初めてのメイド喫茶4
いや、横山ルイではない。ウルルさんだ。彼女がウルルさんだ。僕がテレビでよく見る横山ルイにそっくりだ。プロフィール画像は見ていたが、実物の方が何倍も可愛い。
ウルルさんは僕の前を通過し、奥へ歩いて行こうとしたが「あ、ウルルちゃん!ウルルちゃんちょっと待ってなり~」と例の男性がクマのヌイグルミを動かしながらウルルさんの足を止めた。
「プ~さんじゃないですか。どうかしましたか?」ウルルさんは首をかしげ尋ねた。その仕草はあまりにキュートであり、僕の心臓が一瞬止まりかけた。
「あのね、あのね、これだよ、これ。ウルルちゃんが最近ハマってると言ってたプロ野球のマスコット人形なり。まず阪神だけ確保してきたなりよ」プ~さん(僕もプ~さんと呼ぶ事にした)はゴソゴソと黒いリュックから人形を出し、クマに人形を持たせそう言った。
「ありがとうございます!うわ~嬉しい。阪神のはまだ持ってなかったんです。大切にしますね~」そう言ってウルルさんは人形を受け取り奥へ行った。プ~さんは満足した表情だ。ハチミツでお腹いっぱいになったのだろう。
暫くすると僕の所にメイドさんがやってきた。
「お待たせしました。こちらがメイドの愛を込めた焼きそばになります」
メイドさんは笑顔で料理をテーブルに置いた。
「今日は来ていただきありがとうございます。初めてですよね?何で知って来られたんですか?」とメイドさんが聞いてきた。もちろんウルルさんという人がネットで噂になっていて気になって来たともいえないので僕は適当に誤魔化した。
「たまたまフラっと入られたんですね。ありがとうございます。気に入ってもらえたら嬉しいです!ゆっくりしていって下さいね~」そういうとメイドさんは奥へ戻っていった。今のメイドさんもなかなか綺麗だったな。名札にさくらと書いてあったので、さくらさんという名前らしい。髪はショートで茶髪、話し方はハキハキしていて好感がモテた。ただ僕はやはりウルルさんが気になる。
僕はなかなか美味しい焼きそばを食べ終わると、今日はそろそろ帰る事にした。テーブルに紙で「お出かけの際は鈴を鳴らしてお呼び下さい」とある。これはメイド喫茶を出る事だろう。僕は鈴を鳴らした。
「お呼びでしょうか。ご主人様~」とさくらさんが来た。僕は「すいません、お出かけお願いします」と応えた。「はい、ではテーブルでお待ち下さい」そういうと、さくらさんは奥へ戻っていった。
そして僕は会計を済ませ、さくらさんに見送られながら店を出た。僕の脳内にはドアを開け、颯爽と入って来たウルルさんがループしていた。僕はどうやらウルルさんにハマってしまったようである。
彼女の顔が家に帰宅してからも消えない。僕は恋というものを経験した事がない。可愛いなと感じる事があったがそれくらいだ。ウルルさんを思うとドキドキして何だか幸せな気分になる。これが恋なのであろうか。またウルルさんと会ってみたい。今度は少し話をしてみたい。僕は帰宅してから、その日ウルルさんの事ばかりを考え眠りについた。