愛し子よ
「う…此処は?」
目の前の愛し子が目覚める、
自分の置かれた状況を憶えて居ないらしい、
「此処は『ガフの部屋』全ての魂の還り至る世界…」
俺の存在に気づいて居なかったのかギョッとするその少年の精神を持った愛し子、
俺に質問したんじゃ無かったら誰に質問したんだろうな?
ふと漏れた独り言か?
「えっと…貴方は?」
うーん、
此処『ガフの部屋』に居ても『個』を保って少年と分かるのに精神なのに俺の事は精神の形でしか見れ無いか?
「吾は魂の管理者、此の世界の支配者、お前の創造主だ…」
此処まで言って分から無い愛し子は居無いだろう。
「ッ⁈主よ!何故私は貴方の元に居るのですか?」
恐らくだが服従の礼でもしてるのか?
精神状態じゃよく分からん。
「良い、楽にせよ」
こっちは曲がりなりにも神様だからな、
態度はでかく、
心は広く。
「は!しかし主よたかが一介のエルフに過ぎぬ私が何故…」
うーん、
ヒトに比べてエルフの方がよっぽど謙虚だな、
どっちが卑しいやら。
「そう自分を卑下為るな…お前が例え一介のエルフであろうと吾はお前を選んだだろう」
実際そうだと思う、
其れに此の子は偶々偶然見つけたエルフで有り、
此処まで『個』を保つ事が出来るのは予想外だった、
まぁ、
衝動買いしたものが中々良い物だった感覚だな。
「吾は憂いて居る、何故ヒトとエルフは共に歩め無いのか?」
「そこでお前を呼んだ、心清いエルフよ…」
「お前に一つの試練を与えるたいと思う」
「何、お前に耐えれ無い試練は与えない」
「吾がお前に与えるのは…」
『汝の敵を愛し、汝らを責める者の為祈れ』
此処まで言ってエルフは顔を上げる。
「わ、私にその様な事が出来るでしょうか?私は聖人でも人格者でも有りません」
はぁ、
あそこまで言ってごねるか?普通。
「言ったはずだ吾はお前の耐えれ無い試練は与えない」
「求めよ、さらば与えられん。
探せよ、さらば見つからん。
叩けよ、さらば開かれん。」
さぁ此処まで言ったんだ俺の為に働いてくれ無いか?
「分かりました!私は…いえ!私達エルフ一同で貴方の試練を受けさせて頂きます‼」
え⁈
エルフみんなで?
うーん、
そっちの方が早いか?
「わかった、お前に任せよう、
汝に新た成る名を与えん其が名はエノク…心清く生きよ…」
「有難うございます!その名、永遠に語り継ぎます!」
感激に身を震わせまま光に包まれるエノク。
「はぁ、本当にそんな世界に成れば神様なんか生まれたりしないよ…」
例え我が愛し子が頑張ってくれてもヒトが受けてくれなくては意味が無い、
何で魂で繋がって居るのに憎み合うかねぇ?
肥えた牛を食べて憎み合うより青菜を食べて愛し合った方が良い物を…