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紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
第二章 紅い旅路
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第三話 再び始まる「おかえり」

「ならアッキーだな」

「え、アッキー……?」

「私の事はレッドウルフとでも呼べ。もうすぐ朝だが寝よう。少しは身体を休めないと」

「ありがとうございます……レッドウルフさん」

「“さん”はいらない。あと敬語も無しだ」


 多分アキの方が歳上だろうから。

 それに。

 出来るだけケイドの時みたいに接したい。

 きっと、これは私の我が儘なんだろうけど……。


「私も……男っぽいじゃベリかたはやめるから……だめ?」

「いや……ダメじゃない」

「ありがと。おやすみなさい、アッキー」

「おやすみ、レッドウルフ」


 ベッドに横になったアキに布団をかけてやると、私は床に敷いた寝袋へと身を納めた。


「ねぇ、アッキー……」

「なに……?」

「気を失う前……何か見たりはしなかった……?」

「……少し覚えてるんだけど……黒い……光が見えて……そこに吸い込まれたような……気がする」


 黒い光?

 世界中を旅していた時何人かの転移者に会ったが、皆一様に白い光に吸い込まれたと言っていた。

 アッキーだけ黒い光に吸い込まれた……とは、どう言うことなのだろう。

 そもそも。

 黒い光とは、闇の事ではないのだろうか?


 そう尋ねたかったが重い睡魔に襲われ、私は目蓋を閉じて眠りについた。


 翌日。

 私達が起きたのはお昼過ぎだった。


「おはよう。よく眠れた?」

「うん。ありがとう」

「アッキーって見掛けによらず寝起きは良いのね」

「普通だと思う。仕事行く日はもっと早く起きるし」

「へぇ……どんな仕事してたの?」

「……一応、ミュージシャン?」

「凄いじゃない」


 アキに洗面台を教えると、私はベッドシーツ等の洗濯物を抱えて外に出た。

 洗濯物は家に備え付いた井戸で洗う事になっている。

 洗濯した物を干し終え家の中へ戻ってくると、アキは着替え終わっていた。


「おかえり、レッドウルフ」

「ただいま」


 私はアキに微笑みを返すが。

 そんな些細な挨拶に、ふとケイドと一緒に居た時の事を思い出してしまう。


 ケイドとはずっと一緒だった。

 それこそ「おかえり」「ただいま」を言い合う必要もないくらい。

 ずっと二人で居た事を、思い出してしまったのだ。

 もうあの頃には戻れないのだろうか?

 そう考えるだけで泣きそうになった。


「どうかした?」

「いや……なんでもない……」


 傷ついた表情を隠すように、私は洗濯籠を定位置に戻す。


「そういえば。この服ってレッドウルフの?」

「違うよ。昔知り合いに……恋人にあげる筈だったんだ」


 最初は私の服を貸そうと思っていたんだけど、明らかにサイズが合わなくて。

 何か無いかと探した所、ケイドと暮らして居た時にあげるつもりで買った服が出てきて。

 アキに着せてみた所ピッタリだったので、暫くはそれを着ていてもらう事にした。

 まさか、服のサイズまでケイドと似ているとは。


「恋人に? 俺が着ちゃっていいの?」

「いいの、いいの。気にしないで」


 渡せるかも、分からないし。

 朝食兼お昼ご飯を食べ終えると、私はアキともう少し話をしてみる事にした。


「ミュージシャン? してるって言ってたじゃない? 何の担当だったの?」

「ああ……ギター弾いてた」

「へぇ、ギターねぇ」


 私は奥の倉庫へ行くと、布にくるまったこの世界で作られたクラシックギターを持ってアキのもとへ戻る。


「アッキーってもとの世界では何を使ってたの?」

「何って?」

「ギター。種類?」

「SGっていうギター、使ってた」

「ギブソンの?」

「知ってるの?」

「うん。結構渋いの使ってたのね」

「このギターは? レッドウルフの?」

「ううん。父の物なの」

「お父さんの? お父さんもギター弾いてるんだ?」

「……ええ」


 私は二階にある父の部屋の方角を、遠い目で見る。


「今弾ける?」

「え、ああ」

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