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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

友情ごっこ

作者: 沖田 楽十

イジメやリスカ描写など、胸糞悪い内容なので、閲覧する際は注意でお願いします!












友達なんて、唯の道具に過ぎないと思っていた。利用し、利用されて生きるのは、多分、生まれたときからの宿命なのかもしれない。少なくとも、アタシはそう思っていた。




「ぷぷっ…。またぁ篠原しのはらサン、いじられてんよ!」


アユは、バカだよねぇ?と同意を求めた視線を送ってきた。そこで、もし反抗的な回答をしたら、次はアタシが虐めの標的になる。そんなチャレンジなんて御免なアタシは、「キモいからなんじゃなぁい」と、答えた。

視線を感じ、振り返ると篠原さんと目が合った、気がした。アユはこちらを見詰める篠原さんに気付き、「見てんじゃねぇよ、ばーか!」と、罵声を浴びせていた。

(篠原さんも、もっと、器用に生きれば好いのに…)

そんな素直過ぎる性格だから、あーゆういじめっ子に目を付けられるんだよ。


「マホ、行こ行こ。これ以上、篠原さんと一緒に居たら、ウチらにも篠原菌が移る!」


本人に聞こえるぐらい大きな声で言うと、アユはアタシの腕に自分の腕を絡ませ、早足に教室から飛び出した。因みに、マホというのは、アタシの名前。



「はあぁ…。まじ、キモかったんですケドぉ」

「アユは、人一倍の、潔癖症だもんね」


完全に、篠原さんに対するばい菌扱い。アタシって、結構酷い人物なのだと、しみじみ思ってしまう。でも、しょうがないじゃない!自分を守る為なんだから。人のことなんて構ってられる程、アタシは優しくないし、ましてや余裕なんてない…。精々、同情をしてあげられる事だけ。


「……ほ、マホッ!!」

「…!?な…何?アユ」

「だっからぁ!カズと別れてヒデ君と付き合った方が好いのかどうかって聞いてんじゃん!アタシの話、聞いてなかったっしょ?」


ご立腹のアユ。早く機嫌直させないとね。アタシは、学校では●ラ●もんの●ネオみたいに、周り一人一人に気を使う。勿論、リーダー格の人だけに。え?其れより下はどうかって?

ランクがアタシと同じぐらいまでなら普通に接し、篠原さんみたいな下クラスだと、周り同様に虐めに関わりたくないから、基本、見て見ぬフリ。


「あー…今度、アユの誕生日じゃん?だから、何プレゼントしようか考えてて、話聞いてなかったぁ。ゴメン」

「ちょっとぉ!そーゆう事はサプライズにしてよ!…まぁ、話聞いてなかった事は、許しちゃる」

「まじすんませぇーんしたっっ!!」


お調子者で、人の気持ちを考えないアユと一緒に居ると、気持ちが落ち込む…。でも、だからといって、今更他のグループの処に行くのも、何だか気が引ける…。せっかく築き上げてきた立ち位置を壊す程、アタシは強くない…。


結局、アユとの友達ごっこがやめられず、何時も通り彼女のいいなりに、アタシは振り回される一日だった。最近、アタシは明日になるのが恐くて、夜になると泣きたい気分に陥る。


「あークソッ!どーして、こう!!…っ」


今日の事が、鮮明に思い出してしまう。あの時、篠原さんと、目が合った時の、彼女の顔…。泣きそうな、顔だった…。どうして、助けてあげなかったんだ!という罪悪感。でも、もし、助けてしまったら、アタシの立場は一気に下がる事、間違いなし。

そんなのイヤ…ッ!!

