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紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
第三章 紅い入国
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第十話 陰謀と塔から逃げたヒメ

「この国に居るのか?」

「おん。それもそのハンクさんご指名でレッドウルフにお呼びがかかってる」

「私をご指名……?」


 ハンクとは一悶着あった。

 だからあまり会いたくはないなだが……。

 色々と聞きたい話もあるし、仕方ない。

 行くとしますか。


 話し合いを終えると、リノは自室へと戻っていった。

 私も湯浴みを済ませ、アキの待つベッドへ入る。


「あ、そうだ。アキにお土産があるんだ」

「お土産?」


 私は港町で買ったペンダントを取り出し、アキに見せた。


「俺にくれるの?」

「……あ、嫌だった?」


 アキは首を横に振る。


「ありがとう。嬉しい」


 その笑みに私も嬉しくなって。


「良かった。つけてあげる」


 ネックレスを着けてあげると、アキの首元で十二個の魔宝石が銀色の光を放つように、キラッと輝いた。


 次の日。

 ハンクに会うためにリノが用意してくれたのは、黒馬を牽く馬車だった。

 馬車にしばらく揺られていると、吸血鬼の国が一望できる丘へ着いた。


「着きましたよ」


 御者に促され馬車を降りると、丘の上から見える街の美しさに圧巻される。

 港町には敵わないが、それでもこの国の首都は美しい街だ。

 そんな街並みを見ながら、丘を上ると古びた城のような屋敷に着いた。

 城を囲う壁に蔦が絡まり、その城自体はボロボロで崩壊寸前のように思える。

 吸血鬼の国の首都から離れた場所にある廃城だ。

 ハンクが好みそうなたてものだな、私は少し思った。

 城門を潜り大きな木の扉に付けられた獅子の顔のドアノッカーを叩くと、暫くして扉が開き、中から見知った男が出迎えに来る。


「ようこそお越し下さいました、レッドウルフ」

「お前……サクヤか?」


 私は目の前の男に心底驚いた。

 それもその筈、その男はケイドと共に姿を消したサクヤだった。


「ホンマ久しぶりやな」

「ああ。……ハンクはここに?」

「おん。こちらへどうぞ」


 サクヤに案内されながら城内へ入り、案内される。


「あれからどうしていたんだ?」

「……もう知っとるかも知れへんけど、俺ら……吸血鬼になってもうてん……」


 吸血衝動に本格的に襲われる前に、ハンクとサクヤ、そしてケイドはこの吸血鬼の国へと逃げ込んだ。

 当時この国であった治療法でハンクとサクヤの吸血衝動は治める事が出来たけど、ケイドの吸血衝動は治まらなかったそうだ。

 だから、ケイドは城内にある塔の上で吸血衝動の研究を始めた。


「サクヤ、君は今ハンクの従者をしているのか?」

「ううん。じつは吸血鬼の国でまた商売始めてん。たまにハンくんの家にも顔覗かせてもらってて、今日はレッドウルフの迎え頼まれたから」

「そうか」

「ケイドの話の続きは、ハンくんから聞いて」


 サクヤは言いながら振り返り、ある部屋の扉を開ける。

 中は薄暗く、カーテンで閉め切られた部屋にはアンティーク調の家具が並べられていた。

 サクヤは「がんばれ~」と手を振りながら扉を閉める。


「おい」


 私は声の主へ視線を移し、振り返った。

 椅子に腰掛けて脚を組みながら私を見据える男──ハンク。

 懐かしいその姿はあまり変わってはいなかった。

 髭面は健在だが、相変わらずのベビーフェイスである。


「久しいわね?」


 私は敢えて素の喋り方にした。

 ケイドを尋ねに、真夜中の宿屋で話したあの時と同じように。

 するとハンクは鼻で笑う。


「その話し方は止めい。似合わへん」


 そう言われた私は笑みを浮かべる。

 私はハンクの事を未だに許す気にはなれていない。

 ケイドを傷付けたのだから、当たり前だろうが。


「ケイドは何処?」


 ハンクは腕を組みながら答えた。


「もうこの国には居らん」

「なら一体何処に……」

「知らへんよ。俺が知ってんのはケイドがどうやって塔から逃げだせたって事だけや」


 ケイドが吸血衝動について調べ始める前から、吸血鬼の国の王族は彼に目を付けていたらしい。

 各地で様々な種族の怪我や病を治してきた事により、ケイドの名は吸血鬼の国まで届いており、神格化されていたからだ。

 王族はケイド達の入国を歓迎し、城に招き入れた。

 そして、吸血衝動について研究したいと言い出したケイドに、城内に建てられていた塔を与えた。

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