world 3
次にすれ違ったのは、ごてごてした服やアクセサリーで身を固めた女の人だった。
うっわ趣味悪い、と思ったが、敢えて見なかったフリをして通り過ぎようとした。
と、反対側の道から、これまた趣味悪いファッションをした女の人がカツカツとヒールを鳴らしながら歩いてきた。二人は自然と見合う形になる。 ……もしかして、すっごいめんどくさいことになるんしゃないのか、これ。
「あら、ごきげんよう」
「あらあら、ごきげんよう」
ほらやっぱりね。めんどくさいことになった。
「あら、あなた、その首に巻いているのはボロ雑巾かしら? 随分不思議な格好をなさるのね?」
「これはウサギの毛皮でできたマフラーよ。そんなことも知らないなんて、頭のなかにカマキリでも住んでらっしゃるんじゃないかしら? それに何? あなたが頭に被っているそれ。なんでバケツなんて被ってらっしゃるんです? 意味が分からないわ」
うん、張り合うのは別に(どうでも)良いけど、なんで僕の両脇でそれをやるかな。あと、多分敬語間違ってるし、頭のなかにカマキリってなんだよ。
「これは帽子ですわ。それも、五十三万円の。あなた、見る目がないのね」
「何を言ってるのよ。ジャネルのバッグにグッジの財布。私のほうが素敵だわ」
「私のほうが素敵よ」
「私のほうが素敵だわ」
「あ、ねぇ、そこのあなた!」
え、ちょっと待って、僕!?
「ええ、そのとおりよ。私とこの人、どっちが素敵?勿論私よねぇ」
「いっ……いや、どっちもどっちですっ、さよならバイバイ失礼しますっ!」
ちょっともう……ここにはいたくない。完璧に僕が八つ当たりのターゲットになっている。
僕は小さく会釈してそそくさとその場を後にした。