『テティス』
すぅ…、と、
前を見る、
ここはガラス筒の中のようで私は今まで眠って居た様だ。
私がいまこの水槽の様な物の中に居る部屋は上下左右が全てガラス張に成っており、
その中には名も知らぬ生命体が泳いで居た。
しかし、
そんなのよりも目を引く存在が有った。
少し視点を下げた所に居る童子だ。
目の前が霞む程の存在感があったのですぐに解った。
ゴシュジンサマ だ…
それを理解した瞬間に私の肺は外の空気を吸って居た。
「おはよう『***』調子はどうだい?」
『***』?
私の名前?
「ハイ、ゴシュジンサマ」
私は素っ裸のまま、
ゴシュジンサマ の前にでる。
「あぁ、そうだ、新しい服は其処に用意して在る、着ると良い」
ゴシュジンサマ が指を指した方に確かに清楚感の漂う若草色の仕事着が有った。
おそらくゴシュジンサマ が御自ら創造されたか、
他のゴーレムが持って来たのでしょう。
「オキヅカイ、カンシャイタシマス」
一礼して、
再びゴシュジンサマ の顔を見る、
意味も無く心臓が跳ね上がる気がした。
「喜べ、『***』お前の仕事はこれより『オリジン』の世話係だ、『オリジン』も第三の誕生を迎えた事だしな…」
『オリジン』…
この世界、形在る物の中でゴシュジンサマ が最も愛し居られる『ビオロギア』の眠り姫…
第三の誕生を迎えたと言う事は御目覚めに成られたのですね…
「カシコマリマシタ…」
何も不満は無い筈なのに…何故?
こんな感じ私は知らない筈だ。
「あぁ…そうだ、『オリジン』にも名前をあげないとな、もうシステムなんかじゃ無い、新しい生命なんだからな」
名前…
そう言えば私にも…
***…
心の中でもう一度読んでみる。
また心臓が跳ねる様に感じる…
何故…?
ア…
「ワタシガ、イナクナレバ、ダレガ、ゴシュジンサマ ノ…」
しかし、
私の疑問は他成らぬゴシュジンサマ自身に遮られました。
「待て、お前は何故おれの側仕えして居た事を覚えている?」
エ…?
私は…ゴシュジンサマ の側仕えを、していた?
「いや…いい、そんな筈が無いからな…まぁ早く『オリジン』の元へ行け」
…カシコマリマシタ、
☆
子供部屋…
まさにその様な言葉が似合いそうな部屋です…
床には可愛らしい動物のイラストの織られた絨毯、
謎の生き物のぬいぐるみなどが乱雑と散らばって居ます。
壁も乳白色で目に優しく、
正面は宇宙空間が見える様に大きな窓があります。
天井はゴシュジンサマの部屋と同じ様に水槽が着いており、
いまと成っては絶滅してしまった筈のイルカに似た生物が泳いでいます。
そして…
その部屋の中央、
この部屋の主にして、
ゴシュジンサマ の最愛の姪子様、
ぬいぐるみに囲まれたベビーベットにその小さな生命がおりました。
ゴシュジンサマ とは比べ物に成らない程小さく、
私のただの手の一握りで殺してしまえそうな程の儚さ…
このお方こそ今私が御仕えすべき方…
スヤスヤと安らかに寝息を立てて、
時々思い出した様に口を動かします…
生後…
五時間程、でしょうか?
ヒト雫の生命…
『I』の育んだ奇跡…
そんな愛おしさがこの方から溢れていた。
この方は私はお守りして、
立派な淑女としよう…
その為の障害は皆全て私が打ち壊す、
例えそれが同僚のゴーレムであったり、
ゴシュジンサマ の暇つぶしだとしても…
☆
私は今再びゴシュジンサマ の部屋に来て居る、
ゴシュジンサマ が私を呼び出したためです。
「ナンデショウ?」
何も仰らないゴシュジンサマよりも先に不敬とは思いつつ言葉を放ちます。
「何…お前は確か有機物で体を構成していたな?」
ハイ…
しかしそれが何だと言うのでしょう?
「ハイ、アノホシ、の、ヒト、ト、カンゼン二、オナジ、デス」
それでもゴシュジンサマ とあの方とは違うのデスがね…
「そうだ、ではあの星のヒトとおれは何が違うかわかるか?」
これは言外に私とゴシュジンサマ との違い…でしょうか?
「『49染色体』デスカ?」
ゴシュジンサマ と、
あの方の体を構成する細胞にあり、
私の細胞に無いもの…
「ザッツライト!その通りだ、で、何故突然こんな話をしたかと言うと…」
次の言葉は予想がつきます…
まるであの方の口癖…
「暇つぶしだ♪」
ヤッパリですか…
☆
曰くその暇つぶしとはゴシュジンサマ が戯れにあの星のヒトの統治者どもに『49染色体』をばら撒いた所、
それぞれが違った力を発現させたとの事、
それを契約とし、
その本来自然に現れる事の無い『49染色体』を人為的に植え付ける事によって観測と言う名の暇つぶしを行って居た…
で、
ゴシュジンサマ 自身は手を使わずに物を動かしたり…
みたいな力だけれども、あの方はその限りでは無い。
故に、
あの方の世話係となる私にも49染色体』が有った方が良い。
何よりゴーレムに芽生えるのか面白そう。
だとのことです。
圧倒的に最後の意見こそが真実ですね。
まぁ、
あの方を守る力が手に入るならば文句など在る筈が無いですがね…
「では『契約』だ…」
言うが早いが、
私の同意も待たずに儀式を始めるゴシュジンサマ、
私の体の中にまるで見えない管が無数に入りこんできたような感覚…
それは苦痛を伴った快感だった、
「ん…はぁ…」
体が熱くなる…
熱のこもった息が私の喉から情欲を伴って吐き出てくる。
しかし、
永遠にも感じたそれは一瞬だった。
「はい、終わり!」
終わり…と言うのは私にも『49染色体』が植え付けられた、
と言う事なのだろう。
地上の君主達と同じように…
ゴシュジンサマやあの方の様に…
「取り敢えずどんな能力かだけ見せてくれ」
「カシコマリマシタ…」
なにやら身の内にあるかんじた事の無い新しいモノ…
三本目の腕の様な異質感、
それに触れるようにして発動を命ずる。
すると…
私はまたあの子供部屋に居た。
…
なるほど…私の力はテレポート見たいですね…
これなら何時でも逃げるに困る事は無いでしょう…
私はベビーベットに近づき、
未だ眠る我が君主を見る。
この方は成長が遅い…
第三の誕生を迎える際に行われた細胞の収束と開放の…
おそらくは寿命を延ばす意味合いが在るのでしょうが、
幼児期が長く成っただけであり、
肉体が思春期にはいればおそらくですが地上のヒトと変わら無いでしょう。
私は…壊れる瞬間まで…
いえ、
例え壊れたとしても貴方の僕ですテティス様
結局ゴーレムの名前はこんな感じに(~_~;)




