綾羽 令
GWすぺしゃる。
色々禁断くさい所が有ります
サイド:パラケラスス
庭…
もちろんダートン家のだぞ?
つまり、
広大だ。
なんと言おうと広大だ。
そこで俺が何をして居るかと言うと。
「シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた」
歌って居る訳じゃ無いぞ?
歌詞の通りにシャボン玉をふかしている。
200年間生きて居て覚えて居る詩はこれだけだ。
節も既にうろ覚えだ。
何故この曲ばかり覚えて居るのか?
俺の生きた時…
綾羽 令の生きた時代はポップやらの曲も豊富だった。
勿論それらを全く聞かなかった訳では無い。
これが、
この曲が俺、
綾羽 令の子守唄だった。
☆☆☆
サイド:綾羽 令
「シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ…」
「もう良いよ!母さん、俺は中学生だぞ⁈」
俺はいつもそう叫ぶが対して目の前の一児の母とは思え無い程若々しい女性、
母さんはカラカラと笑う。
「私の一人息子何だから少しは親に孝行しなさい、全くお父さんに似て遠慮がちだねぇ」
ちくしょう!
俺がそう言われれば何にも反論できないのを知ってて。
「はぁ、でも奥手な所まで父ちゃんに似なくても良いのにねぇ」
へ?
そうなのか?
「なぁ、父さんって奥手だったのか?」
俺は父さんの事は顔も知らない。
俺が産まれる前に交通事故で死んだらしい。
それに母さんがこんな風に父さんの事を話すのは始めてだ。
「そうだよぉ…結婚のプロポーズまで私がしたし、あんただって私がお父さんを無理やり張った押さなきゃ生まれて無いよ」
ぞく!
一瞬、母さんの眼が獲物を観る肉食獣の様な目立った様な気がするが気のせいだろうか?
「それにしても、まさかあんたの初恋が男の子…」
な、ななな…
「何で知ってんだよ!その事」
これは俺の最大の黒歴史と言える。
当然俺はノーマルだ、
ごくごく普通に美女を見れば唾を飲んでしまう様な健全な思春期男子だ。
「何でって、クラス名簿に載ってたジャン?」
ジャン?じゃねぇ!
あれは俺が幼稚園児の時だぞ?
何で覚えてんだよ!
「ほらぁ、あんたいっつも家に帰ってくるたびに草加ちゃんとね、今日ねって…」
「わぁぁ!」
もうやめてくれ…
確かに俺の初恋は草加だった。
でもそん時は男だなんて知らなかったんだよ!
しかもそれを知ったのが今年に成ってからだ。
☆
中学2年生に成って少し大人の気分に成って居た時の事。
新学年に成った時に転校生だ。
当然誰かなと思うだろう?
そこで見たのは思わず男でも見惚れる様な美男子。
貴公子と言う言葉がピッタリで、
嫌味な程しっかりと着込まれた学ランは一層それを醸し出して居た。
そこまでだったら女子が騒いで男子が嫉妬するだけだった。
が、
黒板に書かれた文字、
そして…
「こんにちは!隣町から引っ越して来た樫田 草加です、初恋のヒトは令くんです!」
にっこりと笑ながら言われた自己紹介。
俺は吹き出し、
男子は固まり、
女子は死んだ、
その転校生の顔を観ると…
「そ、草加?」
口にでた言葉、
独り言のつもりだったのだが…
「リョウくん!覚えててくれたんだ!」
転校生…
草加は目ざとく聞き取ったらしい。
って、こっち来んな!
「リョウくーん!」
俺と草加の追いかけっこは2年生の名物に成った。
☆
「なるほどねぇ…」
なるほどじゃ無いよ…
何だって母親以外に喋っと思っていた女が男だったなんて…
結局これじゃあ人生で今まで喋った女は母さんだけかよ。
毎日、毎日、
昼飯に成れば草加の作って来た弁当を食べる羽目になる。
男子はニヨニヨしながらこっちを見てくるし、
女子は射殺さんばかりに睨んでくる。
視線でヒトを殺せるなら俺は宇宙の星の数程死んでると思う。
確かに草加が弁当を持って来るお陰で母さんに弁当を作ってもらわなくても良いのは助かるけどさ…
「ってまぁ、こんな時間だね、お休み、令」
ん?
