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異世界派遣社員の渇望  作者: よぞら
水の章
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洗礼

 水に落ちたはずなのに息苦しさはなく。天地が紺地に蛍光ブルーの方眼罫で出来た空間に居た。暗くて明るい空間だった。

 水の中のように気泡が下から上に上っている。

 天の方眼罫から透過してレイと紹介された羽根の生えた赤子の頭が降りてきた。


≪ここは合わせ水鏡・洗礼の間。R-0009への転移を承諾しますか?≫


 流暢な話し方の機械音が空間に響く。頭脳は大人な名探偵の黒い犯人がボイスチェンジャーを使用したような野太い低い声だった。天使のような見た目からして子供か耳心地のよい女性の声だと無意識に推測していた為、ギャップに落胆する。


≪宮野葉湖、R-0009への転移を承諾しますか?≫

「お断りします。」


 シドの話を聞く限り、R-0009という惑星に環がある事以外に魅力はない。異世界転移など妄想を患ったお年頃の葉湖にとっては願ってもいない事態だが、ファンタジー要素の薄い残念な世界に裏ボスを倒せなどという任務はごめんである。


≪では洗礼を開始します。宮野葉湖。今より識別名を通称ヨウといたします。≫

「拒否権は!?」


 葉湖の拒否を流され、濃紺の空間が虹色に輝きだした。拒否権とはある事柄について拒み断る権利ではなかっただろうか。人権侵害と最高責任者によるパワーハラスメントである。


≪身体調和を開始します。ヨウをベースにR-0009人の骨格、特徴的容姿を取り入れて近づけ、カラーリングはランダムに選ばれます。≫


 電子的な機械音に合わせて体が変貌していく。両手を見ると肌が白くなったように見える。


≪身体強化を開始します。各種無効・不要・耐性・再生能力を付与します。付属として着用中の衣服を同様の調和、強化します。≫


 七つの発光体が次々と体の中に入り、着ていた中学校の制服が色もデザインも変貌した。R-0009になじむデザインなのだろう。


≪救済措置を開始します。使用言語及び文字の翻訳能力。一般常識及び世界知識の付与。固有特殊能力‘天華’を付随します。≫


 再び複数の発光体が体の中に入り、身体が強く発光しおさまると同時に空間を支配していた虹色の光は消えて濃紺へ戻った。


≪滞りなく洗礼が完了しました。項目の確認願います。≫


 目に見える変貌を遂げた葉湖の前に、シドがないと言っていたスキルボードに類似した青色の画面が宙に現れた。

 こそには見慣れた日本語で文字が並べられている。



識別名:通称ヨウ

職  業:異世界派遣社員 特命調律師

任  務:始祖ヴィーの捜索と災厄アポカリプスの殲滅

地球名:宮野 葉湖

年  齢:2013年14歳

能  力:各種無効・各種耐性・超再生能力

     エネルギー接種及び睡眠不要

     酸素及び大気不要・α元素干渉無効

     固有特殊能力『天華蜘蛛』



 ざっと見た感想を述べるならば、なかなかの高能力ではないだろうか。欲を言えば体力、魔力、精神力、防御力や攻撃力などの数値も欲しいところだ。


≪それではR-0009へ送ります。≫

「ありがとう。レイさん。」


 異世界転生っぽくなってきた出来事に嬉しくなりお礼を言うとレイは葉湖に近づきニコリと笑った。


≪洗礼は1秒もかかりませんが好きもののヨウに私からのサービス演出です。≫

「え???」

≪それではヨウ。健闘を祈ります。≫


 台無しと感と不安感が募る中、識別名通称ヨウとなった宮野葉湖は再び水の中へと沈んだ。

◆宮野葉湖改めヨーコ…異世界派遣特命調律師。任務は捜索と殲滅。

◆合わせ水鏡・洗礼の間…天地が紺地に蛍光ブルーの方眼罫で出来た暗くて明るい空間。

◆洗礼…本来なら1秒程で終わる付与を葉湖の為にレイが施したサービス演出。


すごーい。洗礼すごーい。と思っていたら演出だったオチ。

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