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異界の悪魔が恋をして

悪魔はただいまデート中

作者: 縁ゆうこ

「異界の悪魔が恋をして」に登場する、アスラと那波のお話です。

いつまでたっても恥ずかしがり屋のアスラは成長できるのでしょうか?

 もうすぐお付き合いしだしてから、初めての那波ななみさんの誕生日がやってきます。


 ボクは何かプレゼントをしたいのですが、面と向かうと恥ずかしくてなかなか聞き出せません。なので、ホントに不本意ながら!ボクより那波さんとつきあいが長いし、いちおう女だし、と言うわけであいつに相談したのでした。


「那波の誕生日?」

「あ、ああ。俺がちゃんと那波さんの欲しいものを聞き出せればいいんだけど‥‥」

「未だに恥ずかしいの?あはは、どこまで純情なのよ。だから那波のお父様にボディガードとしてしか見てもらえないのよ」

「うるさい!」



 そうなんです。

 那波さんのお父さんは、那波さんをそれはそれは可愛がっているので、今までの彼氏候補はすべてお父さんの攻撃に、あえなく敗退していたんだそうです。そんなお父さんに、なぜボクが認めてもらえたかというと。


 那波さんのお家に行って、那波さんがボクを紹介してくれた時、お父さんはものすごい殺気をかもし出していました。前に一直いちなおがデラルドに出したのなんか比べものにならないほど!と、ボクには感じられました。怖かった!

