私の存在
サイド:ミカエル
私はいつから存在して居たのだろう?
身体…
今私である事を表す器だけならば私は正に創られた時からだろう。
しかし本当にそうなのだろうか?
この疑問を持ったのは有る男性の祈りに応え、
願いを叶えた時だった。
彼は確かな存在としてここにいる、
ならば私ははどうだ?
私はヒトの祈りに応える事でしか自分を感じられて居ないのでは無いか?
そう思ったらもうダメだった、
自分自身、
確固たる存在、
『全なる一』なんて言う強固故脆い存在では無く、
私は私で居たい、
そう思った。
その矢先だった、
ヒトの愚行がついに主の逆鱗に触れたのだ。
「『アンゲロス』ミカエルに『万物の霊長』として命ずる、
エルフ討伐隊を徹底的に殲滅せよ」
嫌だ、
そう声を大にして言えたならどれだけ楽だっただろうか?
しかし私は言えなかった、
『全なる一』である私であり私達の中に自己概念などと言う絶対調和を歪める存在はいらないのだ、
もし見つかれば即刻我らが父、
全能なる母、
超える事叶わぬ絶対者に破棄されて居ただろう。
嫌だった…
私はまだ私になって居ない、
自分自身は名前だけ、
その名前ですら個体識別の為に与えられた仮初めの番号だ、
自己を確立するには何と脆弱なものか。
結局私はそのままヒトを殺す為の場所に赴きざるえなかった、
そこで聞こえた祈りの数は凄まじかった、
誰もが願って居た、
誰もが祈って居た。
だけど、
何もできなかった、
私にできたのはヒトを殺す振りをしながらベヒモスを減らしていく事ぐらいだった。
そんな抵抗も無駄だった、
痺れを切らした主が御身体直々に『滅び』を振りまかれた。
その時、
身体がかってに動いたとでも言えば良いのか、
翼は彼らヒトを襲おうとしている魔物を殺し、
腕は彼らを守る為に広げられ結界を張った。
やってしまった、
そう思うのと同時に清々しく有った、
それより何よりも哀しかった、
私が守り、
祈っていたヒトが死ぬ事が、
堪らなく嫌だった。
主の被造物として有っては成らぬ事、
絶対者たる神に逆らったのだ、
この代償、
決して償え切れるものでは無いだろう、
あの時主は周りの地形が変わらぬよう最小限の威力でやりをふらした、
もし最大出力で撃たれれば私の薄い結界など水に濡れた紙の様なものだろう。
そして今私はそんな絶対者…
全能なる我等が主と対面している。
「主よ…私は、私は耐えられなかった!」
堪えきれずに言葉が漏れる、
思わず語尾が荒くなる。
「何故彼らヒトが死なねば成ら無いのですか⁈」
主は応え無い、
いつも通りその目元の見え無いフードのそこで私を見据える、
何を考えてるかなんて分からない、
もしかしたら私の心を読んでいるのかもしれない。
「汝…永くヒトを護りヒトの為に生き何時はヒトの為にその身を滅ぼす事を望むか?」
何時もの主の童子の声では無かった、
低く重く心を抉る様な声…
試されている、
直感的にそう思った、
心違わず言うべきだろう、
この方の前に偽りなど皆無、
有るのはただの真実のみの場。
「私は彼らの為に生きて、彼らの為に死にたい、彼らをまもり
彼らの為に生き続ける!」
それが私のレゾンデートルとなるだろう。




