world 1
あたり一面花畑だった。目が覚めた時からそうだったのだ。赤、白、黄、と、様々な色の花が咲き乱れている。
目をこすって欠伸をすると、ははっ、と、快活そうな少年の笑い声が聞こえた。
「起きたみたいだね? おはよう」
そばに、珍妙な格好をした少年が立っていて、嬉々とした表情で俺の姿を眺めている。
「……ここはどこだ? で、あんた誰だ」
そう呟いた俺の声は、心なしか普段よりも少し高かった。
「ぼくは夜王子。それで、ここは蘇りの国。君は死んだんだよ」
「お、俺が……死んだ?」
「そ、交通事故。いやぁ、キレイな死に顔だったよ」
「おい」
「冗談、冗談。でさ、今君、少し体小さくなってるでしょ。ここでは、やり直したい歳の姿が自分の姿になるんだ」
確かに、俺の――僕の体は中学生くらいの姿まで後退している。
「まあ、このままでいいって人は姿は変わらないのさ。でもたまに生まれた時からやり直したいって人もいて困るんだけどね。ぼくは別にやり直したくはなかったから、このまま。もうかれこれ百年はここにいるかな。気が済んで、ここに未練が無くなった人は、ほらあれ、ちょっと遠くに見えるあの扉から生まれ変わるんだよ」
言われて見たその扉は、両開きの厳かな感じを受ける茶色い扉だった。何もない空間にその扉だけがぽつりとある様子は、実に奇妙だった。
「ここの世界では、なんでも自分のほしいものを手に入れられるんだ。ゆっくり見て回るといいよ」
そう言うと、夜王子とやらは風のようにその場を去っていった。
――取り敢えず、あちこち見て回ってみるか。
僕は立ち上がり、大きく伸びをした。