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紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
最終章 紅い運命
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最終話 愛すべき日々の始まり

 私はガットが消えた空を見上げながら、静かに息を吐いた。

 雷雲は晴れていき、青空が広がり始める。

 アキが隣に立ち、同じように空を仰いだ。


「……終わったね」

「うん。全部終わった」


 それはまるで、新たな時代の幕開けを告げるようだった。


「お疲れ様、レッドウルフ」

「アキも、お疲れ様」

「……ねぇ、レッドウルフ」

「ん?」

「もう『アッキー』って呼んでくれないの?」


 アキの言葉に思わず面食らう。

 そう言えば、色々ありすぎてここ最近は愛称の事を忘れていた。

 意外とアキは、『アッキー』と言う愛称を気に入ってくれていたらしい。


「レッドウルフに『アッキー』って呼ばれるの、結構嬉しかったよ」

「……なら、好きなだけ呼んであげる。アッキー」


 呼んであげれば、アキは嬉しそうに笑って。

 その愛らしい笑顔に日常が戻ってきた気がして、私まで嬉しくなる。


 それから私達は、ユニに手伝ってもらって神殿バベルを下りた。


「これからどうするの? レッドウルフ」

「……少し、私の我が儘に付き合ってもらってもいい?」

「我が儘?」

「ハデスに会いに行きたいんだ」


 旅が終わったら会いに行くと約束した、だから。


「いいよ。付き合うよ、レッドウルフの我が儘に」

「ありがとう、アッキー。ケイドも一緒に来てくれる?」

「もちろん」


 三人で笑い合うと、私はガッティの方へ顔を向ける。


「君も一緒に来るといい。アンドロイドの国の近くまで送ってやる」


 父でもあるガットを喪って失意の様子のガッティは、黙って小さく頷いた。


「それじゃぁ、行こうか」


 私はユニを先頭にして歩き出す。


 こうして、私達の旅は終わった。


 それから一年後。

 世界は確実に変わった。

 ガットが“神”なったからか世界の天変地異は治まったが、念のためにケイドやアキが定期的に神殿バベルに登っては祈りを捧げている。

 ケイドは吸血鬼の国に戻り、貴族派の汚職を国王に告発し、悪政を一掃して新たな政治体制を築いた。

 時折「たまには遊びに来てほしい」と言う手紙が送られてくる。

 私はと言うと、人狼の村に帰ってアキと共に暮らす事になった。


「ケイドさんと一緒に暮らさなくて良かったの?」

「いいの。ケイドにはケイドのやりたい事があるんだし。それに、昔と違って今は会いたい時に会えるから」


 ケイドは私から逃げなくなった。

 私から逃げる必要が無くなったからだ。


「あ、そうだ。今度ケイドを呼んでパーティーでもしない?」

「パーティー?」

「そ。もう直ぐこの子の誕生日だし」


 そう言って私は、足元に居た幼い我が子を抱き上げた。


 私のお腹には、ハンクとの子が宿っていた。

 産まれてきたのは父と同じく、吸血鬼と人狼の血を受け継ぐ元気な男の子で。

 その、ビビットピンクの髪が特徴的だ。

 私は彼に『キデ』と名付けた。

 いつしか立派に育ち、誰からも愛されるようにと願いを込めて。


 私はもう独りじゃない。

 ケイドの存在が。

 アキの存在が。

 我が子──キデの存在が。

 私の心を支えてくれている。

 これからもきっと。

 私達は変わらず仲間で。

 家族で。

 そして。

 恋人で。

 ずっと一緒だ。

 どんな時も。

 離れ離れになっても。

 きっとまた出会って。

 同じ時間を共にする。

 これからも。

 ずっと。

 ずっと。


 家の戸棚に飾られた父の写真の前には、赤色の魔宝石のアレックスの指輪が、今も輝いている。


最終章 紅い運命〈完〉

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