表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅き狼の恋愛遍歴  作者: redwolf
第一章 紅い出会い
12/82

第十一話 神は少年の姿をして

「神父様……」

「おや。お待ちしておりました。すみません、ちょっと席を外して宜しいでしょうか?」


 眉を下げてこちらを見て来る神父に、私はコクリと頷く。


「ああ。構わない」


 神父は母親の元へ行くと、何やら話をし始める。

 遠目からその様子を窺っていると、ケイドが私の服をくいくいと引っ張った。


「どうした? ケイド」

「あの子……目が……」

「え?」


 女の足元を見ると、そのスカートにしがみつく子供が目に包帯を巻いている事に気が付く。


「どないしたんやろ?」

「気になる? 聞いてあげようか?」

「おん」


 私はケイドと共に神父のもとへ静かに歩み寄った。


「話の邪魔をしてすまない。その子供の包帯は、一体どうしたんだ?」


 尋ねられた神父は、一瞬私達の顔を交互に見て驚いた様子だったが、すぐに答えてくれる。


「数日前……魔物に襲われたのです」

「魔物に?」

「はい……。この町は迷いの森とも隣接していて、この子は誤ってその森に入ってしまったのです。幸い命は取り留めましたが……目は……」

「治癒魔法は試したのか? 眼球が残っていれば、多少は視力を回復できると聞くが」

「……残念ですが、傷が深く……眼球は……」

「……」


 残っていない、と言う訳か。

 肩を落とす母親を見て、申し訳ない事を聞いてしまったと思った。


「でも……どうして教会に?」


 まさか神頼みにでも来たとか?


「ここは診療所も兼ねていますので、傷口の様子を見せに来られたのです」

「ああ、なるほど……だそうだ、ケイド。……ケイド?」


 振り返ると、ケイドは慈悲深い瞳で、子供の目を見詰めている。


「可哀そうに……」


 ケイドはゆっくりと子供に近づくと、包帯に包まれた目元にそっと触れた。

 途端──ケイドの左手から眩い白い光が放たれると、子供の包帯の下から同じ光が溢れ出す。

 パラッ……と包帯が解け落ちると、子供の大きな目がゆっくりと開いた。


「……ウソ……」


 母親が驚いた様子で口元に手を当てる。

 子供の目には、光が戻っていた。

 残っていないと聞いていた眼球さえも、綺麗にもとに戻っている。

 ケイドを見たその子供は。


「……かみ……さま?」


 そう、呟く。

 ケイドは優しく微笑むと、フッと気を失った。


「ケイド!!」


 ゆっくりと倒れていくその華奢な身体を、私は受け止める。


 ……一体、何がどうなってるんだ!?

 どんな優秀な治癒士でも、失った眼球まで戻せるなんて聞いた事がない。


「……行き成り来てすまないが、今日はこの辺で失礼させてもらう……」


 私はケイドをお姫様抱っこする形で抱え上げ、教会を後にする。

 神に祈りを捧げるように、ケイドに向かって手を組む親子と神父を背にして。


 ケイドの話は瞬く間に町中へ広まった。


 その夜。

 私は眠る事が出来ず、窓際に置かれた椅子に座り頬杖をついてずっと考え込んでいた。

 ケイドとは、何者なのか。

 父の忘れ形見。

 けど、それだけではない気がする。


「まさか本物の神……何て言うんじゃないだろうな……」


 思えば、生き返った時点で人知を超えている。

 私は、手を出してはいけないモノに手を出したのかも。

 そうだとしても、今更遅い。

 もう私は、ケイドの手を離す事は出来ないだろう。

 考え込んでいると、ノック音が聞こえて来た。

 ギーっと軋む木の音を立てて、遠慮がちにドアが開く。


「起きてる? レッドウルフ……」

「ケイド?」


 私は慌てて立ち上がり、ドアの傍へ駆け寄った。


「どうしたの? こんな夜中に……」

「眠れへんくて……あのさ、レッドウルフ……」

「ん?」

「一緒に……寝てくれへん?」


 また、あの上目遣いで見つめられる。

 ヤバ。

 マジで落ちそう。

 あ、もう落ちてるか。


「もちろん、いいよ」


 丁度そろそろ寝ようと思ってたところだし。

 私は快くケイドを部屋へと招き入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