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紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
最終章 紅い運命
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第十五話 天へと続く神殿での再会

 人狼特有の鋭い爪を最上階の床に食い込ませ、その場に留まった。

 ユニはその間に、地面へとゆっくり舞い降りていく。

 私はレイピアを抜き取りその刃を神殿の壁面に突き刺して、最上階へとよじ登った。

 神殿の屋上にいた四人の男達が、這い上がってくる私の方へ驚いた顔を向ける。

 それはガットと、その分身でもあるアンドロイドのガッティ。

 そして、ケイドと──


「……アキ……」


 アキは本当に甦っていた。

 いや、ガットに甦させらせた、と言った方が正しいのだろう。

 彼らは各々アレックスの指輪を身につけていた。

 ケイドの右手薬指には“喜び”の指輪。

 アキの左手薬指には“哀しみ”の指輪。

 ガッティの左手人差し指には“怒り”の指輪。

 そして最後に、ガットの右手人差し指には“楽しみ”の指輪が嵌められている。


 成る程。

 私が嵌めていた“怒り”のアレックスの指輪は、分身であるガッティに宛がった訳か。


 ガットは登ってきた私の事を不服そうな表情で、目を細めて睨んできた。


「予想外だ……登ってこられるとは思わなかった」

「私もこんな形で来れるとは思わなかった。まさに予想外だ」


 私はガットの傍にいたケイドへ視線を向ける。

 途端、懐かしい気持ちになって、笑みが溢れた。


「ケイド……久しぶり……髪型変わったね? てか老けた?」


 最後に会った時、ケイドは黒い短髪だった。

 けれど今は、あまり長さはあまり変わっていないが、髪の色は金色になっている。

 私が冗談目かして笑うと、ケイドは少し剥れたが。


「そっちやって……老けたやん」


 直ぐに笑みを返してくれる。


 ああ、この笑顔だ。

 私達は、変わらない。

 どんなに月日が流れようと。

 どんなに歳を重ねようとも。

 これからもきっと変わらない。


 そして、私はアキにも目を向ける。


「アキ……」

「レッドウルフ……」


 彼は生き返っていた。

 甦ったと聞いていたからちょっと若い姿とかになっているかと思っていたけれど、そうではなかった。

 以前と代わらない、愛らしいアキのままだ。


「生きててくれて……ありがとう……ホントに、もう……嬉しいよ」


 笑って語り掛けると、アキも口元に笑みを浮かべる。


「俺も、またレッドウルフに会えて嬉しい」


 微笑み合う私達の間に、ガットが立ちはだかる。

 私は腰に佩いていた鞘を地面に投げ捨てると、レイピアを構えた。


「刺し違えてでも……私は貴方を止める」

「そんな玩具みたいな武器で何ができる? 俺は誰にも止められない」


 ガットは腰にさしていた刀を抜き取り、アキ腕を掴んで引き寄せ、刀の刃をその首へとあてる。


「アキッ!!」

「武器を捨てろ、紅い狼」

「っ……」


 私は仕方なく持っていたレイピアを地面へ放り捨てた。


「この者を殺されたくなくば黙って儀式を見ていろ」

「……卑怯なっ……!」


 神殿バベルの頭上に広がる空を見上げるガットの目線を追うと、ゴロゴロと音を立てながら雷雲が私達の頭上へ集まってきている。


「時が来た」


 ガットはアレックスの指輪を着けた手を空へ翳した。


「今こそ……アレックスへ歌を捧げる時だ」


 ここでアレックスの指輪を嵌めたガット達が天に歌を捧げれば、彼らは“神”となりこの世から消えてしまう。

 そんな事はさせない。

 私はここに来るまでの馬車の中で、どうすればガットを止められるか考えていた。

 アレックスの指輪が無ければ、歌を捧げても“神”にはならない。

 ならば。

 私はガット達へ手の平を向けると、魔力を集中させる。


 お願い……成功して。


 私の手の平に光が集まり、それが四人のアレックスの指輪と繋がった。

 ぐっとその手を強く握ると、ガット達が身に付けていたアレックスの指輪が姿を消す。


「……!?」


 驚いたガット達は私の方を勢いよく見た。

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