あぁ、お休み
☆☆☆
サイド:綾羽 母
「寝たかな?」
最近構ってくれない息子を想う。
今年で14に成るのにまともな恋もした事がないらしい。
私もその歳の時はした事はないけどねぇ
一つふすま向こうに居る愛おしい我が子。
女は三度恋をする、
この言葉が本当ならば私も三度恋をするのだろう。
初恋は父に
二度目は夫に
最後のは息子に
私はもう36歳、
年寄りでも無い代わり、
若くも無い、
一応、
それなりに経営して居る居酒屋は食いぶちに困らない程度には繁盛して居る。
しかしそれはあくまで今の話でしか無い。
これから先に一気に潰れるかもしれない。
せめてあの子が社会に出るまでは持って欲しい、
欲を言うなら晴れ姿も見てやりたいし、
孫も抱きたい。
しかし苦しいかもしれない、
あの子には言っていないが客足は減る一方だ。
最近では常連さんも見なく成って来た。
「難儀だね、」
そっとフスマを開ける、
フスマはこの子が小さな時に開けた穴のせいで色紙まるけだ。
そう言えばあの人はこの子の事は一度しか抱ていなかったかもしれない。
この子には交通事故とは言って置いたが大嘘だ。
あの人は私が出産入院からようやく退院して漸く家に戻って来たと思ったら…
直ぐ雲隠れしてしまった。
最初は流石に産まれたての子供を置いて出ては行か無いと思っていた。
でも、
この子が6歳に成った時、
あの人から正式に離婚しようと電話が来た。
理由は簡単だった、
私が入院して居る時に愛人が出来てつい最近その女との間に子供が出来たらしい。
隠して居たが嬉しそうに電話がかかって来た。
悲しかった、
叫びたかった、
その女諸共殺してしまいたかった。
嫌な予感はして居た、
入院直後はほぼ毎日来て居たのに、
一週間に一度になりたまに来た時はどこかよそよそしかった。
もしかしたら私はあの人が帰らない事は察してしたのかもしれない。
だからずっと旧姓の綾羽を名乗って居なのかもしれ無い。
あの人と婚姻を結んだ時失われた筈だった名前を。
あの時に問い詰めておけば良かった、
やはり男の子を育てるのに父親が居無いのは子供にとっても辛いだろう。
私はこの子と13年共に同じ家で過ごしている、
だけど最近は思春期だ、
男の子には男にしか言えない悩みも在ると言う、
実際私の初は母にしか話せなかった。
もしかしたらこの子が悩んで居るなら私はあの人を引き止めなかった事を悔いるだろう。
思えばあの人は本当に奥手だった、
私からプロポーズをしたし、
積極的に子供をねだった。
それがあの人には苦痛だったのかもしれ無い。
それが嫌だったから別の女の元に逃げたのかもしれ無い。
それが…
涙で視界が滲む。
悲しみでは無い、
悲し涙はとうの昔に枯れ果ててしまった。
悔しい…
他の女に男を取られた自分の不甲斐無さが、
たった一人の愛しい息子が育てられ無い自分の無力さが。
私の…我が愛し子を見る。
去年の暮れと変わらない寝顔がそこに在る、
今年の春は例年に比べずっと暑くて、
半袖シャツと下着一丁で寝ている。
親としては風邪をひかないか心配になる、
額に薄っすらと汗をかいていてるのでこのまま夜が冷えたら本当に風邪を引いてしまう。
「何の為に布団があるんだか」
私は今苦笑しているかもしれない、
この子の身体の下敷に成っている布団を引きずり出す。
思ったよりも重労働だ、
でもこの度に息子の成長を感じて幸せに成る。
「何時の間にこんなに重く成ったんだか」
背も対してスポーツもして居無いのに中学生に成ってからグングンと伸びている。
そう言えばあの人はクォーターだったな、
彼の暗い青色と薄っすらとした茶髪を思い出した、
彼はそれで学生時代はよく怒られたとわらっていたっけ。
それに対してこの子はそう言った所は遺伝して居なかったらしい、
黒髪黒目の典型的日本人だ。
我が子の横に寝ながら汗でしっとりとした髪をすいてやる、
本の数年前に比べて体格もたくましく成っている。
首は男らしく太くなり肩幅は広く成ったみたい、
こうやって忙しく無い夜はただの数時間は子供のとなりで寝顔を見ながらゆっくりと過ごす。
部屋は汚れ放題で掛けろと言った筈の学生服は脱ぎ散らかして、
食べかけのまま湿気ったアラレまで放置だ、
好い加減に虫がわく。
硬い枕に頭を預ける息子。
ただただ愛おしくて、
可愛くて、
護ってあげたくて、
この子を見ると時々あの人の事を胸が掠める。
私は今でもあの人を引きずって居るのかな…
女々しいなぁ、
まぁ、
女だからいいか?
少し子の方に寄る、
耳たぶに息が触れる程度。
耳元へ
「シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた」
消え居りそうな声で歌う。
下手くそで韻が狂って、節もめちゃくちゃだ。
だけど…
ずっと、
ずっと覚えて居て欲しい、
忘れ無いで欲しい、
この時を、
この調べに乗せて、
例えあなたが大人に成って、
私がおばあさんに成っても、
「忘れ無いでね…令」
その時布団がもぞもぞと動いた、
まさか起きてた?
「うぅ…ん」
あ…
暑かったんだ…
確かによく見れば暗闇でもわかる様に汗が光る、
はぁ…
「親の心子知らず何だから…」
そこで胸の所まで布団を下げてやる、
これで少しはマシだろう。
どうせ朝に成ったら布団は足元にあるのだ。
「はぁ…あの人も今、こんな風に自分の子供と寝て居たりするのかな?」
無事で産まれて居るなら少なくとも令とは六歳は違う、
自分でお腹を痛めた訳では無いけれど元気で居て欲しい、
あの人の子でも在るから。
それ以上に令の兄弟だから、
憎らしく愛おしい。
「令…*してる…」
また子をひとなでして私は部屋を出る。
さてと、
私も寝ますか!
☆☆☆
サイド:パラケラスス
「シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた」
この詩、
切ないよな…
歌詞もさることながら…
何だろう?
俺は思い出せない過去を想いながら屋根まで昇って弾けるシャボン玉を幻視した様な気がした。




