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紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
第三章 紅い入国
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第十三話 禁術の代償

 ──狼の国へ向けた旅立ちの日。

 私とアキはリノに連れられて、港町へ着ていた。


「これが俺の所有する船」


 港町の桟橋に停泊していたのは大型の帆船だった。

 船の前には白い小鳥が留まっていて、アキが不意にその小鳥に手を伸ばす。

 すると、その小鳥はアキの手の甲に留まる。

 その光景を見て、私はケイドの事を思い出していた。

 他種族には絶対懐かない筈の希少種の小鳥が、ケイドには懐いていた。

 アキの姿が、またケイドと重なる。

 小鳥は「ピルル」と愛らしい声で短く鳴き、白いの翼を羽ばたかせて飛び立っていった。

 小鳥の姿を目で追って、空を見上げていると。

 傍らに居たリノの身体がぐらりと揺れ、突然倒れ込む。

 私は腕を伸ばし、その身体を咄嗟に受け止めた。


「リノ……!? 大丈夫か……!? リノッ……!!」


 私が呼びかけても、リノは反応を返さない。

 浅く速い呼吸を繰り返し、驚いたように目を見開いているその様子に、私はただ事ではないと悟った。


「医者を呼べ!! 今直ぐにだ!!!」


 私は周りに居た従者達へ叫んで支持を飛ばす。


「ハァ……ハァ……っ! カハッ……!!」


 咳き込んで口元を押さえたリノの指の隙間から、黒い血液が漏れ出た。


「──!! これはっ……」


 私は急いでリノの眼球を確認する。

 すると、リノの眼球の白い部分に、水にインクを零した時のような、闇が拡がった。


闇血症(あんけつしょう)……!? おい!! 魔法医学に詳しい医者を呼ぶんだ! 急がなければ手遅れになる!! あと近くに病院はないか!?」

「診療所ならあちらに……!」


 私はリノの身体を抱え上げると、手を上げてくれた船頭に従って近くの診療所へ運ぶ。

 こうして新たな旅立ちは、一時中断する事となった。

 診療所で医師に処置してもらいながら魔法医学の医者を待ち、駆け付けた医者の診察を受ける。

 リノの闇血症の病状は酷いものだった。


 闇血症は、まず、かかる事のない病気だ。

 伝染病ではないし、遺伝でかかる病でもない。

 その名の通り黒く濁った血が身体を蝕んでいく難病で、黒い血液が全身を巡ると臓器に異常をきたし、治療は困難となる。

 下手をすれば命を落とす病だ。

 吸血鬼の国でも特効薬が発見されてはおらず、未だ完治したと言う報告もない。


 リノを看たから医師からは「まずい……」と言う言葉が漏れた。


「黒い血液が身体中に回り初めている……王都にある病院へ連れて行きましょう」


 医師は慌てたように身支度を整え、従者達はリノを寝かせた担架を持ち上げ、王都の病院へ向かう。


「俺達も行こう……! レッドウルフ……!」

「ああ……行こう」


 アキに頷くと、私達もリノを乗せた担架が運ばれた馬車へと乗り込んだ。

 病院へ到着するとリノは、前世で言う集中治療室のような病室に運ばれる。

 私達はその病院の前にある長いソファに腰をかけて、治療が無事に終わる事をただただ祈った。


 治療の結果、リノは一命を取り留めた。

 しかし、思っていたよりも病の進行が進んでいて、一緒に旅をするのは難しいとの事だった。


 治療が終わり、リノの容態も落ち着いた頃。

 私達だけ特別に面会を許され、私はアキと一緒にリノの病室へ入った。

 弱った身体には魔が取り憑きやすい。

 その為、病室のベッドは魔除けの薄いベールのような透けた布に囲まれている。

 その上で点滴を打たれた状態でリノが横になっていた。

 私達の存在に気が付くと、リノはこちらへ顔を向ける。

 御世辞にも、その顔色は良いとは言えなかった。


「……リノ……君、古代の魔法……禁術を使ったな?」

「……」


 私の問いかけに、リノは何も答えなかった。

 代わりに問うて来たのはアキの方。


「レッドウルフ……それ、どう言う意味……?」

「……古代の魔術には……美声を手に入れ、魔力を増大させる……禁術がある」


 その禁術に手を出した者は、今までの何倍もの増幅した魔力を手に入れる事が出来る。

 それこそ、“神”に匹敵する魔力を手にする事が出来るだろう。

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