表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

「アルト2」憧れ

彼の名は、如月 直樹。

海音のクラスメイトの男子。

彼は、いつも海音を見ていた。

彼は、海音に憧れていた。

決して実らない恋だと理解していても。





┈┈••✼••┈┈晴蘭の家の茶の間┈┈••✼••┈┈



「ごべんだざぁい!! ぶみゃあぁあぁあぁ~~~ん!!」


「わ、分かったから(焦)」



 俺の名は、如月(きさらぎ) 直樹(なおき)

 13歳、中学1年、男子。

 俺には、これと言った自慢できるものが無かった。

 あるとしたら、この長身だ。

 でも、長身以外に何も自慢できるような誇れるものがない。


 特別勉強ができるわけでもない。

 特別スポーツができるわけでもない。

 特別得意なものがあるわけでもない。

 だが困った事に、クラスのみんなは、俺を何かと頼るんだ。

 正直言うと、そっとしておいて欲しい。

 

 魔法でも使えたらいいのに・・・


 俺はいつも魔法使いに憧れていた。

 実に世の中もは不公平だ。

 魔法使いは、特別だ。

 俺は常にそう思っている。感じている。

 この世界には、圧倒的多数の凡人と、圧倒的少数の魔法使いが居る。

 そんな、圧倒的少数の魔法使い達は、魔法使いだとバレないように、ひっそりと暮らしていると聞く。

 凡人の俺からすれば、怪我をしても、魔法でも薬ででも、直ぐに治せるだけでも特別だ。

 そんな凄い力があるのに、隠さなければならないなんて、実に勿体ない話だ。


 俺のクラスメイトに、魔法使いの女の子が1人居る。

 金髪碧眼美少女の、学校で大人気の彼女、海音さんに、俺は憧れていた。

 その()の名は、愛羅(あいら) 海音(みおと)

 彼女が例の魔法使いの女の子だ。

 小さくて可愛くて美人で、しかも魔法使い。

 男なら、憧れないはずが無い。

 

 だが、一応は海音さんが魔法使いだという事は、内緒って事になっている。

 とはいえ全校生徒は知っているが。

 もし海音さんが魔法使いだと世にバレたら、魔管保省(まかぽしょう)に取り込まれ、もう二度と彼女とは会えなくなるだろう。

 俺はそんな事を望んでいないし、クラスのみんなもきっと同じ思いだ。


 ところが不思議な事に、海音さんはこんな俺と親しく接してくれている。

 海音さんは、俺と小学校の頃からの仲だと言うが、実の所俺には海音さんとの小学校の頃の思い出が無いのだ。


 なぜだろう?


 確かに海音さんとは、中学に上がる前から知っている気がするのに、俺にとって海音さんとの思い出は、中学に入ってからしか無い。

 なのになぜ?・・・

 本当に不思議な娘だ。


 そんなある日、俺は海音さんが魔法使いだと知った。

 

 ほんの些細な事だった。

 

 海音さんが保健室に入って行った時、ちょっと心配になって、そっと覗いてみた。

 本当はダメだと解っていたが、怪我でもしたのかと心配で仕方がなかった。

 その時、俺は見てしまったのだ。

 海音さんが魔法を使っていた所を。


 しかも、保健の片桐先生も、隣のクラスの飯田(いいだ) 千春(ちはる)という娘も、好湾(すわん) 晴蘭(せいら)って娘も、魔法使いだったのだ。


 とんでもない秘密を知ってしまった!


 うちの学校に、3人の魔法使いが居たのだ。

 俺は、この秘密は絶対に誰にも話さないし、死ぬまで守り続けるつもりだ。


 俺は、憧れの海音さんが親しくしてくれるだけでも幸せだった。

 だって、絶対に海音さんは自分のモノにはならないと理解していたから。

 ならばせめて、学生として居られる時だけでも、海音さんと一緒に居たい。


 そんなある日のこと。

 海音さんが、クレープを買いに行きたいと言い、俺を誘ってくれたのだ。

 俺は舞い上がってしまいそうな程に歓喜した!

 他にも女子達がついて来たが。

 彼女達は、いつも海音さんと一緒に居る4人組だった。

 拒む事はできない。

 彼女達を拒むという事は、海音さんも拒む事になるだろうと理解していたから。

 しかし、女の子ばかりのグループで、俺1人が男ってのは、なんだか場違いな感じがして、正直居辛い。

 でも、海音さんと居られるなら、我慢しよう。

 彼女達の会話にも入れないし、1人空気みたいな存在ではあるが、それでも良い。

 海音さんと、同じ空間、同じ時間を過ごせるのなら。。。


 そんな時だった!