アタシは枕に顔をうずめ、声を押し殺して泣いた。暫くそのままの状態が続いていた時、メロディーが耳に入ってきた。

「……アユからだ…」

出たくない…。

でも、出なきゃ後で、問い詰められて、無理矢理何かおごられさせられるハメになる事、間違いない。勇気を振り絞って、出た。


「…もしもし?」

『もっしー?元気ないなぁ』

「寝る時間だからだよ…。其れより、何の用…?」

『篠原がさ、リスカして、意識不明の状態だって、連絡網が回ってきてさ。迷惑な話だよねぇ』

「し…篠原さんは、無事なの?」

『さあー?アタシも、そこまで具体的な事は…。ってか、さぁ。別に好いじゃん!あんなの事なんかぁ…」


「良くないッ!!」

つい、怒鳴ってしまった。言い訳を言おうにも、既に手遅れ…。


『アンタってさ、アタシ達と、別の空気なんだよね』

「…っ」

『アンタ、高校デビューでしょ?変な処でマジになってんし、バカじゃねーの?』


電話が切れる音が、無情にも響き渡る。反響して、聞こえる。

篠原さんが居たから、今までアタシは、虐められる事はなかった。彼女がクラスに居ない今、次に虐められるのは多分、アタシ…。



「何、怖がってんのよ?人を、虐めておいて」


聞き覚えのあるような無いような声が背後から聞こえ、肩越しに振り返る。

え?アタシ、疲れてんのかなぁ。だって、篠原さんは今、病院で…。


「あのぉ、本人ですけどっ!マホさん」


…って事は、篠原さん、もう……。


「いやいや、生きてますから!…まぁ、生死の境目に居るのは、事実だけどね」

「な…ななっ、何で、何で、貴女が……ってか、アタシの心の中読まないでよッ!」

「読んでんじゃなくて、貴女が勝手に、喋ってるんじゃない」


アタシはバッと手で口を隠すが、もう遅かった。

篠原さん、笑ってるし…。


「…ねぇ。虐められるの、恐い?」

「……え?」

「恐い?」

「……うん、恐い。息苦しくて、アタシはまるで、現実に存在してないんじゃないかっていう錯覚になる」

「……」


何でアタシこんな事、篠原さんに話してるんだろう?これじゃあまるで、昔自分が虐められていた事を、暴露してるようなもんじゃん!

篠原さんは黙って聞いていた。

だから、恐かった…。

意識が戻ったら、皆にその話をチクんのかなぁとか、其れを理由に、お金をせびられるのかなぁとかっていう、不安が、脳裏を過ぎった。


「ばっかなんじゃないのっっ!?」

「…っ?!」

「虐められる事は、誰にだってある!ずっと誰かを虐める側で、自分は虐められずに生涯を終えられる人っていうのは、不幸な人間だけよ!!」


え?篠原さん、何って言った?

篠原さん、泣いてるし。どうしよう…。また、彼女を虐めてしまった…。

アタシは、そっと、篠原さんの頭を撫でた。

泣かないで。悲しそうな顔をしないでよ。

篠原さんは顔を上げた。


「私、マホさんと、友達になりたかった…」

「……え…」


篠原さんは、そう告げると、姿を消した。






翌日。

予想していた通り、下駄箱には、沢山のゴミが入っていた。これは、まだ、虐めの序章に過ぎない。

辛い。泣きたい。そんな気持ちが表れ、固められた拳が小刻みに震えるが、その反面、アタシは、酷くスッキリとした気持ちだった。


『虐められる事は、誰にだってある!ずっと誰かを虐める側で、自分は虐められずに生涯を終えられる人っていうのは、不幸な人間だけよ!!』


篠原さんの言葉の意味、今なら理解出来る。

確かにアタシは、アユ達と篠原さんを虐めてた時、負の感情しかなくて、幸せな気持ちじゃなかった。毎日、何時虐められるのかって、不安だった…。

そう。単なる、友情っていう名の、弱いもの虐め。アタシ達は、最初っから、友情ごっこをやっていたのだ。

「マホ、おはよ。あらぁん?マホの下駄箱、何だか汚れてなぁい?」

いつの間に居たのか、アユはアタシの下駄箱を見るなり、わざとらしい口調でそう言った。その、外見とは不釣り合いな甘ったるい喋り方がウザい…。


「あれ?無視ですかぁ?何時からそんな身分になったわけぇ?」


そう言うなり、手に持っていた飲みかけの紙パックジュースを投げ付けてくるアユ。此処で相手したらアタシの負けになる。文句を言いたいのを我慢して、アタシはそのまま教室へと向かった。後ろで舌打ちが聞こえた気がした。

教室との距離が近付く度、心臓がバクバクする。息が出来ないんじゃないかってぐらい、呼吸が荒くて、何度も酸素を吸って二酸化炭素を吐く。その繰り返し。

「あれぇ?入らないの?」

教室の後ろドアの前で、立ち尽くしてしまう。入らなきゃ…。アユは、ニヤニヤとした顔で、アタシを見ている。このままじゃ、アユの思う壷だ。

でも、やっぱり――…。


「マホさんッ!!」


声のした方へ、肩越しに振り返った。

嘘…どうして?

