今日あま 「むっふーん今日はあまのだえ」
冬の夜、冷え込んだ空気が肌を刺すように感じる。俺、加藤風里はセブンイレブンの袋を手にしながら、文学サークルの連中と一緒に暗い小道を歩いていた。袋の中にはおでんとビール。冬の冷たさが芯まで染みるが、袋越しに感じられる温もりは俺たちを少しだけほっとさせてくれる。
「寒いな、こういうときはやっぱりおでんだなぁ」三年生の青紅葉陽が笑いながら言う。彼はいつも明るく、飲み会では特に面白キャラとして人気がある。さらに、モラ爺ことモラ原教授の授業で詰められたとき、鞄の中から「おはぎ」を取り出し徐ろに食べだし、挙げ句の果てには屁をこいた事であの恐ろしいモラ爺を黙らせたという伝説まで持っているのだ。だが、飲み会の幹事を引き受けたりするなど、実は真面目な一面も持っている。
「先輩また、「今日は天野だえ」って言うんじゃないだろうな」俺は冗談めかして言った。彼がサークルでよくやる内輪ネタだ。正直つまらない。しかし、そのフレーズを口にするたびに、俺の心はざわつく。それは、天野田絵先輩に対する思いを余計に意識させるから…彼女は四年生で、サークル内外問わず天才小説家として知られている。天野先輩の卒業が刻一刻と迫る中、俺は彼女に思いを伝えられずにいる。
「どうかな?お楽しみだ」青紅葉がニヤリと笑うと、二年生のフラッシュ、本名 水田 光が「また賭けでもするか?」「俺は言うに掛けるぜ?」と持ちかけてくる。彼はギャンブルが好きで、時折俺たちを巻き込んで賭け事を楽しんでいる。ポーカーでロイヤルストレートフラッシュをバンバン出すからフラッシュと呼ばれるようになった。イカサマをしているに違いない。
三年生のかむさん、本名上村は笑いながらも「ほどほどにしろよ」と俺たちを軽くたしなめる。彼はいつも論理的で優しく、俺たちにとって頼れる兄貴分だ。
俺たちはそうやって笑いながら、セブンイレブンで買ったおでんとビールを回し食いしながら、夜の小道を歩き続ける。寒さが体に染み入るが、仲間たちと過ごすこの瞬間だけは不思議と温かい。だが、その温かさの裏側には、俺の中で募り続ける虚無感と劣等感が渦巻いている。天野先輩と比べれば、自分がどれだけ平凡で、無力なのかを痛感せざるを得ない。彼女の小説は独創的で、読む者を圧倒する。俺が書くものなんて、足元にも及ばないと感じてしまう。こうして俺の日常は過ぎていく。
サークルの飲み会ではいつも、みんなが楽しそうにしている。そんな中、俺だけがどこか取り残されているような気がしていた。楽しいはずの大学生活が、どこか空虚で、どこか温もりのないものに思える。それでも、天野先輩の隣にいられるだけで、少しだけ心が満たされるような気がしている。
「風里、何か考え事か?」かむが俺の肩を軽く叩いた。俺はハッとして、顔を上げる。
「ああ、いや…ちょっとぼんやりしてただけですよ」と、俺は笑顔を作ってごまかす。
「そうか。まぁ、お前も色々あるだろうけど、何かあったら言えよ」と彼は優しく言ってくれる。その言葉が、俺の心に少しだけ安堵を与えてくれた。
次の日、俺はゼミの授業でモラ爺ことモラ原教授に詰められていた。教授はいつも温厚な口調で話すが、レポートを出し忘れたり、授業をちゃんと聞いていなかったりすると「怒ってないよ、怒ってないけど」「やる気あったんかっちゅぇ」「なかったんやろっちゅえ」と、学生を一喝する。その威圧感に、俺はいつも萎縮してしまう。
「加藤、君の考えはどうだ?」とモラ爺が問いかけてくる。頭の中が真っ白になり、言葉が詰まる。
「えっと…」と口ごもる俺の姿に、他の学生たちも緊張しているのが伝わってくる。
「やる気あったんかっちゅぇ?」とモラ爺の問いと唾が飛んできた。その瞬間、俺はますます自分の無力さを感じた。
その夜、いつものように俺たちはセブンイレブンでおでんとビールを買い、寒い小道を歩く。今日も青紅葉先輩が「今日は天野だえ」と冗談を飛ばし、天野先輩が困ったように微笑む。その笑顔を見るたびに、俺の心は締め付けられる。
天野先輩に思いを伝えたい。だが、その一歩が踏み出せない自分がいる。彼女の卒業が迫る中で、俺は何もできずにいる自分に絶望していた。高校時代の夢も諦め、進路も中途半端なまま、俺はただ、目の前の現実に流され続けている。
「風里、大丈夫か?」かむさんが俺に声をかける。
「ああ…うん、大丈夫だよ」と返すが、その言葉がどこか虚ろに響く。
夜空を見上げると、寒月が俺たちを見下ろしている。俺はその月をじっと見つめながら、心の中で何かが少しずつ変わっていくのを感じた。このままでは終われない。天野先輩が卒業してしまう前に、何かをしなければならない。俺はその決意を胸に秘めながら、冷たいビールを一口飲み、食道を熱が通るのを感じながら静かな夜道を歩き続けた。
その晩、俺はスマホを取り出し、天野先輩にメッセージを送ろうとした。
「先輩、月がきれいですね」
だが、送信ボタンを押す前に、また手が止まる。何度も繰り返してきたこの躊躇いが、今夜も俺を支配する。
しかし、心の中で何かが叫んでいる。今夜こそ、この無限ループから抜け出すんだと。刻一刻と、彼女の卒業のリミットが迫る中で、俺は意を決し、指を走らせた。
「先輩、少しお話しませんか?」
送信ボタンを押した瞬間、俺の心に一筋の光が差し込んだ気がした。
翌日、冬の寒さが身に染みる中、俺は天野先輩との約束の場所へと向かった。
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