プロローグ
風呂上がりの夜十一時、誰もいない部屋でテレビのスイッチを入れる。しかし、特に見たい番組がある訳ではない。秒針の刻む音だけが支配する部屋が何となく落ち着かないというのはおかしな文明病だと自嘲気味に思いながら、長方形のディスプレイに目を向ける。浮かび上がってきたのは深夜特有の猥雑で吐き気がするようないかにもといった感じのバラエティー調の番組だった。そのようなジャンルの番組が必ずしも嫌いという訳ではないのだが、たまたまその番組の内容が気に入らなかったというだけである。
稔はすぐさまリモコンでチャンネルを変えた。今度は見るからに真面目そうなニュースだった。
「昨夜午前零時三十分未明、日本と朝鮮資民主義国の国境にあたる関門鉄道・旧国道トンネル(以下合わせて関門トンネルと称します。)が爆破されるという大規模なテロ事件が起きました。」
誰が聴いても物騒だと思うニュースを、黒いスーツを着た色白の男性アナウンサーが緊張のある面持ちでカメラに向かって伝えていた。
「事件当時は幸いにもトンネル内に列車は通っておらず、周辺の海にも船舶等は無かった為に死亡者及び怪我人はゼロの模様です。」
-----最近朝鮮で怪しい動きがあるとは噂に聞いていたが、相手国は一体何を企んでいるのだろうか?
疑問に思いつつ、再びニュースに集中する。今度は事件の主な概要についてだった。
「尚、爆破原因や事件背景の詳細は現在調査段階とのことですが、ある専門家曰く、『最近の周辺国の一連の動きから推すに、咲島研究所の技術を狙っているとされる博多側の新政府が非合法に関与している可能性が非常に高い。』と述べています。これがもし事実であるとすれば、我が国に対する軍事力をもった国際的脅迫行為ということになり、見逃すことは困難とされます。従って現在我が国では全国に非常事態宣言を発令し、国民全体に警戒を呼びかけ危険と想定されるエリアからの避難を促し少しでも多くの安全を確保すると共に、万全な軍事体制を整える為に、現時点で軍事同盟を組んでいる米軍と自衛隊による特別合同訓練が急務となるでしょう。」
-----やはり。博多の連中は一体何を考えてるんだ?これからの日本の平和はどうなる?15年前みたいな大惨事にならないといいが。バックには米軍がついてるが、博多のバックについている朝鮮のそれと比べれば聊か頼りなく、心もとなさは拭えない。だが、せいぜい脅し程度で収束することを祈ろう・・・・。
「今から約四半世紀前に日本の元九州にあたる領土のほぼ百パーセントは日本から朝鮮市民主義国に吸収され、政治的に独立した博多特別自治区(通称博多新政府領及び博多)として発足しました。その新政府領と我が日本国を結ぶ関門トンネルですが、周知の通り十五年前の11.23に勃発した愛媛・高松同時多発テロ以来、両国の関係が険悪化したのを契機に国道線は完全封鎖、鉄道線は臨時や貨物を省いた定期列車が廃止となりました。」
稔はそこで一度思考をストップさせた。そして、大きく深呼吸。二酸化炭素が濃くなった空気が全身から抜けた時には、ディスプレイの中の世界は変わっていた。静謐な部屋に広がる細波のハーモニーとモノクロの粒子が蠢く未知なる宇宙。ずっと眺めているとなぜか心が落ち着く。今日あった全ての嫌な出来事をつい先刻のシャワーよりもずっと奇麗に洗い流してくれる。
-----自分って妙なものに癒されるもんだ。しかし、この宇宙を越えた先には一体何があるのだろうか?
無数の星の中、汚れなく、清らかな場所で、誰の目も憚ることなく、誰からも束縛を受けない。
好きな勉強をして、好きな友達と喋って・・・。
そんな自由の一粒があって欲しい。
絶対あるだろう。この宇宙の何処かに・・・。
だってこれは全てを包括した、限り無い宇宙だもの。
しかし、手の届かない処にそれはあるのだろう。
触れてはいけない。
触れた瞬間から、鉄の薄いプレートが酸化してしまうように、それは理想から現実へと姿を変えてしまう。
輝きを失ってしまう。
だから神様が親切にも遠くへ飾ったのだろう。
たとえ届かなくとも、見えなくとも、見分けがつかなくとも・・・・・。
感じることはできる。
その「物」ではないたった一粒の欠片が僕の霊魂にしっかりと埋め込まれているから。
そうやって常に夢というよりどちらかといえば妄想に近いストーリーを膨らませて、日々の不安を払拭し、合理的に消化する。長い人生は何時だって、そんなことの繰り返しだ。
勿論、今は秒針の白けた音なんてとっくにかき消されている。
はじめましてー。松浦 慶です☆
新年あけましておめでとうございます。
遂にネット小説デビューしてしまいました!!
(今年から宜しくお願いします。投稿は昨夜だったのですがね・・・)
このプロローグは要は主人公の1人がTV見てる場面です。
まだ1人しか人物が登場していないというベタな始まり方ですが、
これから色んなキャラを登場させていきたいと思います。
(ちなみにもう一人の主人公の名前は「望月 彼方」と言います。
いかにもといった感じですねwwww)
まだまだ拙い文章ですが、どうか温かい目で見守ってください。
これからもどうぞ宜しくおねがいします!!