 那波さんはちょっと怒ったように、

「もう!お父さんそんなにブスッとしないで。明日羅あすらくんが怖がってるじゃない。ねーえ、明日羅くん?」

 と言ってボクの腕にそっと腕をからめたので、ボクは恥ずかしくてカキーンとその場で固まってしまいました。

 その時、お父さんの目がキラン!と光ったような気がしたのでしゅ。

「あー明日羅くんとか言ったね。まあ座りたまえ」

 ボクは勧められたソファに那波さんと並んですわったのでしゅが、那波さんがピッタリと寄り添ってくれたにもかかわらかず、うっ、となって少し位置をずらしました。

 するとお父さんは、うんうん、と満足したようにうなずいて、

「ははは、君は礼儀正しいんだね」

「そうよ!だからお付き合いするのをゆるして?いいでしょ、お父さん」

「ああ、わかった。お付き合いするといい」


「は?」

「えっ?!いいの、お父さん!」


 ボクたちはびっくり。

「もちろん。明日羅くんは那波に何かあれば、ちゃんと守ってくれるんだよね?」

「はい!」

「それなら、仕事で遅くなった時なんかはボディガードとして、ちゃんと家まで送り届けてくれ。そのほかにも危ないときは那波を命がけで守ってやってくれ」

「ちょっと!お父さんそれはあんまり失礼よ」

「わかりました!必ず無事に送り届けます!守ります!命に替えても!」

 お父さんはとんでもなく純情なボクなら、那波さんには貞操の危機がないと確信して、お付き合いを許してくれたんです。まあ、その通りですけれど。

 那波さんは不服そうでしたが、それでも今までのことを考えると、お許しが出たのが奇跡のような話なので、なんとか納得したのでしゅ。



「アスラ、ちょっといい?那波にあのこと聞いたから」

 そんなある日、あいつが昼飯から帰って来てボクを呼びました。

「!今行く!」

 ボクは飛んでいって話を聞くと‥‥


「那波はあんたの気持ちだけで嬉しいって言ったけど、それじゃダメよって、考えてもらったの」

「うん」

 よくわかってるじゃないか、なかなかいい所もあるなこいつ。

「で、それならふたりで持てて、センスのいいものって事になって」

「うんうん!」

「ペアのペンダントなんか良いんじゃないかって。お互いのイニシャルを交換してね。アスラは那波のNを、那波はアスラのAを」

「へえー、なんかすごいな」

 那波さんとペア。それを考えただけで、嬉しくて恥ずかしくて、ちょっと赤くなってしまうボク。

「あ、ありがとう。じゃあ、当日一緒に選びに行くよ」

「どういたしまして」


 良かったー。何とかこれで格好がつく。とホッと胸をなで下ろしていると、あいつがニヤニヤしながら言って来たんです。

「でもねぇー。那波が本当に欲しいのは、ものじゃないと私は見てるんだけどなー」

「なんだよそれ」

「ねえ、アスラは今まで自分から那波にモーションかけたことある?」

「モ・モーションって何だよ?!」

 ボクは何かイヤな予感がしながら、あいつに聞いたのでした。

「いつもkissは那波からなんでしょ?」

 なな!なんてこというんでしゅか、こいつは!でも、事実そうなのでボクは真っ赤になるだけで言い返せません。

「ああー、やっぱりそうなんだー。でもさあ、もうそろそろあんたから仕掛けてあげてもいいんじゃない?」

「な!なにを!」

「だってー、好きな人から一度もkissしてもらえないんじゃ、女の子としましては、ものすごーく淋しいものよ」

 なな!なんだ?!そうなんでしゅか?ボクは那波さんに寂しい思いをさせているのでしょうか。ちょっとシュンとしてしまいました。

「だからさ、一緒にペンダント選んで、そうねー海の見える公園なんかでそれを渡すときにー」

 あいつはニヤッと、本当に悪魔の微笑みを浮かべて言ったのだ。

「アスラから、もうひとつのバースデープレゼントとしてkissしてあげなさい」

「ーーー!」

「じやなきゃあ、ほんと愛想つかされるわよ?」

 あ・愛想つかされる、愛想つかされる。それは那波さんに嫌われると言う事でしょうか?と!とんでもない!ボクは思わず手を握りしめて、

「‥‥わかった。ぜったい頑張ってみせる。愛想つかされないよう」

と、言ったのでした。あいつがもう一度ニヤッとしたのなんて、その時のボクには、気づく余裕もありませんでした。



 その日の終業後、あいつがまたボクを手招きするのでなんだろうと行ってみると‥‥

「アスラは女の子が喜びそうなアクセサリーショップなんて知らないでしょ?」

「あ?ああ、そうだけど」

「じゃあさ、私が那波の好きなショップ知ってるから、教えてあげる。それでねー」

 あいつはなんだかものすごーく嬉しそうに、ショップの場所とか名前とか、そのほかにも、ご丁寧なことに、港の海沿いでロマンティックにkissできそうなポイントまで教えてくれた。

「それでね、このショップからは歩いてここまで行くでしょ、それでね、この、すっごくステキな街灯の下に那波を誘ってー」

Chu!

と、あいつは投げキッスなんかをする。もちろんパソコンに向かう一直の方へ。

「これでバッチリよ!素敵~那波もきっとあんたに惚れ直すわよ」

 そ、そうでしょうか。それじゃあ頑張らなければ。

 ボクは当日まで、あいつの考えたシミュレーションを頭にたたき込むのに必死だったのでした。



 そしてお誕生日当日。

 待ち合わせの場所に現れた那波さんは、何というか。

 いつもは可愛い格好をしているのですが、今日は少し大人っぽい雰囲気で、あの、あの、とっても綺麗です。ボクはそれだけでドキマギしてしまいました。

 でも今日は特別だ!と頑張りましたよ。


「い、行きましょう」

 と予約してあったレストランで食事して。

 そのあとはウィンドーショッピングというのでしゅか、あちこちお店を覗きながら歩いて。例のアクセサリーショップに那波さんを連れて行くと、

「わあ、ここのアクセサリー大好きなの」

と、とても嬉しそうに言ってくれたのでした。もうボクは幸せでフワフワします。

 那波さんはどれにしようかと、ずいぶん悩んでいましたが、ふとボクが目にとめたペンダントを偶然那波さんも見ていたのです。

 目が合うと、ニッコリ笑った那波さんが言いました。

「明日羅くんもこれが良いと思った?」

「はい」

「私たちってすごいわね、ふふっ。じゃあこれにしましょ?」

「はい」

 シンプルだけど感じのいいデザインのそのペンダントを買って。プレゼント用のラッピングをしてもらい、僕たちは店を後にしたのでした。


 そそ、そして、そして。

 とうとうその時が来てしまったのでした。


 港の海岸ぞいのその道は、本当にロマンティックで、たまにカップルが、キ・kissなんかをしているのが目に入りました。

 ボクは那波さんから不意打ちでkissをくらわされないよう、その日は慎重に距離をとって、あいつが言ってた街灯の下まで歩きました。そして、

「あ、あの。那波さん、お誕生日おめでとうございます」

 と言いながら、プレゼントの箱を手渡して、

「ありがとう」

 微笑む那波さんに近づいて、可愛く顔を傾げる彼女にこう言いました。

「あの、今日はもうひとつプレゼントがあるんです」

「?」


 そうして、ありったけの勇気をふりしぼり!