 恐らく他校の野郎達だとは思われるが、4人の男の不良グループに絡まれてしまった。

 奴らは、彼女達を狙っているようだ。

 まるで俺が目に入らないかのように彼女達に馴れ馴れしく接する。

 嫌らしい目をしやがって! なんて気分が悪いんだ。

 吐き気がする。

 汚い手で海音さんをさわるな!

 

 気が付いたら、海音さんの手を掴む腕を、力いっぱい引き上げていた。

 俺はそんなに気が強い方ではないと思っていたのに、身体に恵まれたのか、腕力だけは自信があった。

 奴らは、俺に何度も殴りかかって来たが、俺は海音さんを守りたい一心で、ただ耐え続けた!

 そして、気が付くと、海音さんが大粒の涙をポロポロと流して、俺の顔を覗き込んでいた。


 いったい何が起きた?


 後頭部が重く鈍い痛みがある。

 なんだか首あたりが、ベタベタする。

 なんだこの液体は?

 手に触れてみると、それは血だった。


 えっ?!・・・・・・血? 誰の?


 自分の血だった。

 それも、結構な量だ。

 そして、またふと気が付くと、いつの間にか路地裏に居た。

 なぜか隣のクラスの、飯田 千春と、好湾 晴蘭も居た。

 いつ、どうやってこんな場所へ来たのか記憶が無いが・・・

 でも、あの不良グループの姿が無いのに安心した。

 どうやら、危機は脱したようだ。


 海音さんは、なにか俺に薬らしきものを飲ませようとしているのに気付いた。

 でも、身体が思うように動かない。

 海音さんが、何かを飲ませようとしてくれているのは理解しているのに、その液体は口からこぼれるだけだった。

 

 俺・・・・死ぬのかな?


 なんて、ふと思った瞬間だった!

 なんと海音さんが、口移しで何かを飲ませてくれた。

 とても甘い桃の味がした。

 凄く、凄く、興奮した。

 思わず海音さんを抱き締めたくなったが、身体が動かなかった。


 でも、次の瞬間!

 身体の中から一気に活力が広がるような、湧き出るような感覚になった!

 とても気持ちよかった。

 

 そして、身体が楽になったので、身体を起こしてみようと力を入れると、なんのこともなく普通に起き上がれた。

 だが、何かが違った。

 最初は何が違うのか理解できなかったが、立ち上がってみて驚いた!


 あれ? 何だか制服がゴソゴソするぞ・・・


 いつもと違うよう? 他人の制服を着ているかのような不快感。

 海音さんも、他の娘達も、なんだか俺を見て驚いているように見える。

 ・・・いや違う?

 俺を見て微笑んでいる???

 みんななんで? なんだこれ? なんだこの感覚?

 

 なんだか、制服のカッターシャツが擦れて、胸がピリピリ痛むし、なんだか腫れぼったい。

 痛みは無いのだが、なんだか少しは盛り上がっている風に感じる。

 そればかりか、自分の声が1オクターブ上がっているような気がする。

 なんなんだこれ? まるで女の子のような声じゃないか?

 今の俺は、いったいどうなっている?


 混乱している内にも、海音さんと他の女の子達が、ワイワイと騒ぎ出して、何か分厚い絨毯じゅうたんのような物をカバンから取り出して地面に広げて、俺にそれに乗れと言う。

 訳が解らないまま、指示に従い絨毯の上に座ると、フワリと浮かんだ気がしたと思ったら、エレベーターが上階へ上がるような感覚とともに、風が頭上から下へビュー!と吹き荒れた!

 思わず怖くなって目を瞑ったが、前方へ移動する感覚とともに、風の流れが向かい風に変わったので目を開け目みたら、なんと空を飛んでいるではないか?!


 もう、パニクって、地上に降りるまでの記憶が無い。

 気が付くと、そこは好湾さんの家だという。


 はて?

 いったい俺は、これからどうなるのだろうか?




海音は、自分を庇って大怪我をした直樹に、女装役剤1yearを飲ませた。

口移しで。

晴蘭から、1日だけ女の子に変身すると聞いた女装役剤だったが、実は1年間女の子に変身女装役剤だった・・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