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コロッセオ実況解説文字起こし

本年もよろしくお願いいたします






『────さて、お次は近距離主体の試合になるようですね』

『のようですね。赤サイドは客人のゼンザイ選手。青サイドも客人ですね』

『ぴたぱん選手ですね。格闘系の軽戦士です』


『引き続き実況を私、バンリが』

『解説はマタンハが務めていきます』




『ゼンザイ選手はここ数日コロッセオに姿を現しませんでしたが、装いを新たに本日8連勝』

『さすがです。元々装備が本人のレベルに見合っていませんでしたから、適した物に変えたことで実力が十全に発揮できているのでしょう』

『それにしても危なげなく勝ちを積んでいましたが』

『まさに完勝でしたね』

『素晴らしい戦いぶりでした。

……装備について改めてお願いしてもよろしいですか?』


『はい。

まず目立つのは鎧ですね。あれは警備隊の型落ち品になります』

『型落ちと聞くとあまり良いものとは思えませんが』

『そうは言ってもかつて警備隊に採用されていただけあって優秀です。強度もさることながら、特筆すべきは耐性ですね。熱や電撃に対して強い抵抗力を発揮します』

『なるほど。状態異常に強いと』

『ええ。最新式のものとも遜色無い成績を残しています』


『鎧の他に注目すべきは?』

『そうですね。メイス、と言いたいところですが盾でしょう』

『盾ですか』

『彼の戦闘スタイルでは防御の要である盾は、ともすれば鎧以上に重要となりますからね』

『そう言えば少し規格が違うように見えましたね』

『そうなんですよ。警備隊は職務の都合上モンスターとの戦闘が主なのですが、その影響で盾は大型のものが配備されているのです』

『しかしゼンザイ選手の盾は小さい』

『恐らくは改造品でしょうね。正規品に手を加えたのだと思います。見た限り歪みもなく細部にわたって刻印が施されていますから、腕のいい職人に頼んだのでしょう』



『素晴らしい装備なのですね。

では、ぴたぱん選手の方はいかがでしょうか』

『これまでと大きな変更はないようですが、あのチャイナドレスは見事ですね。見た目の流麗さはさることながら、耐性を底上げしてくれる刺繍が美しい。男性も女性も目が釘付けでしょう』

『ははは。意外なことに、と言うと怒られるでしょうが。熱心なファンにはぴたぱん選手と同性の女性も多くいると聞きます』

『しなやかな脚線美だけでなく、その所作や佇まいの美しさが受けているのだろうと考えますよ』

『それから何よりも強いのが良いのでしょうね』

『ああ、間違いないですね』


『さて、そんなぴたぱん選手ですが、まだゼンザイ選手との対戦は無かったはずでしたね』

『ええ。これが初対戦です。ゼンザイ選手は概ね決まった時間にコロッセオを訪れますが、ほとんどいつも短時間で帰ってしまいますからね。どうしても出会うことそのものが難しいのですよ』

