畏れよ、吾が弟よ
あははは!
やったじゃん!
なぁに?
詰まり奴は…ナツヒコくんはおれにとって忌むべき存在だ、
よう、
改めて運命を呪うパラケラススだ。
そうか、そうか、
彼…ナツヒコくんは、
あの男…母さんを棄てたクズにも劣る畜生の子…
前世にておれの計画を邪魔だてしてくれた少年…春樹君の兄…
これほどまでに殺意が芽生えたのは前世、前々世、にも始めての事かもしれない。
もう既に磨り減って失ったと思って居た感情が燃え上がる。
高ぶり体温も徐々に上がってゆく、
自分を抑えきれて居ない。
これだから本能は嫌いなのだ、
自分を見失う。
出来損ないの完成品で在るヒトと再び同等の存在として、
立つ事になる。
「それも構わんさ…『感情』は時に凄まじい力をヒトに与えるからね」
その中でも最たるモノは『愛』だろう、
其れ故愛はくだらなく、愚かしく、気高く、尊い。
ならばこそ、其れを踏みにじる、
蹂躙する、
死を持ってすら開放され無い永遠の屈辱を『愛』によって生まれた自尊心がヒトを埋めてゆく、
孤独こそがヒトの心に響く様にな、
静けさの中に友を感じる様に、
死を…
裁きを…
「あははははははははは!」
思わず『陣』が展開される、
この世界にきた時から使って居なかった技術、魔法だ。
何も無い空中に文字の羅列が周りだし、
周囲に炎を発生させる。
炎は焼け付く刃と成り、
四散、
控えて居たゴーレムや、
水槽をバラバラに引き裂く。
あぁ、
これだから嫌い何だよ…
おれ以外の全ても、
おれ自身も何もかも。
ーー壊れてしまえば良いーー
ここまで明確な自我による目標が産まれたのはいつぶりだ?
定かじゃ無いけど父親の真実を知った時以来かな?
あれは俺が成人した時だったからな、
母さんを棄てた何にも増して、
不快感を与えるモノ…
その息子が、居る、
その息子の魂がここに在る、
そのくだらない取るに足らない生命がのうのうと在る。
「あぁ…忌々しい、忌々しい、忌々しい、忌々しい、忌々しい、忌々しい!」
そんな事を口で叫びながらおれは狂った様に嗤って居た。
嗤いながら、泣いて居た、
そして心の涙のヒト雫が落ちたそこから水浸しに成り、
尚も迫って来る液体は床ごと蒸発した。
おれの涙が特別熱いわけじゃ無いぞ?
これらを材料に創造するんだよ、
かつてのおれ、パラケラススの象徴をな、
さらに、
壊れてしまったゴーレムの残骸を集めて新しいゴーレムをつくる。
そして、
それらのゴーレムを使って、
『星』の方にもう一つ『ビオロギア』を建てる。
『ビオロギア』だけならこの宇宙中に大量に在るが、
今回のモノは存在理由が根本から違う。
ただ償わせるために、
命の代償は命で、
汝その身を焼き吾にホロコーストを捧げよ。
ナツヒコくん…
これは八つ当たりかも知れないがそんな事は知らない、
なくなって居たはずのおれの感情を再び蘇らさせたのは君自身だし、
君には報いを受けて貰いたい、
蒸発して抉れて居た床などは元に戻ってゆく、
しかし其れは先程までの水を張った水槽では無かった。
黒曜石の如く黒く、
正確に己の姿を映し出す漆黒の鏡の様だった。
おれは最初から最後まで無傷だった玉座に再び座る、
身長が足り無いのでいつものように足を伸ばす、
物体の宿命で在る重力に負ける程度のおれの身体だが、
まぁ良い、
既にタオルが巻かれただけだったおれの身体には懐かしさも覚える模造品が纏われていた。
かつて、
優しかった父親が錬金術によって産み出したローブ、
其れを再現したのだ。
目元も外側からは完璧に見えないだろう。
あぁ、そうだよ…
おれは俺としてでは無く、
パラケラススとして、
かつての全てに決着をつけたいと思って居る。
その象徴こそがあの男の息子、
ナツヒコくん…
彼の死なる祈りを持ってして、
おれは始めて絶対的な安らぎを得るのだ。
誰にも理解出来無い思想かも知れないが関係は無い。
母を棄てた…
それだけでおれにとっては重大罪なのだ。
生きる価値も無くした蛆虫の愚息、
それもまたただ一片の価値もなし!
そのマッチ棒にも劣るであろう存在価値…
おれはそれに魅入られた、
恋情にも似たる不快感、
それが我が愛し子にたかって居る、
考えただけでも怖気の走る事だ。
だがそれも仕方の無い事だ、
むしろ向こう側からテティスに接触してくれたのだから喜ぶべき事とも取れる。
先ず行うべき事はゴーレムの派遣と…
「『ビオロギア』の修理からだな!」
おれの狂気に満ちた娯楽は始まったばかりだ。
祝福されぬ仔羊よ、
『彼』の生命に呪あれ。




