1/3
プロローグ
鮮血のようにも、燃えさかる炎のようにも見える、紅い髪。
頭の上にはピンッと立った狼の耳に、立派な尾を携えた私の事を。
皆こう呼ぶ。
『レッドウルフ』
と。
同種族の人狼達は揶揄のつもりでそう呼んでいるようだが、私はどう言う訳かその名前を気に入っていた。
名は体を表すと言うが、体が名を表すとは。
面白いじゃないか。
私の名前は『レッドウルフ』。
真紅の毛並みを持つ、誇りはさして高くはないが人狼だ。
私をレッドウルフと呼ばなかったのは、最愛の父だけだった。
本当の名前はある。
この物語でそれが語られる事は、恐らくないだろうけど。