 那波さんを抱き寄せて、その唇に自分の唇を重ねたのでした。

 ああでも‥‥

 那波さんの唇ってこんなに柔らかくて、こんなにあったかかったんだ。ボクはそんなことすら、今日初めて気が付いたのでした。

 あんまり感動したので、少し長いkissになってしまい、ボクはあわてながらもそっと唇を離しました。そして那波さんを見てびっくり、

「明日羅くん、ありがとう。今までで一番嬉しいプレゼントかもしれない」

 そう言う那波さんの頬には涙が伝っています!ボクは焦ってしまい、どうしよう、どうしよう、とあたふたしだしたそのとき、


ドドォーーーン!


 いきなり海の方で花火が上がったのでしゅ。あっけにとられて眺める那波さんとボク。良く見るとその花火はハート型になっています。その時いきなり那波さんのカバンの中で、携帯電話が鳴り出しました。

「あ、ごめんね」

 そう言って電話に出た那波さんは、最初何やらびっくりして話していましたが、そのうちだんだん笑顔になり、

「うん、そうなの。ありがとうね、きょうちゃん。じゃあまたね」

 恭ちゃん?ボクはイヤな予感がして那波さんに聞きました。

「電話は?恭ねえちゃんから?」ボクはあいつのことを、人に話すときはそう呼んでいるのでしゅ。

「うん、あのね。あの花火は、恭ちゃんと音川おとかわさん。それから、ルエラさんとルシアさんからの贈り物なんだって」

「ええっ」なんでまた母ちゃんまで?

「私のお誕生日と、明日羅くんの成長を祝ってですって。明日羅くんまた背でも伸びたの?」

「い、いえ‥‥」

「なあんて冗談、ふふっ。明日羅くんからの贈り物が成功したら、花火が上がることになってたんですって。音川さんと二人じゃ予算が足りないからって、ルエラさんと明日羅くんのお母様にも協力金出してもらったって。そんなこと考えつくのは、恭ちゃんたちだからよね」

「あ、あいつら!」

 ボクは那波さんの前だと言うことも忘れて、思わず言ってしまいました。

「でも、本当に嬉しかった。だから恭ちゃんたちを許してあげてね」

「那波さん」

 那波さんはそう言って今度は自分から俺にぎゅうーと抱きついてきたのでした。

 アワワワ!‥‥


 でもそう言えば、

「あいつらはなんで俺が那波さんにキ・kiss出来たってわかったんだろう」

 ボクは疑問に思ったことをふと口にだしていました。

「あ、それはね。ちゃんとどこかで見てるって」

 言いながら海と反対側を見る那波さん。なんだって?!ボクはあわてて悪魔眼を使ってまわりを見渡しました。


 すると、


 いた!古くて趣のあるホテルの最上階にあるラウンジで、音川さんと窓際に陣取って、そ・双眼鏡のぞいてるあいつが!

「あ、あいつー」

「え、いたの?どこ?」

 ボクはビシッとその窓を指さしました。すると那波さんは「あ、あの窓?」などと、言いながら手を振ります。そんなことしなくても良いですよー那波さん。

 そうしたら、二人は調子に乗って手なんか振り返してる!

「くそう。あいつらタダじゃおかないからなー」

「ダメよ、明日羅くん。私はみんなに感謝してるのよ」

「‥‥わかりました」

 

 ボクはしぶしぶ承知しましたが、あいつらめ。那波さんが止めてくれなければ、ボクは本気でヤツらに呪いをかけてましたよ。


ふんとに!


後日、アスラが恭に文句を言います。

「もし俺が那波さんにキ・kissしてなかったら、花火はどうするつもりだったんだよ!」

「あら、みんなアスラのこと信じてたもの。絶対アスラなら出来るってね」

などと言われて、また照れて真っ赤になり、

でも信頼してくれていた皆にちょっと感激などしてしまったアスラでした。


純情アスラの奮闘は、まだまだ続きそうですね。

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