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紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
第一章 紅い出会い
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第四話 迷いの森の黒いユニコーン

 走って老人の後を追いかけたけど、その姿はもうどこにも無かった。


「チッ……足の速いジジィだな……」


 私は受け取った地図を握りしめ、心の中で誓う。


「ケイドは私が守る。母の願いを叶える為に……父と……また会う為にも……」


 次の目的地は、地図に記された『迷いの森』と言う所だった。

 そこは魔物の巣窟とされ、多くの冒険者が命を落としてきた場所らしい。

 私にはそんな事知ったこっちゃないが。

 森に入ると、私は五感は鋭どくする。

 風の流れ。

 木々の騒めき。

 そして、何かが近づいてくる気配。


「誰か居るな」


 私はレイピアを抜いて構える。

 だが現れたのは人ではなく、一匹のユニコーンだった。

 通常のユニコーンの毛は純白で、角はクリスタルの筈だが。

 目の前のユニコーンの毛は漆黒で、頭にある角はダイアモンドで出来ているようだった。

 本当に美しいユニコーンだ。

 そのユニコーンは静かにジッと私の事を見詰めて来る。


「お前……何者だ?」


 何かを訴えるように、こちらを見つめ続ける。

 そして、私の足元に何かを置いた。

 それは、父が常に身に着けていたピアス。

 私の心に、ある確信が芽生える。


「お前は……父の意志を受け継いでいるのか?」


 ユニコーンは頷いたように見た。

 そして、森の奥へと駆け出す。


「おい!! 待て!!」


 私はピアスを急いで拾うとそのユニコーンを追いかけた。

 迷いの森を抜けると、そこには小さな町が拡がっている。

 地図を確認してみると、どうやらそこはケイドが居た場所だと言う事が読み解けた。

 町の中を歩きユニコーンの姿を探すと、立派な建物の前で座っている所を見付ける。

 私の姿を確認するなり、ユニコーンの身体が透けて姿を消した。


「ここは……」


 私は目の前の建物を見上げる。

 そこは、町の庁舎のようだった。

 確かに、ここならケイドの情報を得られるかも知れない。

 庁舎の中へ入ると、受付に居た中年の男性と目があった。


「こんにちは」

「ちょっと尋ねたいんだが、ケイドと言う少年……いや、青年を知らないか」

「ケイド……ですか。つかぬことをお尋ねしますが、彼とはどういったご関係で?」

「……親族だ」

「ほぉ、ご親族の方でしたか」

「私はケイドに探してここまで来た」


 すると、男は眉を下げる。


「残念ですが……彼はもうこの町には居ません」

「そうか……」


 私は肩を落としそうになったが、諦めず手がかりを探す事にした。


「実は……事情があって私はケイドの顔も知らないのだ。何か……写真とかはないか?」

「すみません……彼が居たのは私がまだ幼い頃の事ですので……」

「幼い……頃?」


 ケイドが産まれたのは少なくとも私が産まれた後だ。

 この男が何歳なのかは知らないが、彼が幼い頃にケイドが居なくなった?

 時系列として合わない。

 けど、今の私には手がかりがここにしかない。

 何とかしてケイドの情報を手に入れないと。

 私は顎に手を当て、思考を廻らせた。


「……」


 あ、そうだ。

 魔鏡はどうだろうか?


 前世の世界でも魔鏡と言う物があったが、この世界の魔鏡は大分違う。

 物に籠った念を鏡に移し、所有者の顔をその鏡に映す。

 言わば魔法の写真のような物だ。


「ケイドが使っていた物は何処かにないだろうか? 住んでいた家でも良い。何か無いか?」


 そう提案すると、男の顔が少し険しくなる。


「……一応、心当たりがあります……が。ご親族の方には、ショッキングな物かも知れません……」

「構わない」


 私が即答すると、男は一つ頷いて受付のカウンターから出てきた。


「ついてきて下さい」

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