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天使と沼

前話から数日後の設定です。


サイド:マーシュ

俺は走って居た、

多分兵士の訓練中でも出した事の無い様な速さ…

いや、もしかしたら今まで生きて来た中で最も速さかもしれ無い、

それだけ俺は急いで居た、

焦って居たと言っても良い、

何故俺がこんなにも走って居るかと言うと話は40分まあ程遡る。




☆☆☆




「おぅ、戻ったぞー」


兵士勤と日課の訓練が終わり俺は家に入った、

少し前ならこんな事は言わなかったが今は違う、

幼く、其れで居てしっかりとした小さな同居人が出来た、

あいつは毎朝目が覚めたら既に朝飯を作って居る奴だ、

だから夕飯も期待して居たんだが…


「返事が無い?」


何時もとは違った、

何時もならその小さな身体で迎えてくれる幼き自称恋人、

国家最高錬金術師のダートン家の長女、

愛を知らなかった歳不相応な考え方を持つ少女、

出迎えをしてくれ無い、

嫌な予感がする、

急いで辺りを見渡し探す。


「おい!ミカエリナ!どこに居るんだ⁈返事しろ!」


しかし何も答え無い、

聞こえるのは窓を叩く風の音と俺の煩い程の心臓の鼓動だけ、

そして見つけた、

机に乗って居る一介の兵士の家に不相応な貴重品…

真っ白い紙、

薄っすらと薔薇の香りのするその手紙、

膨れ上がる嫌な予感を押さえ付けながら今朝もあいつと一緒に朝飯を食べたその机に近づく、

ただ数歩の距離なのに近づけば近づく程に呼吸が苦しくなる、

そしてたどり着く、

その時には既に息が切れて居た、

本来ならば心を安らげる薔薇の香りが魔性の香りと成って頭を刺激する、

その手紙をゆっくりと裏返す、

書かれて居る内容は理解出来る、

で来てしまう。


『あの娘は預かった、生きたまま再び会いたいのならば、月が天頂に登る前に兵士の宿舎裏に来い』


混乱は無い、

何時か来ると分かって居た、

故に今の思いは来てしまった、

仮初の平穏は終わりを告げた、

兵士宿舎はここから走って1時間程、

そして月が天頂に登るまでのリミットも長くて1時間だろう、

余裕は無い。



☆☆☆



俺は走る、

自分とほぼ同じ境遇だった少女と再び笑いあう為、

犯人は分かる、

分かって居るし知っている、

だけど今の俺では何も出来無い、

多分実行犯は『騎士』共だろうな、

あいつ等だったら金を積めば何だってやるだろう、

それこそヒトの弱みを握る為に勝手にヒトの家に入り少女を誘拐するなんてお手の物だろう、

問題は黒幕…

恐らくうちの親父だろう、

先々月に俺の兄貴が死んだと噂が有った、

その兄貴は次男で長男は俺が産まれる前に死んでいる、

多分跡取りに困った実家が出て行った俺を捜した結果がコレなんだろう。


「巫山戯やがって」


死んだ長男…

俺が会ったことの無い兄貴はかなり聡明だったらしい、

そしてその名前がマーシュ…

そう、

俺はあの親共から見れば死んだ兄貴の代わりに過ぎなかった。


「それで俺の属性が兄貴の金、木じゃ無い事に幻滅か…マジで良い性格して居たな」


俺は吐き捨てる様に言う、

俺は10歳の頃に屋敷を飛び出してやっと死んだ男の呪縛から開放されたと思った、

しかし兵士に成った時に『騎士』の中に兄貴の知り合いだったヒトが居た、

そいつは俺が兄貴の弟で有ると言う事だけで一方的に敵視して来た、

最初は軽い方だった、

しかしエスカレートして行き、

あの日…

俺があいつの兄に会った日に呪が掛けられた。


「それで今俺が走る原因のお姫様と会った」


俺は独り月を観ながら呟く、

これなら間に合いそうだ、

次の角を曲がればそこで俺が観た物は全く想像だにして居なかった。


築かれた屍の山の頂きにローブを身に纏いその色素の薄い茶の髪を鮮血に染め紺碧の瞳に

怜悧な光をたたえた三歳程の美しい顔をした男児、

一様に槍で左胸を貫かれ絶命して居る騎士たち、

そしてその男児に抱えられた彼女の姿だった。


それを見て頭の中が真っ白に成った、

目の前の男児が誰かなど考えてる暇など無い、

今はただ彼女の事でいっぱいだった、

知らない内に、

考えもしない内に、

走り出して居た、

彼女の元へ、

彼女を抱える誰かの元へ。


「テメェ!何もんだ!彼女を離しやがれ‼」


しかし俺の突撃はその男児には届かない、

まるで視え無い何か、

壁にでも阻まれたかの様に。


「彼女を離せだと?お前はこの娘のなんだ?」


何も言い返せなかった、

俺は彼女の何だ?


