パプテスマ
タイトルのパプテスマとは洗礼の事です。
あの戦争から百年が経った、
今俺はダートン家のお屋敷?
宮殿?
の鏡の間でダイナミック歯磨きだ、
まぁする必要は無いが気分の問題だ、
実はちゃんと風呂には入っているしな。
「ふぅ、そんな事よりも今日は末子の誕生日だったな」
末子とは我が大ダートン家の末子…コクマー坊やだ、
この百年で交代した世代は既に5代に成る、
お父様もお母様もミカエリナもマーシュも既にいない、
他人の死について何の感情も持たなかった俺だがやはり血肉を分けた肉親の死はくる物がある、
本来、今の俺の力ならばお父様やお母様、
ミカエリナやマーシュを同じく降ろうにする事も出来た。
しかし、
あの人達自信がそれを望まなかった……
いや、本当は俺も望んで居なかったに違いないか……
そして何故俺が未だにダートン家に居るかと言えば、
ミカエリナとの契約であり兄としての意地である、
そう…
交代した世代とはみな我が妹の子孫だ、
故に俺は守護者として此処に居続け、
護り続ける。
それらの交代した奴らの名前は俺が付けてパプテスマも俺が行って居る。
そしてダートン家の末子誕生日とは大きな意味を持つ、
今日は各国の王侯貴族達が一年で惟一度のみ大ダートンの屋敷に脚を踏み入れる事が許される日だ。
「さーて可愛い坊やの顔を視に行きますか」
見た目三歳のお子様の台詞じゃねえな。
☆☆☆
サイド:現当主
ゴドン!
この部屋の大きな扉が開かれた、
そこには常のローブを身に纏いながらもフードを外しその可愛らしい顔を見せる童子の姿が有った、
その瞬間にこの部屋に居た全てのヒトが片膝をつく、
そこに例外は無い、
当主の私も、
各国の王侯貴族でさえだ。
「お待ちして居りました」
代表して私が口を開く、
喉が乾く、
声が若干震えて居るかもしれない、
それだけの圧倒的存在感を放って居るのがこの方、
パラケラスス・ゴット・ダートンだ、
しかしこの方がダートンの血筋で在る事は公にされて居無い、
知って居るのは当人と代々のダートン家の当主のみ…
今代の当主は私だが。
「顔を上げろ、待たせたな」
子供独特の高い声が響く、
しかしそこに子供らしさは無く低く心に伸し掛かる様な声だ。
「はっ、勿体無きお言葉…」
そう言って私は顔を上げる、
今頃後ろでは私に習い顔を上げて居る者が居るだろう、
王侯貴族の中にはこの時の為だけに作法を習う者が居ると言う、
去年は1人だけ作法を間違えた貴族の少女が気絶したと言う事も有った。
「ふむ…所でコクマーはどうした?奴が今回の主役だろう?」
目の前のお方が私の孫の名を呼ぶ。
「は、はい、僕はここです!」
ひどく緊張して居る声が響く、
去年もこうだった、
しかし今年は大きく違う、
今年でコクマーは6歳に成る、
そして6歳の誕生日に行われるのは…
「ではコクマー、お前にパプテスマを授ける」
洗礼だ、
しかもあの子は末子で多数の貴族達の視線を受けてだ、
私があの方から洗礼を受けた時は末子では無く普通に行われて居た、
まぁ緊張感が尋常では無いが、
私が過去を思い返して居ると、
冷気を帯びた火柱が現れた、
これがこのお方のパプテスマ…
何度視ても背筋が旋律する、
他の貴族共もそうだろう、
そう言えば帝国の皇帝が娘を連れて来て居たな、
どうせコクマーをハニートラップに掛ける積りだったんだろうな。
「これで洗礼は終わりだ…お前の洗礼名はブエルだこの名に恥ぬ様生きろ」
パプテスマが終わった様だ、
今年はベットの置いて在る部屋を用意して置いて正解だった、
かなりの失神者が出た様だ、
当のコクマーも倒れて居る。
「これにて儀式は終了した!心ゆく迄楽しむが良い!」
この一言と共にパラケラスス様は部屋から出て行った。
「ふぅ…生きた心地がしなかった」
何所かで誰かが呟く、
恐らく皆同じ事を考えて居るだろう、
まぁ最初にやるのは、
「気絶したヒトを運ぶのを手伝って下さい!」