23話 野郎と野郎と野郎·····みんなは居たいか?俺は見たくない。〇ね!!
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「おい。そこの嬢ちゃん。」
始まりは簡単。相手からの声掛け。普通にガタイの良い人で何か普通の用事があるのであれば私も止めはしないしどうぞご自由にというのだが·····
(こいつ。下品な目付きだな。)
多分第三者から見ても分かるぐらい。コイツとやりたいです。と言っている目をしている。
当然そんな目をされれば女性は誰だって不愉快になるし不安にもなる。自分の思いが言えない子は怖くて震えてしまうだろう。
そしてヒスイも後者だ。誰かに無理やり誘われれば断ることはできない。それを目当てでやっているのなら腐って居て反吐が出る。
ヒスイはこちらを見て助けを求めている。
しかも、私の服の裾を少し持っていることからも丸わかりだ。なら助けることは男として当然だろう。
「すいませんがどちら様ですか?」
私は野郎とヒスイの間に入り見せなくする。
「あ?お前に聞いてねぇーよ。こっちの嬢ちゃんに聞いてるんだ。要らねぇから引っ込んでろよ。ヒョロヒョロクズ。」
ふむ。どうやら私が喋ったことに癇に障ったらしい。そもそも。ヒスイはこちらのパーティーなのだが。
「すいませんが、彼女が怖がっているので私が聞きますよ。」
例え相手が怒っていようとも冷静に対処する。これはどこに行っても重要な技術だぞ。少年少女達よ。
「てメェに聞いてねぇーんだよ。喋るな。喋りたいなら1回やってから喋るんだな!ガッハッハ!!」
どこに面白さが有るのか分からなかったが皆少なからず笑っている。そしてヒスイも俯いてよく分からない。まぁ。彼からすれば私はまだまだヒヨっ子だし実際にそうなのだが時と場所があるだろうに。
「そんな所に勇気を持たれても困ってしまいますがもしかしてプライドの高い方でしたか?」
「あ?」
皮肉にならない様に言ったつもりだったがどうやら怒ってしまった。はて。どうするか。
「何だと?殴られても仕方ねぇーよな?喧嘩を売ったのはそっちだよな?」
「別に喧嘩を売った覚えは有りませんがそう思うのならそうなのでしょうね。」
幸い喧嘩になっても料理は無くなっているしヒスイさえ守れればどうにでもなりそうだが出禁になりそうだよな。いい店だったのに。
「ハン。オーオー分かった。死ねよ。クソガキ。」
そう言って目の前に拳が飛んでくる。机は右に吹き飛ばされているがヒスイにはなんとも無さそう。それを確認して私は目の前に少し集中する。ただ自分の右手と相手の右手手首ら辺で逸らしただけなのでそんなに力は入れてないが辺りは避けられただけで騒ぎ出す。
「おい。あの狂暴が右だけで逸らされたぞ。」
「確かに見たがたまたまじゃないのか?」
「それでも凄くないか?その前のやつなんて顔面モロに殴られてたし。」
「喧嘩を売らなければ生きていけたのになー可哀想に。」
「世の中関わらない方がいい時もあるよな。見てる分なら良いが。」
経験者は語るとはこの事だよな。この男。狂暴の二つ名を持った悪い意味で有名になっているらしい。
聞いた限りでは惚れた女は無理やり取るだの、お金が無かったら下っ端や自分より下の奴を脅して取ったりして生活してるとか。なんともやるせない男だよな。
流石に騒ぎ過ぎて店に被害が出始めてる。それは私としても困るので外に出る。
「おい!!テメェ!!逃げる気か!?」
「逃げる気は無い。来るなら来い。外で受けてやりますよ。先輩さん?」
「うぜぇな!!いいからくたばれよ!!」
そう言って行き良いよく出る。右から左のフェイント有りの喧嘩。ランク的にはレベル8ぐらいか?ただなーー。
(分かりやすいフェイントでどうもありがとよ!!)
相手の右の腕を持って背負い投げをして飛ばす。少し離れて野次馬は見ているので被害は無い。
「要らねぇから失せろよ!!クソガキ!!死ねよ。」
「··········」
同じことを何度も喋られると流石に疲れてくる。まだ諦めてくれないのかこちらを睨み付けながら剣を引き抜いた。
(やっぱり来ちゃったかー)
何となくそんな事になるんじゃないかと思ってた。直感が危機感を煽ってくるので無ければ無いで良かったが世の中そんなに甘くは無いらしい。
「ヒヒ。お前が死ねばあの女は俺の物だよな?」
「いや。彼女は所有物じゃ無いですけど。」
「知らね。死ね。ヒヨっ子。」
怒りがほとばしり過ぎてとうとう口数も少なくなる。殺意すらある光景に流石に疑問に思う。ゲームはここまでクオリティーを意識してない。ここまでしちゃうと小さい子達が出来ない。何か噛み合わない気がする。
目の前に剣が左右から抜ける。さっきも警戒はしていたがこれは違う意味で警戒を上げないと行けない。話し合いで止まるのはもう過ぎたかも知れないな。結局は力か。
「冒険者とは冒険をする人のこと。」
「ごちゃごちゃ言うんじゃねぇェェエエ工!!!!」
「こんな醜い醜態を晒すために冒険者をやっているなら辞めろ。ちゃんとやっている冒険者が余りにも哀れになる。」
「··········っっっっラァァァァアアア!!!」
最後の本気の振りを手首を掴んで止める。流石にその光景に辺りはシーーンと止まり状況の集結に集中している。
「冒険者に謝れ!!!」
止めた左手首をそのまま固定しつつ右手をグーに変えて相手の頬に思いっきり殴る!!
ボォンという音とともに男は殴られ2~3回回って止まる。私はこの世界に来て初めて人を殴った。感触は最悪だな…と考えていると辺りが騒ぎ始める。
なんだ?と思っていると裾をちょんちょんと引っ張られたのでそちらに向くと目に雫を貯めたヒスイの姿。
「ヒスイ。大丈夫か?」
目線を合わせて優しく聞こえる声で話し、相手の話してくるタイミングまで待つ。
「うん。うん。ルース。ありがとう。怖かった。あの人前も絡んできて怖かった。」
「そうか。よく頑張った。偉いヒスイ。」
頭を撫でて安心させると急に抱きつかれた。
「ありがとう。ルース。私。貴方と一緒に居て良かった。」
その一言は予想外で恥ずかしかったが、でも。ヒスイが少しでもこの世界を楽しく思ってくれるのなら私のやった事は良かったと思えるから。
これからもよろしく頼む。ヒスイ
「ルース。私。これからも一緒に居るね。絶対。」
「そ···そうか。どうも。」
新たな仲間が見つかったよ!とBGMが流れそうだ。
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