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紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
第二章 紅い旅路
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第十五話 想いを胸に、旅は続く

 私には、アキが必要だ。

 吸血鬼の国に入る為じゃない。

 そんなもの、他の手立てを考えれば良いだけの事だから。


「アッキーは、私に生きる活力をくれたんだ」


 ケイドを失って、失意の底に居た私に。

 動き出す活力を与えてくれた。

 アキが居なかったら、今頃私は人狼の村の奥で死んだように暮らしていただろう。


「アッキーに会えて幸せなんだよ、私。だから、ありがとう」

「……俺も、レッドウルフに会えて良かったと思ってるよ」


 私達は再度唇を重ねて、抱き締め合う。


「こんな事って……」


 そう呟くデイーゴは、私達のもとへやって来て抱擁を解こうとした。

 が、それを止めたのは意外にもリノだった。


「まぁ、諦めぇデイーゴ。この二人、どっからどう見てもラブラブやで?」

「……リノ」


 肩を落とすデイーゴと、その肩に手を置くリノを見て、私は疑問に思っていた事を口にする。


「二人は知り合いなのか?」

「あー、デイーゴは俺の友達や」


 まぁ、予想はしていたが、やっぱり友達だったのか……と納得する。

 私はアキを離して立が上がると、デイーゴの方へ身体を向け背をピンッと張って姿勢を正した。


「デイーゴ……殿下。アキは私を選びました。ですので、私はアキと共に旅を続けます。宜しいでしょうか?」


 私の強い眼差しを見て、デイーゴは観念したように深く溜め息を吐く。


「はぁ……仕方ない。でも一つだけお願いがあります」

「何でしょう?」


 デイーゴは目の前で膝を付き、私の事を見上げた。


「アキと俺が友達である事は許して欲しい」

「私も……そこまで狭量じゃない」


 何も、アキとデイーゴの交流を妨げたい訳ではないからな。


「アキが良いと言うのであれば、好きにしたらいい」

「ありがとう。それと──」

「まだ何かあるんですか?」


 私が怪訝な表情をすると、デイーゴはニッコリと笑って。


「アキと結婚する事になったら、俺も式に招待してくださいね」

「…………はぁっっ!?!?」


 思いも寄らぬデイーゴの発言に、私は教会中に響き渡る程の大声を上げてしまう。

 そんな私の様子を見て、デイーゴもリノもけたけたと笑った。


「そんなに驚かれるとは」

「いやっ、えっ、だって、急に結婚とか言うからっ」


 ヤバい。

 顔が熱い。

 こっ恥ずかしいとは、こう言う事を言うのか!?

 試しにアキの方を見てみれば、彼も茹でダコのように赤くなっていた。

 リノは私のリアクションが可笑しくて堪らないのか、笑い転げている。


「レッドウルフ、慌てすぎやろ」

「だっ、誰だって急に結婚とか言われたら慌てるだろう!?」

「俺は平気やけどな。……んで、レッドウルフとアキは何処へ向かって旅しとんの?」


 私は咳払いをして気持ちを切り替えると、リノに答えた。


「吸血鬼の国に向かっている。ただ……入国する手立てがなくてな……」


 私が前回吸血鬼の国を訪れた時は、私が人狼であるが故に断られてしまった。

 今回は、吸血鬼に近い魔力を持つアキを連れて来てはいるが……正直、入国できるかどうかは未知数だ。


「かの国は他種族を嫌う傾向にあるだろう? けれど同時に、同種族には甘い所もある。吸血鬼の知り合いでも居れば……入国する事は可能だろうが……」


 デイーゴは吸血鬼の血を継いでいるようだが、人間の国の王子だ。

 国を離れるのは難しいだろうし、同行は難しいだろう。

 すると、困っている私を見てリノはデイーゴと顔を見合せ、キョトンとした表情で自身を指さした。


「……俺、吸血鬼の国に家、あるで」

「はっ……!?」

「そもそも俺、吸血鬼の国出身やし。こう見えて貴族やってんねん。心強い味方になれうと思うで」


 リノは私とアキの顔を交互に見てニヤリと笑う。


 リノが吸血鬼の国の貴族だと知って、私の中で僅かな希望が見えた。

 私が吸血鬼の国に行きたい理由はケイドの行方を知り、会う為だ。

 リノはケイドを知っているようだし、色々と都合がいいかも知れない。


「なら、改めてこれからも宜しく頼む、リノ」


 私が握手を求め手を差し出すと、リノはその手を見て、ぎゅっと握り返して来た。


「こちらこそ、宜しく」

「俺も、宜しくお願いします」


 そう言って手を差し出して来たアキを見て、リノは一瞬止まったが、直ぐにハッとしてその手を握り握手を交わす。


「えっと……アッキーやっけ? 宜しく」


 アキから手を離すと、リノは直ぐさま私のもとへやって来てヒソヒソ声で話し始めた。


「なぁ、アッキーってめっちゃケイドさんに似てへん!? アカン……俺好きになってまいそう……」

「……アッキー、デイーゴの唾付きですよ?」

「マジか!? まぁ、そもそもレッドウルフと恋仲やもんなぁ……出る幕ないかぁ」

「……」


 私は熱くなる顔を隠すように先を歩いて、アキ達と共に教会を出たのだった。


第二章 紅い旅路〈了〉

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