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31話 魔王がゲームとして世界に·····



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


現在·····午前八時。有名なゲーム専門店の前で私は一人で並ぶ。


この専門店は日本の五本の指に入る超屈指の有名専門店で他県からもよく買ってくる人も居る。そのため朝早くに来ても結構並んでいる状況である。


(これは·····買えるか?)


前には百人以上。在庫が分からない以上不安は残る。


(まぁ。買えたら御の字程度に思っておくか。)


ケータイをいじりながら前へ進む。ある時ニュースの一つの記事が気になった。


『 有名アイドル!!美帆奈(みほな) 美夜(みや)ちゃんがVRゲームに!!スピリチュアル・トーテム・ワールドに出演!!そこで、かの美声が聞けること間違いなし!! 』


という大々的な記事に苦笑いをしてしまう。どこから経費を持ってきたのか分からなかったが、有名になれば期限が重要になるのでため息を吐きそうになる。


(まぁ。その分お金も増えるんだが。)


·····普通にお金が増えてくれなければ困るが、使わない身からすると何に使えば良いのか迷ってしまう所ではある。こういう時ぐらいしか分からない。


その後は平和に·····いや。後ろから野郎共の発狂が聞こえるので、もしかしたら彼処(そこ)から売り切れなのかも知れないな。


その後も順番は続いていきとうとう自分の番が近くなる。


チラシには『 一人一つまで!! 』というのが書いているし、店員さんが拡声器で声に出している。


余程在庫が厳しいのだろう。まぁ。初日なので当たり前では有るが。


VR機とゲームを一つずつ·····十万は余裕に消し飛び懐が寒くなる。これは少年少女達が買える値段じゃないな。


これならあと一週間はこの店も繁盛するだろう。などと他人目線で見つつも元々買う予定の物は終わったので即刻帰宅。高校の時は帰宅部に入っていたので帰るスピードには自信があるぞ。


·····と、変なことを考えながら早足で帰宅。帰る頃には12時を超えていたので彼処(あそこ)に3時間並んだと考えると持てなかった人の執念は凄そうだ。


(買って帰ってきたが·····先に見せてからお昼を作ろうかな。)


そうなことを考えながらドアを開けると·····


「お帰りなさい。ルース」


「あ。あぁ。ただいまヒスイ、良く帰ってきたのが分かったな。」


「何となく勘がそう言っていたような気がして·····待っていたら本当に来たので私もビックリしました。」


「そうなのか·····」


彼女の能力に少し畏怖を覚えながらも玄関で靴を脱ぎ廊下へ行く。


「お昼ご飯作っておきました。」


「作ってくれたのか?」


「はい。私も手伝いたかったので·····迷惑だったでしょうか?」


ヒスイがシュンとする表情をされると断れない·····


「大丈夫だ。ありがとうお腹は空いていたからな。」


「本当ですか!良かったです!!」


私は彼女の頭を撫でて褒める。実際やってくれたおかげで早くご飯が食べれるので嬉しい。


「お主らー!!飯が冷えてしまうのじゃー!!」


リビングからの魔王ことミルミの速達の返事が来たので二人で少し笑いすぐに向かう。


初めはご飯。元々先に魔王ミルミに見せるつもりだったが何だかんだ私もお腹が空いていたので先に食べてしまうことに·····


(それに·····暖かい方が美味しいだろうしな。)


どんな場所でも信頼している人の料理は美味しい。それも女子なら尚更。早く食べるに限る。


今日の献立はお昼ということもあって魚の丼があり、ちゃんと彩りをつけているため見た目も綺麗で味も美味しい。


「ど···どうでしょうか?本を見て頑張りましたが初めてでして···不味かったら食べなくても平気です·····。」


「いや。すごく美味しい。ヒスイ」


「うむ。中々の味じゃぞ。」


「二人とも···良かったです。」


不味いはずがない。雰囲気的には素朴な味ながらも安心するので食べても食べても美味しい。数分ですぐに完食してしまった。まさかヒスイが料理の才能があるとは·····。新しい発見だな。


今ある机にあった料理を平らげ、少しお昼の休憩をした後、ミルミを呼ぶ。


「ミルミ。」


「なんじゃ?」


「さっき買ってきたゲーム機だ。」


目の前には輪っかで中心は少し空いている。そしてゲーム用のソフト、この二つを魔王ミルミに見せる。


「うむ。嬉しく思うが·····膿は要らぬ。」


「どう……いや。·····事情を聞いてもいいか?」


急なことに驚く……

ミルミの顔を見て悲しそうな表情見て、話す言葉を変えた。

私も真剣な表情で事情を聞くことにした。


「うむ。一日考えてある程度こちらの事情も知ったがの。膿はやっぱり向こうの世界が大好きじゃ。もちろん、こちらを貶しているわけでは無い。しかし元魔王として()()うとに生きるのは違うと思うのじゃ。」


