月風に酔って
「何故だ⁈何故こんな奴を庇ったのだ⁈シルフィード⁈」
何でだ?
何故こいつはヒトを庇った?
こいつはエルフを殺しに来たんだぞ?
「だって…産まれて初めて男のヒトに好きって言われたんだもん…」
うーん、
血は多く出て居るが傷は浅い、
だが、
傷を追った場所が問題だった、
子宮、
魂のこもる場所、
新しい生命の誕生の場所、
魂が肉体に宿り生命と言う杭によって此の世に生を与える決して失っては成ら無い場所、
それを失った、
俺のせいで?
ヒトのせい?
「お願いがあります主よ…」
「…云って見よ吾が名に掛けて叶えよう」
精々威厳たっぷりに答える。
「わたしを…私をヒトとして生きることをお許しください…」
「⁈」
目の前のヒトが驚く、
俺も驚いたが顔には出さない、
ベヒモスは還したので居無い。
「分かった…お前を許そう…その代わりヒトとして生きてヒトとして死ね、ヒトの様に恋をして、ヒトの様に契りを結ぶ、 出来るか?」
俺の言葉に厳かに頷く。
「ならばその傷ついた身体が癒えん事を」
一瞬、赤ん坊からリスタート為せてやろうかとも思ったがそれは八つ当たりだな。
「そんな事出来るのか⁈」
そいつが驚きを表にする、
「そんな事は枯葉に火を着ける方が余程難しい」
腕の長さの問題だぞ?
☆
現在『ガフの部屋』だ、
肉なるモノはみな封印した『オリジン』によって統制されていた、
その為の『オリジン』の様なものだ、
身体を癒すなど応用を利かせれば難しい事では無いだろう。
まぁ此処は精神世界だから此処には居無いけどな。
☆
と言う訳で、
戻って来ましたシルフィード邸
早速さっきの続きをし始めた、
「俺は…シルフィードさん…
貴女と共に居たい」
☆
これ以上は聴いて居ない、
雰囲気が二人きりにしろといっていたからな‼
そんな訳でエルフとヒトの異種族の交流の一端、
禁じられた恋、
許され無い愛、
そんなしがらみから開放為れた訳か…
「ヒトをエルフとでは生きる年月が違う…彼ら産まれし日を違えど死ぬ時はみな同じであるように…」
俺は誰にとも言わず祈る事しか出来なかった。
本当は冒険者とエルフは結ばれ無い予定だったんですけどね?