虚像とラッパ
黒曜の輝きが部屋を照らす灯りにより、
更に煌々と映える。
其処にぬらりと一匹の魚が泳ぐ、
恐らくはナポレオンフィッシュだろう、
その威風堂々とした王者の如く風格は神々しさすら醸し出して居た。
「二人を呼びつけたのは他でも無いよ…おれのとある目的の為にね…」
その部屋…『アクアリウム』の主たる童子はその中央に据えられた玉座に頬杖を着きながら悠々と語る。
方や少年と少女らはその異常な程の狂気を孕んだ眼に耐えきれずか、
黙りこくったままだ。
「さて、ナツヒコくん…否、 呪われた桜宮の者よ…吾は汝に問いたもう、汝は何故力を持たぬか…?」
突然聞くことは無いと思っていた前世の姓を聞いた少年は弾かれた様に身を震わせた。
「何でお前が知ってるんだ?」
されど覚悟の光る瞳でその童子に質問を質問で返す。
それも童子は鬱陶しそうに眉を顰めて貫く。
「質問しているのはおれだ、質問を質問で返すなど君は泥棒猫と死んだ母から何を学んだのだ?」
(泥棒猫?
誰の事だ?)
と少年の胸中では疑問が渦巻くが其れを知らぬ物として何処からか取り出したワイングラスにイチゴミルクを注ぐ童子。
「まぁ良い、どうせ君が力を持たぬ事など時期にわかる事だからな…」
そう言ってそのイチゴミルクを口に含む童子、
「ところでテティスよ…学校はどうだったかね?」
さも世間話をするかの様に…
娘に父親が語りかける様に少女に問う童子。
一方の少女は突然質問を売られたことに驚き何も返せ無いで居た。
「ぁ…え?」
だが其れでも構わないとやはりイチゴミルクを一口飲む童子。
「ふむ、君たちはどうやら緊張し過ぎている様だね、そんなのではお話も出来無い」
こんなことを言って居るが童子は対等な立場で話そうとはして居なかった。
其れは玉座で頬杖をついている彼と、
そんな彼をみながら未だ立ち上がっているままの少年らをみれば一目瞭然だ。
「お、おい…だから何でお前は俺の……知っているんだよ」
そんな空気に耐え兼ねてか少年の方が疑問を口にする。
すると童子はさも面白そうにと言わんばかりに満面の笑みを浮かべた、
その眼に狂気の熱を煮え切らせて…
「なに、何のことは無いさ、ただ俺が『綾羽』で在ると言う事だけさ…」
瞬間少年は電撃でも走ったかの様に目を見開いた。
「アヤバ…じゃ…あ、まさか、兄さん?」
しかし兄さんと呼ばれた童子は不快そうに…
其れこそこの世で最も忌み嫌っている物を見るかの様な狂気の眼差しで少年を貫き、言う。
「黙れ、下種が、お前如きに『兄』などと…虫酸が走る!」
少年はしかし、その様に言われたのにも関わらず感涙に目を潤ませる。
「やっと…会えた…」
綻んだ顔からは少年が如何にその瞬間を待ち遠して居たかが明らかにされている。
童子はそんな少年を見て、
さも不愉快そうに顔を歪ませて居る。
「ずっと…言いたいことが有ったんだ…」
だが、少年はそんな童子の反応など居に返さぬと言わんばかりに言葉をつづける。
「母さんが死んだ時に父さんが言っんだよな…俺には兄さんが居るって、それで…」
ここまで言った少年の言葉は他成らぬ童子によって遮られた。
「ほぅ…泥棒猫が死んだか」
どうやらその泥棒猫とは少年の前世の母を指すのだろう。
少年は悲しそうに、悔しそうに目を伏せて、
しかし尚言葉を続けた。
「俺は…兄さんに謝りたかったんだ…でも兄さんが何処に居るかわからなくて…」
「黙れ黙れ黙れ!桜宮の子よ!貴様が幾ら謝ろうと貴様の父の罪は消えぬ!」
その声は爆音の様に響いた。
「貴様がおれに出来る事などたかが知れる!罪の報いは死だ」
下されたのは明確なる殺意と、
侮蔑の言葉だった。
「もぅ良いさ、始まってしまった物は終わらなければ止まらないんだからな」
復讐など非生産的な事をするなどと言うことは…
作者は主人公か夏彦君かで言えば夏彦君派です。




