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紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
第一章 紅い出会い
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第八話 赤き刃と天使

 私は気が付くと、あの領主の屋敷の中に居た。

 屋敷内はとても綺麗で、自分が過去に戻ってきた事を悟る。

 ああ、丁度良い。

 あの領主を殺したいと思っていた所だったんだ。

 私はレイピアを引き抜くと駆け出した。

 領主の部下や護衛を切り捨てながら、領主を見つけ出す。

 領主の首にレイピアを突き立て。

 そしてその醜く太った身体を切り捨てた。

 領主が事切れると、場面が変わるように目の前の景色が一変する。

 今度はハンクを狙うスナイパーの背中が目の前に現れた。


 仕方ない。

 彼も助けてあげますか。


 私はスナイパーの背中を貫いた。

 スナイパーは断末魔をあげることも出来ず地に伏せる。

 レイピアについた血を振り落とすと、また場所が変わった。

 それはケイドとハンクが暮らしていた家の廊下だった。

 傍らにあるドアの向こうに、ケイドが居る。

 そう思うとすぐにでも会いに行きたい気持ちになったが、それを堪え迎え来る族を待つ。

 族は私を見るなり銃を構えた。


「誰だてめぇ!!!」

「……強いて言うなら……レッドウルフだ」


 私はレイピアを振る。

 一瞬の出来事だった。

 私は族を瞬殺し、レイピアを鞘に納める。

 高鳴る鼓動を胸に、ケイドの部屋のドアを開いた。

 ケイドは今まさに窓から飛び降りようとしている時だった。


「ケイドッッ……!!!」


 私はケイドに抱きついて、部屋の床へと倒れ込む。

 混乱したケイドは私の腕の中で必死に暴れた。


「落ち着いて! 大丈夫!! 私は味方たがら!!」


 私は優しく、けれど強く、ケイドの身体を抱き締める。

 背中を擦ってやると、暫くしてケイドは落ち着きを取り戻したように大人しくなった。


「……君は……誰?」

「……」


 私は周囲を確認する。

 どうやらもう、場所は変わらないらしい。

 私はケイドに微笑みかけた。


「少しお話しをしましょう」


 私は自分の言葉遣いがいつもと違って柔らかい事に気が付いたが、敢えて正そうとはしなかった。

 と言うより、本来はこっちの喋り方が私の素だったから。

 私達は床に座ると、話をする事にした。


「私ね、貴方に──ケイドに会う為にここに来たの」

「え? 俺に? なんで?」


 ケイドもサクヤやハンクと同じく関西訛りな事に少し驚いたけど、なんだか親近感が湧いて嬉しくなった。


「……ケイドを……助けたかったから……」

「……」

「ケイドには……生きて欲しいの……私」

「なんで……?」

「貴方は……私の家族だから」

「家……族……」

「血は繋がってないけど……ケイドのお父さんは、私のお父さんでもあるの」

「……義理の兄妹って事?」

「うん、そんな感じ」


 すると、私の話を聞いたケイドは、幸せそうに笑う。


「そっかぁ……俺にも家族が居ったんやな……」


 その笑顔があまりにも眩し過ぎて。

 本当に本物の天使なのかと思った。

 私にとっては、天使よりも愛おしい存在だけど。

 私は、ケイドを抱き寄せた。


「貴方に……会えてよかった……」


 私はまた光に包まれる。

 光に目が眩んで、思わず目を瞑ると。

 目蓋の裏に、情景が拡がる。


 出産で疲れた様子の母が、それでも優しく微笑んでいて。

 まだ齢十になるかならないか分からない程の、幼い私が。

 その細くて短いかいなを精一杯広げて。

 産まれたてのケイドを抱き寄せて。


『ケイド』


 その名を呼んで。

 弟に対する、愛おしいと言う気持ちを抱いた。

 そんな、情景が。


 もしこれが、泡沫の夢だったとしても構わない。

 ケイドに触れる事が、出来たのだから。


 瞑っていた目を開くと、私はもとの時代へ戻っていた。

 しかし、腕の中にはもとの時代にはいない筈の人物が居る。

 私は確か、ケイドの墓標を抱き締めていた筈だったのに。

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