと遠いので、初日は宿に宿泊する事になりますが……」


 むぅ、山か。……ちょっと残念。ま、夏休みは長いし、山でも水遊びくらいは出来るさ。



 −−そんな会話があった一週間後の現在。僕らは外からざあざあと激しく地面を叩く水音が聞こえる陸の孤島で、サスペンスに巻き込まれていた。





 電車を乗り継ぎ、最終的には最寄り駅からのタクシー利用でたどり着いた本日のお宿。おしゃれなペンション風の建物だけども、大き過ぎず小さ過ぎずの丁度いい感じ。葉狩さんの話では、今回のチョイスは高校生である僕らへの特別な計らいだそうな。夏休みなので。


 退魔師業界、実はホワイト? いやいや、和尚さんのブラックな仕打ちは忘れてはならない。きっとこれ、飴と鞭の飴ちゃんの方だ。


「いらっしゃいませ。『森の館』へようこそ!」


 そう広くないフロントでは、ほんわかとした空気を纏った女性が僕らを出迎えてくれた。


「あの、予約を入れていた……葉狩、です」


 ちょっと緊張した様子で葉狩さんが告げた。女性は手元に置いてあったノートパソコンで何か−−たぶん予約状況とかそういうの−−を確認すると笑顔で、


「はい、葉狩様ですね。ええっと……一泊二日で二部屋のご予約でよろしかったですか?」


 それに葉狩さんが肯定すると、女性は簡単な確認事項を幾つか確認していく。葉狩さんも、たどたどしくそれに答えたり書類記入をしていく。


 それにしても二部屋かー。……ま、当然ソウデスヨネ。未成年だけどお年頃で他人な男女だしねー。


『ヨシト、心なしかザンネンそーだねー?』

「僕もまー男の子ですし?」

『……つまりミサキと同じ部屋が良かったと』


 シィさんの視線がなんかキツイんだけど、え、なにそのヘンタイを見るような目。心外なんだけど?


 それに別に葉狩さんの事すっごい意識してるわけでは……ごめんなさい。割と意識してます。

 だって転入直後こそ緊張して無表情だった彼女だけど、最近は慣れてきたのかよく笑うようになったんだよね。彼女って整った顔立ちしてるから、可愛いんだよこれが!

 しかも僕の場合、学校だけじゃなくて退魔師のお仕事で顔を合わせる機会が多い。んで、お仕事の時の彼女がまた……カッコイイんだよね。キリリッとしてるんだよ。もうギャップ萌えってヤツですよコレ。

 多分に釣り橋効果とかもあるかもしれない。……いやあれは主に女の子側へ影響を与えるものなハズ。いくら葉狩さんが漢らしく見える時があるからって、まさか僕の乙女化が始まっているのか……!?


「−−氷上君。行きますよ」


 −−はっ!?

いま、なんか意識飛んでた。葉狩さんの声で何とか戻って来れたようだ。……なんか飛んでた原因も葉狩さんだったような気がするけど。


『……ヨシトぉ。なんかへんな事考えてたでしょー?』

「そんなこと考えてなんてないよ!」


 ニヤニヤと嫌な笑みでシィが指摘してきたが、否定しておいた。僕は単に葉狩さんかわいいって思ってただけですよ!



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