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紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
第四章 紅い出港
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第二話 指輪の主

 存外簡単に情報を得れた事に安堵しつつ、言われた通り角を曲がると、その先には古びた大きな屋敷があった。

 ここがハデスという人の家?

 一見するとちょっと廃墟にも見えなくはないけど、門構えも大きくて立派で。

 だけど不思議な事に、屋敷の周りには警備兵が誰一人として立っていない。

 こんな大きな屋敷で警備兵が居ない事などあるのだろうか?


「取り合えず、行ってみましょう」


 私は門の鉄格子に手を掛け、扉を開けようとしたが。

 鍵がかかっているのか開かない。

 試しに押したり引いたりしてみるも、やはり動かす事が出来なかった。

 万が一引き戸の可能性もあるかと思って、左右にスライドさせようとしてももちろん開かない。


「留守……とか?」

「いや待って、アッキー」


 こういう扉の開け方には心得がある。

 私は左手で再び門に触れると、意識を人差し指のアレックスの指輪に集中させる。

 指輪の魔宝石が赤く輝きだすと、軋んだ音と共に門がゆっくりと開いていった。


「やっぱり……魔法で閉めらた門だったのね」


 鍵は魔法によって施錠されていたようだ。


「アッキー、この扉閉じたら開かなくなるから気をつけてね?」


 私は注意を促しながらアキと共に門を潜り、屋敷の敷地内へ入る。

 黒い薔薇の咲き誇る庭を抜け、屋敷のドアの前までやってくる事が出来た。

 ドアノッカーに手を掛け、屋敷の重厚な作りの木製のドアをノックする。

 しかし、しばらく待っていると扉が開いて、中から一人の男が出てきた。

 どこか吸血鬼の国の民と似た雰囲気のある、少し伸びた黒髪と、怪しげな光を放つ青い瞳が特徴的な青年だ。

 見た目は若そうにも見えるが、案外歳がいっているかも知れないと、男の笑い皺を見て私はそう思った。


 何処かで見た事のある顔のような……。


「どなた様で?」


 首を傾げる男に、私はアキと顔を見合わせたあと男に尋ねた。


「ハデスと言う男に会いたい。在宅しているだろうか? リノの……リノ・アシード・ブラチェの知り合いの者だ」

「……レッドウルフさんとアキさんですか?」

「そうだ」

「お話はリノから伺っております。中へどうぞ」


 どうやらリノは、私達の事を文か何かで伝えていたらしい。

 私とアキは男の後について歩きながら屋敷の中へと入った。

 玄関ホールに入ると天井が高く吹き抜けになっていて、広々とした空間に大階段が上へと続いている。

 まさに、大邸宅といった様相だ。

 中央階段を登って二階へ向かうと、客間と思われる部屋に案内された。

 男が扉を開けると、豪華絢爛な部屋のテーブルの上にティーセットが置かれていて、紅茶の香りが漂っている。

 しかし、主人らしき人物が見当たらない。

 やはり不在なのだろうか?


「すまない。ハデスと言う男はどこに……」


 男は少し意地悪そうに笑うと、主人の席と思われる、部屋の奥に置かれた机の椅子に腰をかけた。


「遠路遥々よくお越しくださいました、レッドウルフさんと……それにアキさん。俺がこの屋敷の主人、ハデス・ロンド・ジュアルケです」


 なんと、と言うべきか、やはり、と言うべきか。

 客間まで案内してれくたこの男が、ハデスだったか。


「俺は、リノの信頼するあなた方の力になりたいと思っているんです」


 私達を歓迎していると言うように笑うハデスだが、その瞳の奥は笑っていない。

 真意の読めない男だ。


「それは話が早くて有難い。これはリノから君宛の手紙だ。申し訳ないのだが、直ぐに目を通してほしい」


 私はリノから貰った手紙をハデスに渡した。


「……まぁ、お掛けください」


 私とアキがティーセットが用意されたテーブルの席に着くと、ハデスはペーパーナイフで受け取った封筒の封を切り、中に入っていた便箋を読み始める。


 リノのハデス宛の手紙にはこれまでの経緯が書かれていた。

 私とアキの事。

 リノの闇血症の発症の事。

 ハデスが持っているアレックスの指輪の事。

 ケイドとガットの事。

 神殿バベルに登る為にアレックスの指輪が必要な事。

 手紙を読み終えると、ハデスは口元に手を当てて考え込み始めた。

 リノの話では、ハデスもアレックスの指輪を持っているらしい。

 可能であれば譲ってもらいたいところだが……。


「成程。つまり、ケイドさんとガットさんを探して旅をしていて……ケイドさんはこの狼の国に居るかも知れない……と言う訳ですね」

「そうだ」


 ハデスは立ち上がると、窓に身体を向け外の景色を眺めた。


「俺は“楽しみ”のアレックスの指輪を持っています」

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