『なんだか珍獣みたいですね』

『はははっ。まあ、そうした扱いなのは否めないですね。住人の間でも試合に賭けられるとラッキーだと言われていますから』


『実際、ゼンザイ選手の勝率は高いですから、安定して勝つなら狙い目なんですよね』

『そうした面を見ると、この試合は厄介ですよ。どちらが勝つのか当てづらいでしょう』

『マタンハさんでもですか?』

『そうですね。難しいですよ。

私が賭けるなら……、ゼンザイ選手ですかね』

『理由をお伺いしても?』

『装備の質が上がっただけでなく、今日の他の試合を見ていると動きが良いですからね。7~8割くらいはあるのではないか、と思います』

『なるほど。

ああ、今オッズが動きましたよ』

『はははっ。外しても怒らないでくださいね』




『──そうこうしている内に両者入場です』

『賭けも受付が終了しました』

『赤サイドにはゼンザイ選手が、青サイドにはぴたぱん選手が登場します』

『どちらにも緊張した様子は見られませんね。落ち着いています。パッと見た感じ、装備に変化も見られません』

『いえマタンハさん。ぴたぱん選手の耳に注目してください。あの紫色のイヤリングは初めて見ますよ』

『本当ですね。あれは……。

細かな違いはありますが、〔ヤグジット・ナファの耳飾り〕に似ていますね』

『ほう。〔ヤグジット・ナファの耳飾り〕とはどんな物でしょうか?』

『低カルマ値特効のアクセサリーです。倍率はそれほど高くはないですけどね。ただ、手数の多いぴたぱん選手との相性は良いですよ』

『なるほど。それにコロッセオはカルマ値の高い人物が少ないですものね』

『ええ。安定して効果を発揮します』

『これは少し分からなくなって来ましたね。勝敗はどちらの手に。

……おっと、カウントが開始されました。

あと10秒』





『──今、開始を告げる銅鑼が打ち鳴らされます』

『おっとこれは?』

『大方の予想を裏切り、両者見合っていますね。

静かな立ち上がりです』

『どちらかが詰めると思っていたのですが』

『これはどういった意図が?』

『互いに警戒しているのだと思いますよ。初対面ですからね』


『慎重に始まりましたが、ここでぴたぱん選手に動きが』

『睨み合いながらさりげなく型を決めていますね』

『格闘系のスキルですね。特定の動作で能力を向上させるバフ系のものです』

『距離が空いているのを利用して、出方を伺う動きの中に混ぜ込みましたね』

『うまく戦術を組み立てていくぴたぱん選手』

『ただ、ゼンザイ選手にアクティブなバフは無いですがパッシブで強化はされていますからね。まだ五分五分と言ったところです』

『なるほど』

『重ねがけにも限度がありますからね。ここでバフを積むということは仕掛ける意志があるということでしょう』

『なら、タイミングが問題ですか』

『欲張るか捨てるか。私なら捨てますが彼女はどう出ますかね』


『動きが無いまま、もうすぐ1分が経過します』

『彼女は欲張ったようです。確実な火力が欲しいのでしょう』

『そうなると、前に出てこないゼンザイ選手が恐ろしいですね。バフをかけていることには気付いているでしょうに』

『あの様子を見るに敢えて、でしょうね』

『ほう。それは……』


『っと、動いた!

ぴたぱん選手が走り出す! 間合いを詰めるぞ!』

『一気に攻めてきましたね』

『主導権を握ります!

挨拶代わりの右ィ!』

『まずはガードを固めさせて攻撃を封じるつもりのようですね』

『ゼンザイ選手の左側へと回り込む動きです。盾を中心に円を描く。

そして、手は止めずにラッシュをかけていく!』

『蹴りも交えて攻撃を散らしていっています。バランス感覚が素晴らしい』

背筋(せすじ)の伸びた美しい姿勢ですね』


『ゼンザイ選手、攻め立てられますが崩れません』

『安定感があります。全て盾で受け止めていますよ』

『HPバーが減りません』

『まともにヒットしていませんからね』

『これはぴたぱん選手、少し苦しいか』

『型のバフは効果時間が短いです。手軽で強力ではあるのですが』

『おっと、ここで一歩引いた』

『ですがゼンザイ選手も甘くない。盾を押し込んで来ます』

『いや、躱しました!

横をすり抜けてぴたぱん選手、ゼンザイ選手の追撃を逃れる!』

『なるほど、型を邪魔されたのですね。引いた瞬間に押し込まれたせいでバフ継続の目論見が崩れたようです』

『それで逃げるしかなかったと。

さあ、形勢逆転。ゼンザイ選手、一転荒々しい動き』

『大振りで退路を断ってくるのは、ぴたぱん選手にとって厳しいですよ』

『壁際に追い詰められていきます!』


『ゼンザイ選手は冷静ですね』

『対するぴたぱん選手は後ろへ下がるしか択がありません』

『いや、まだ何か隠しているようですよ』


『っと、何だ!?』

『構えからの?』

『高速のジャブが飛びましたが、威力がおかしいぞ!』

『モロに入ったとは言え、数mのノックバックですか……』

『たたらを踏んだゼンザイ選手。ぴたぱん選手は飛びかかる!』

『ここは攻めますか』

『踵落とし! 回し蹴り! 拳を振り下ろす!』

『ですがガードが間に合っています』

『HPが削れない。堅すぎるぞ、この男!』

『ぴたぱん選手はもう仕切り直しが出来ないですよ。攻め切る他ないです』

『先ほどのジャブは打てませんか?』

『難しいと思いますよ。あそこまで温存したのは単純にとっておき(打てば終わり)だからでしょう』

『打ちきりの一発ですか』


『遮二無二殴打を続けるぴたぱん選手ですが、磐石な防御を崩せない!』

『これは詰みにかかってますよ』

『メイスでの攻撃は囮ですか』

『ええ、見せ技にしています。ついでに間合いまで計っていますよ』

『いやらしいですね』

『ええ、素晴らしいです。

ゼンザイ選手は止めに大技を好んで使用しますからね。万が一にも空撃ち、なんてことが起こらないようにしているのでしょう』

『それはそれで見たみたいですけどね』

『はははっ』


『ぴたぱん選手の動きが鈍くなってきましたか?』

『ええ、キレが無くなってきました。どうしても消耗しますからね、通じない攻撃を仕掛け続けるなんてことをさせられれば』

『おっと、ここで構えを!?』


『嘘か真か、丁か半か』

『先ほどのジャブからうまく繋げれば。……というところで、カウンター!』

『見切られていましたね。仕切り直しで使ったのが仇となりましたか』

『最後はアッパースイングの盾で顔を撃ち抜かれてしまいました』

『強烈な一撃でしたね。4つ以上のスキルが重ねがけされていましたよ』

『それは頭が弾け飛びますね』


『いやしかし、ぴたぱん選手もよく粘りました。打つ手無しかと思われた状況で諦めなかったのは、コロッセオの戦士として称賛に値します』

『確かにその通りですね。最後まで戦い抜いた勇士にも拍手を』





『──さて次の試合を紹介する前に、皆さま賞金の受け取りをお忘れ無きよう』

『試合ごとに獲得した賞金を受け取ることを、コロッセオでは推奨しております』

『更なる賭けに投資できるから、なんて理由もございますがね』

『はははっ』



『お次の試合は────』






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