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紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
第二章 紅い旅路
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第五話 ギターとキス

 私はベッドに腰かけて、アキに向かって手を差し出した。


「どうかしら……?」

「……嫌ではない……けど」


 差し出した手を伸ばしてアキの手を握ると、ベッドへ導く。

 ベッドに横になってアキを見上げると、視線がぶつかった。

 アキの頬が少し赤らんだのを見て、私はドキッとする。

 これは、ケイドじゃなくてアキだ。

 なのにどうして?

 胸が熱くなった。


「おやすみ、アッキー」

「おやすみ。レッドウルフ」


 隣で横になったアキを見て、目蓋を閉じる。

 眠気は直ぐにやってきて。

 私は眠りについた。


 独りで眠るようになってから、私は深く眠ることが出来なくなっていた。

 けれど。

 その夜は、深く眠る事が出来た。


 見たのは、ケイドの夢だった──。


 数日後。

 旅路に備えた買い出しの際、私は一人道具屋へ立ちよった。


「すまない。魔宝石で弾けるギターが欲しいんだが……取り寄せは出来るか?」

「可能ですよ。どんなモデルをお探しで?」


 私はSGを描いた紙を道具屋に見せる。


「ああ、それなら数日頂ければ取り寄せ出来ますよ。如何しますか?」

「頼む、取り寄せてくれ」

「かしこまりました。ご一緒に魔宝石はご購入されますか?」

「そうしようと思っている」

「でしたらその分サービスしときますよ」

「えっ? いや、流石にそれは……」

「お客様には色々とお世話になっておりますから」

「そうか……すまない、ありがとう」


 魔宝石は普通の宝石類より希少価値が高く高価なので、素直に甘えることにした。


 数日後、SGモデルのギターが道具屋へと届く。

 アキに内緒でそれを受け取り、家へ戻った。


「ただいま、アッキー」

「おかえり、レッドウルフ」

「今……ちょっといい?」

「ん?」


 私は布に包まれたギターをアキに手渡す。


「中、見てみて」

「え……えっ!?」


 中身がギターだと分かると、驚いた顔をして私を見るアキ。


「アッキーが持ってたヤツと似てるよね?」


 アキはコクリと頷く。

 ギターを見るその目は、どこか愛しそうで。

 私は取り寄せて良かったと思った。


「これ、どうしたの?」

「実は……取り寄せたんだ。アッキーにプレゼント。この世界に来てくれてありがとう」

「こちらこそ……ありがとう。すごく嬉しいよ」


 ギターを両腕に抱き締め、嬉しそうに微笑む。

 その笑みに、また胸が熱くなった。


「喜んでくれて良かった」

「これ、旅に持って行っていい?」

「勿論」


 恐らく、長い旅路になるだろう。

 それでも、アキと一緒に居られる時間が増えた事が嬉しくて。

 その日は、アキがSGを弾く姿をずっと眺めていた。


 夜になると昨夜と同様、アキと一緒に一つのベッドで眠る。

 アキがベッドの内側に向かって寝返りをうつと、アキの方へ身体を向けていた私と目が合った。

 

「まだ起きてたんだ……レッドウルフ」

「ん? ああ、うん」

「ごめん……こっち向いてると思わなくて……」

「今謝るところ?」

「いや……」

「尻尾が邪魔になるといけないと思って」

「そっか……」

「……」


 私がアキの黒い瞳を見詰めていると、アキは恥ずかしそうに目を逸らす。

 ふと、アキの形の良い、薄い色合いの唇が目に入って。

 つい、自分の唇を重ねた。


 ケイドが初めて私の部屋を訪ねて来た、あの夜。

 ケイドが私にそうしたみたいに。


「おやすみ、アッキー」


 驚いて目を丸くするアキに微笑みかけて、私は目蓋を閉じる。

 今夜も、よく眠れそうだ。


 翌朝、目が覚めると、アキは既に起きていた。


「アッキー? おはよう」

「あ……うん、おはよう……」


 何故かアキは気まずそうな顔をしていた。

 私は疑問に思いながらも、ベッドからでて朝の支度を済ませる。

 朝食の席についても、アキはきまずそうにしたままだ。


「アッキー? どうかしたの? 何かあった?」

「……あのさ、レッドウルフ……昨日のあれって……」

「昨日?」


 何を言いたいのか分からなくて首を傾げた私に、アキは俯く。


「……キス……」


 アキの言葉に察しがついた。

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