world 2
最初に会ったのは、次々と色々な食べものを口に詰め込んでいる背の高い男の人だった。どうやら、食べるのに夢中で僕のことには気がついていないらしい。
「あのー……すみませーん……」
「うるせぇな、ちょっと黙ってろよ」
低い声で言い放つと、男の人はまたステーキやらケーキやらを口に詰め込み始めた。
「あの、邪魔しちゃってすみません、道を教えて頂きたいんですけど……」
「集中してるんだ、静かにしてくれ」
話している間にも、食べ物を吸い込むスピードは全く落ちていない。なんだこれは、ブラックホールか?
「えーっと……だから、道を……」
「うっせぇんだよちょっと黙れ! 俺は今食べてんだよ!」
突然の大声に、びくりと肩を震わせる。ビビった、今のはさすがにビビった。
「道なんてどこ行っても大して変わんねぇだろ、邪魔すんな! ああ腹立つ、二度と俺の視界に映るな!」
「あっ……は、はい」
僕は急いでその場を立ち去った。
「ああ、美味い! 最高だ! 食べても食べても太らないし、無くならないっ! よしっ、今度はキャビアでもいくか!」
――こいつ、前世は縦ではなく横に長かったな。
半ば呆れながら、僕は振り返らずに走った。