表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
第三章 紅い入国
39/82

第四話 ゴウの、コイチとの記憶

 先の大戦で親を亡くし、身寄りのなかった俺とコイチは孤児院で育った。

 俺は歌を歌うのが好きで、孤児院を出た後はコイチと同棲しながら、クラブで歌を歌って生計を立てていた。

 成長するにつれコイチは色男になっていき、言い寄って来る女性が数多現れ始める。

 そんなコイチの事が、俺も好きやった。

 女好きでどうしようもなかったけど。

 ホンマに好きやった。

 何人の女と付き合おうとも、キスしようとも、寝ようとも、構わなかった。

 俺の居る家へコイチが帰って来てくれる。

 それだけで良かった。

 ただ、好きやった。

 だけど。

 ある日その日常が、壊された。

 コイチが付き合っていた女が、俺達の隣の家に引っ越してきた。

 俺が歌の仕事を終えて帰ると、コイチは玄関で女にキスをしていた。


「ただいま」


 俺がそう言って玄関に入ると。


「おかえり」


 コイチはそう笑顔で迎えた。

 あの女が俺の傍を通り過ぎて行く。

 その顔は笑ってたんか。

 それとも見下していたんか。

 あの時の俺にはわからんかった。

 俺は仕事に忙殺され、家に帰れば二人が抱き合ったりキスしている光景を目撃する。

 ある時、コイチが帰ってくるなり俺の事を押し倒してきた。

 女と喧嘩でもしたのか、コイチは俺を抱いた。

 俺はコイチに抱かれながら、あの女の顔を思い出していた。

 あの女の顔が脳裏に浮かんでいた。

 コイチに抱かれる事は、嫌じゃなかった。

 けど。

 女の代わりにコイチに抱かれるのは、嫌やった。

 辛かった。

 だから、家を出ていく事にした。

 てっきり喜ぶかと思ってったけど。

 コイチはそんな俺を止めた。


「出て行くって、どこ行くねん……!?」


 行く当てなんてない。

 でも俺は、家に居たくなかった。


「好きやねん……コイチの事が」


 だから辛いと、伝えた。

 するとコイチは、俺を抱きしめて。

 キスをしてくれた。

 抱かれている時も、してくれなかったのに。


「なんで……もっと早く言わんねん」

「……え?」

「俺……てっきりゴウに相手にされてないと思ってたわ」


 コイチは。

 俺の事を、好きやと言った。

 出会った頃からずっと、好きやったと。

 そうしてまた、俺の事を抱いた。

 誰かの代わりじゃなくて。

 愛する恋人として。


「女とは別れるわ。どうせ本気ちゃうかったし」


 そう言って。

 翌朝、コイチは女の家に向かった。

 けれど、コイチはなかなか帰って来なくて。

 夕方になっても、帰って来なくて。

 遅いと思ったら。


 ──パァンッ


 強烈な破裂音が隣の家から轟いてきた。

 驚いて隣の家へ行くと。

 血を流すコイチと。

 拳銃を持って涙を流し、打ち震える女が一人。

 女がコイチを撃ったのは一目瞭然やった。

 俺はコイチの身体を抱き寄せて。

 俺の手の中で、コイチは息絶えた。


 そうして俺の恋人……コイチは死んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