目を疑った。でも、やっぱりそうで…。


「篠原さん、病院は?」


アタシの前に立ち、アユは篠原さんを睨みつけながら聞いた。何時もオドオドしてる篠原さんは、今は、堂々とした態勢で、「退院したの」と答えた。


「嘘、おっしゃい!!どうせ、抜け出してきたんでしょ!」

「まぁ…」

「ほぉーら、やっぱりぃ。何で嘘ついたのかしらねぇ?」

「貴女に話す必要性はないから。マホさん、行きましょ?」


アタシの手を掴み、教室に背を向け、何処かへと向かい歩きだす篠原さん。

うわあぁ。アタシより手ぇ小さいし、苦労皴ってヤツがある。大人の手だなぁ…。


「待ちなさいよ!マホっっ!!」

アタシの足は、自然と立ち止まった。


「好いの?アタシより、篠原さんを選んで?同級生達から無視されたり、虐められたりするわよ?」


冗談なのか、本気なのか、分からない。でも、その先の恐怖が脳裏を過ぎって、自然と足は、生まれたばかりの馬のように、ガクガクと震える。アタシの気持ちを察してか、篠原さんは、手を離した。背を向け、歩きだす篠原さん。



「……マホさん?」


ハッと、我に返る。気付いたらアタシは、篠原さんの肩を掴んでいた。


「アタシ、篠原さんと、友達になりたい!アユ、ゴメン!」


篠原さんの腕を掴み、何時もは守っている校則を破って、廊下を全力で走った。

やっと足が止まった先は、校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下だった。人気はない。当たり前か…。一時間目、始まってるもんね。


「はぁ…はぁ…」

「…はぁ……はぁ…マホさん、有難う…。嬉しかった、わ」

「マホで好いよ、篠原さん。ねぇ?まさかとは思うけど、今の状態って……」

「うん…幽体。まだ、意識が戻らなくて…。あ!私の事は、ユナって呼んで!」

「ねぇ、ユナ。リスカ、習慣的にしてた?」


「……っ」

アタシの質問に、ユナは暫く答えなかった。


「やっぱり、其れって…」

「気にしないで!私、こーゆう事には慣れてるし……」

「駄目だよッ!!」

「…?!」

「駄目だよ。自分の身体を傷付けるなんて、折角、生まれてきた命なのに…、そんな悲しい事、冗談でも、言わない、で……グズッ」


アタシは泣いていた。誰に対してなのかは、分からない。でも、篠原さん―…うんん。ユナには、生きてほしいから、だから、口が裂けても言えないぐらい恥ずかしい台詞を、口走ってしまったのかもしれない…。


「有難う」

「ユナ゛…」

「泣かないで、…ね?」

「だ、誰のせいでぇぇ!!」

「私、ね。本来なら、とっくに、意識戻ってても、おかしくないの」

「え…」

「でも、恐かった。また、虐められてしまうんだったら、死んだ方が好いのかなぁって、思った」

「…」

「でも、今は、生きたいって、思うの」

「ユナ…!」


「意識が戻ったら、私と、友達になってくれますか?マホさん」

「こちらこそ、ふつつか者で重たい性格をしてますが、宜しいですか?」



アタシ達は、ほぼ同時に吹き出した。友達と本気で笑い合ったのは、何時以来だろう?ユナは意識を取り戻す為、病院の方へと向かい、姿を消した。そしてアタシは、担任にこっぴどく叱られたのは、言うまでもない。


そして、翌日。

ユナの意識が戻ったと、朝のホームルームで聞かされた。クラスメイト達は驚いた反応や、顔を青ざめる人達が殆どで、アユも例外ではなく、肩を震わせていた。
















後書き

初出【2012年3月7日】の一部修正&削除を除き、ほぼそのまんまの文章の配列に後書きを改めて読んで……やっぱりあの頃の自分は、尖ったキャラを描くのがマイブームなんじゃないだろうか…と思いました


読んでてほんっっとうに……気分が悪い!!!ってかアユちゃんなんなの!?ねえ?!\\\٩(๑`^´๑)۶////となりました

でも最後はハッピーエンドっぽい結末だったので、まあ…まあ……終わり良ければ全て良し!という事で(`・ω・´)((←⁉️

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