「問う、貴様は彼女の支えになり病める時、健やか成る時も常に共に居れるか?」


その男児は片手に持って居た薙刀の穂先を此方に向けながら問う、

その薙刀は男児の身長の3倍は雄に越す業物だが全くぶれて居無い、

この問いの意味を違えれば待っいる結末は騎士たちと同じ物だろう。


しかし、

ここで打算を持って卑しく生き残る事よりも率直に俺の気持ちを話して介錯して貰った方がいっそ清々しいだろう。


「俺は、常に彼女の隣に居て常に支える何て器用な真似出来やしねーよ」


その言葉を言った途端、

目の前の男児の眼つきがより鋭く成る、

先程迄も射殺さんばかりの眼だったが今では殺気がぐんと強く成って居る、

正直息が詰まる。


「オット、早まってくれんなよ、まだ最後迄言ってねぇ、殺すんだったら責めて最後迄聴いてくれ」


すると、ほんの対先程まで場を支配して居た殺気が霧散する、

さて気を取り直して。


「だけど、俺は彼女と過ごしたのは数日間だが彼女が世界中の何よりも愛おしい、世界の総てが彼女の前に色褪せる」


言った、

言ってやった、

言い切った後で何だがかなり恥ずかしい、

こんな気持ちで死ぬのは正直嫌だ。


「誓ってか?」


俺は黙って頷く。


「貴様の覚悟聞き届けた、しかしならば貴様は何を望む?」


相変わらず薙刀を此方に向けて質問か?

まぁ答えなんか決まってら。


「何も要らねーよ、強いて言うなら彼女と共に歩んで行きたいな」


てか 何でこいつがこんな事聞いて来るんだよ?


「それよりもお前こそ彼女の何なんだよ?」


こんな事当たり前の質問だろ?なのに目の前のこいつは質問を聞くなり盛大にため息をはきやがった上に「今更ながらこんなバカに任せられるか心配になってきた」何てブツブツ言って居る、

マジで何だよお前?


「はぁ…マーシュさんこれでも分かりませんか?」


何でこいつが俺の名前を知って居るんだと言う疑問が出たが直ぐ分かった。


「お、お前パラケラスス⁈何でココに?てか 何でこんな事を?」


そこに何時かと同じフード姿のパラケラススを見たからだ、

今更だが始めてパラケラススの素顔を視たな、

俺が驚いて居ると。


「妹のピンチに兄が現れたら何か変ですか?」


いや、全然変じゃないな、

それどころか最高にかっこいい

とおも…


「お兄様勝手な事は言わ無いで置いて貰いますか?所詮それはお兄様の自己満足と言うどうでもいい事でしょう?」


彼女は目を覚ました様だ、

それにしても相変わらずだな、

思わず苦笑が漏れる。


「そもそも…マーシュ‼‼な、何で貴方が居るの⁈それよりもここはどこ⁈」


漸く俺に気づいてくれたらしいな、

そっと彼らの方に近づく。


「喜べミカエリナ!彼は君と共に歩み支え合うことを誓ってくれたぞ!」


そしてその言葉をパラケラススが言ったと思ったらミカエリナの身体が光に包まれる、

その余りの眩しさに咄嗟に目を覆い隠す。


光が次第に収まって行く

ゆっくりと目を開く、

そこには信じられ無い光景が広がって居た、

16歳程の一糸纏わぬ姿の娘…

ミカエリナの面影が有る。


「⁈お兄様!これは一体どう言うこと⁈」


その女性…言葉から察するにミカエリナがパラケラススに問い掛ける。


「今までの君の姿だと彼と共に歩む事は難しいからね、お母様に無理を言ってこの魔法を完成させて貰ったよ」


そう、

こいつ等の母親は水と木の属性た恐らくだが木の属性の成長の延長なのだろう。


「ならばお兄様自身が使えば良かったでは有りませんか、不老の呪縛から逃れたいと言って居たでは有りませんか⁈」


そうだ、

パラケラススは三歳の時に賢者の石?を飲んだせいで不老に成りヒトには無い異能を手にしたらしい、

そんなミカエリナの言葉にパラケラススは悲しそうに微笑う。


「もう使ったんだよ、結果はこの通り何も変わって居無い…」


「だけどミカエリナ…君は成った俺は俺の成長以上に嬉しい」


「一気に成長したから戸惑う事も有るけれど、彼に聞きな」


「さあ、ダートン家へ…今頃結婚式の準備が整って居るよ」


へっ?最後のは一体どう言う事だ?


「おい⁈ちょっと…」


ここで俺の意識は暗転した。








最近ネタに詰まって来た…

この世界からみて異世界のヒトをトリップさせようかな?

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