「向こうは何かの拍子で死ぬ可能性があるぞ?」


「分かっておる。しかも膿は魔王。人類の敵じゃ。でも、今は魔王としての矜恃を務めなければならぬ。やらなければならぬ事がある。」


「そうか。·····聞いていいか?·····ミルミにとってのやらなければならないこと。」


「生々しくなるぞ?」


「私は別にいい。ヒスイは?」


「大丈夫です。そういう裏の感情は分かっていますし見ても来ましたから。」


「そういうことだ。」


「·····うむ。聞かせるとしよう。」


ミルミが抱えた裏の思い。達成しなければならないことをその重い口から開く。


「まず、結論から言うとしよう。膿がしたいのは復讐じゃ。」


復讐·····現代日本では聞くことはあれど、やることは有り得ない。いや。有り得ていても行動は出来ない単語。


「復讐相手は?」


「魔王元幹部、二つ名は殺戮者。名はグルトルム。殺戮のグルトルムじゃ。」


名前からして危うそうな人物そうだ····


しかし、疑問が残るな。元幹部が敵とは。


「二つ名は物騒だが、何故幹部を復讐したいんだ?」


「彼奴は、膿が最も信頼していた友を殺したのじゃ。·····笑顔でな。」


手に力が篭もり、顔が歪む。素人でも分かる殺気が辺りを支配する。私とヒスイは少しの間。動けなかった。しかし、それだけの気持ちがあるのだと納得もする。


そのぐらいミルミは復讐相手のことを本気で殺そうと考えている。

事情は分かった。しかしだからと言って……「 はい、そうですか。 」とはならない。事情を聞いた身としては。それが要らぬお節介だったとしても。


「なら敢えて言うぞ?復讐はなんの為にやるんだ?」


私には覇気は無い。反対に身体は小刻みに震え、背中からは冷や汗が流れている感覚がある。でも、相手の目を見て真剣に聞く。相手が違う道に行こうとするのなら止めさせてもらう。それが会ったばかりの強き少女で合ったのだとしても。


たとえ力が及ばずの(じぶん)で合ったのだとしても。

今いる、手に届く範囲の見ている人だけでも考えて行きたい····。


「膿は·····自分自身のためじゃ。前に進む為彼奴を倒したい。」


「それをして貴方に何を得る?」


「前に進むのじゃ。蹴りを付けて前に進むためじゃ。」


なるほど。理解はした。でも。まだダメだ。

この質問では足りないな。


「ミルミは前に進むためと言った。でも。世の中そんな甘くは無い。本当にそれで満足して先に進めるのか?」


私の質問にミルミは深く黙る。

元々。分かっていたのだろう。ミルミ自身も本当に復讐をしてはい!終わり!とはならないことを。

本当に苦悩して苦悩してしかし、どうしても相手が暢々(のうのう)と生きている事に許せなくて。


でも。そんな事をしても親友はそんなことは望んでいないことを知っていて。


「確かに。お主の言うとうりじゃ、膿の自己満足。己の欲望を満足したいだけじゃ……じゃが。」


さっきまで俯いてか弱かった少女は私の目線を合わせる。

·····私は少し笑ってしまった。


どうやら魔王の中で決めていたらしい。


「膿はどうしても彼奴(あやつ)だけは許せん。」


「そうか。」


··········まぁ。これなら平気か。


でも。まだまだ心配だな。


「なるほどな。·····分かった。手伝うよ。」


「なぬっ·····?」


「良かっですね!ミルミ。」


ヒスイは話が一段落するまで静かに見守ってくれていて話が終わるとミルミの助けになってくれる。このままいい関係になって欲しいな。


「ど、どういうことじゃ?何故褒められる?」


「ミルミは凄いと思います。嫌な経験をした人も見た事も有りました。でも、ミルミは違います。自分の意見を正々堂々と目の前で言える子はそんなに居ませんし。その上で意見を突き通す事が出来る人も少ないんですよ?」


「それは、膿が魔王だから·····」


「確かに、魔王は意見を突き通さなければならないですが、それは国の為に突き通すもの。プライベートの感情を突き通すのとはベクトルが違いますよね?」


人は物事を、自分のことを語ろうとすると、しり込みをする。でも、ミルミは言えた。それは誇っていいことだと私は思う。


「·····その。ぷらいべーと?やら、べくとる?やらは分からぬが膿がしなければならないと思っただけじゃ。」


「それが凄いんですけどね·····昔は私も出来ませんでしたし。」


「ヒスイ·····」


ヒスイは弱い訳では無い。施設という監獄で固定概念を植え付けられ、知らない間に教え込まれたものを違う見方で考えろと言われる方が酷な事だ。


私は重い空気をかき消すように手で叩き。


「残りのご飯を食おうか。」


元気に話しつつ笑顔で言った。


私は一度失敗した。せめてヒスイとミルミには幸せになって欲しい。

残酷な運命は少しの力で抜けることは出来るのだから。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


誤字脱字を修正しました。

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