11話 少女の過去
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夕食を食べお風呂に入り、休憩。それはごくごく当たり前の日常ではあるがそこに華やかさが付くとまた違う雰囲気になる。
少女·····和泉翠華
魔法少女という特殊な環境にいながら政府の助けも借りられない迫害対象。
そんな理不尽極まりない状態で私のことを見ている。
その表情に悲しみや苦しみは無い。ただ毎回何かを言おうとして喉の辺りで止まるのをよく見ている。
不安は取ってあげたい。でもそれで少女の心の内に傷をつけたら元も子も無い。なので静観をしてしまう。和泉さんが言うまで待ち続けてしまう。
ただ·····とうとうその固く閉ざされた門が空く時が来た。
それはゲームが終わり全て終わらせ就寝に入ろうかと言う時。少女がポツリと話す。
「新崎さん。話を聞いて貰っても大丈夫ですか?」
「あぁ。聞かせてくれ。」
少女は震えていた。きっと辛い過去があったのだろう。それを静かに聞く。
「私、前監禁されていたんです。」
「···············っ。」
あまりにも予想と外れた……いや。ある意味では分かっていた。
私の中で言葉に何かを返す言葉が思い付かない。
「私、ずっと世界は狭いコンクリートの中だけだと思っていました。」
コンクリートの···中…か·····。
「寝る時も食べる時もお風呂を入る時も着替える時も勉強をする時も全部全部見られていたような気がします。」
少女に取っては休める場所のない籠の中の動物園みたいな物。
「でもある時、出られたんです。ドアが少し空いていて、出て逃げて海という大きなものを見てあそこの廃墟に居着いてました。」
「不安で怖くて苦しくて、いつ見つかるのか分からない恐怖が支配して元の場所に戻ろうとも考えました。」
「そして最後に思い付いたのが死ぬことだったんです。こんなに綺麗で素敵で大きな海を見ながら死ねるのならいい事なんだろうと思って。。」
余りにも一家の兄の話としては重すぎる。でも。少女は私では分からないぐらい苦しんで来たのだろう。言葉で言い表すことは出来ない。
しかし分かったこともある。
それは·····私を信じて話してくれたことだ。
「でも。新崎さん。」
私の名前が呼ばれる。私は少女と視線を合わせ、驚く。その瞳はキラキラと綺麗だった。
「貴方に出会えて良かったです。私を救ってくれた王子様。」
清々しいほど綺麗な笑顔。なんにも迷いのない言葉に反対に私が戸惑ってしまう。
「でも。もう出ないと。」
しかし··········
そこで少女は目線を窓の方へ向ける。
雲行きが怪しくなり始め嫌な予感が頭を過ぎる。
「貴方に迷惑はもう掛けられません。」
私はその言葉に下を向く。過去最高の速さの回転が頭の中で出てくるような感じがする。
「なので·····わか「ちょっと待った。」れま·····えっ?」
私は咄嗟に言葉を紡いで止めてしまった。何かが頭に出た訳では無い。そうしなければならないような気がしたから。
「和泉さん。話を終わる前に私の話を聞いてくれませんか?」
「え···えっ?···は···はい。」
急な私の言葉に驚きつつも聞いてくれる体制に入ってくれる。そんな所が彼女の優しく純粋な所にのかもしれん。
まぁ。戸惑っているようだが。
「和泉さんはこれまでの人生で楽しいと感じたことは有りますか?」
「え·····えーと。楽しい···です。。」
「私も楽しかったです。」
「は……はい?」
意図に掴めずに困惑する和泉さん。
「私も貴方も孤独です。まだまだ喋っていない複雑な事情があるかも知れません。でも。楽しい。ここにいて良かったと思ってくれた。ならそれではダメなのでしょうか?」
ここまで言えば私の意図に気づき始める。
そう。人は何かに進む時は孤独だ。彼女は人に決められた檻から脱出し自分の道を歩こうとしている。
ならそれを助けたいと思ってしまうのは偽善だろうか?
「私は貴方を知っているようでまだまだ知りません。わたしは、これからも進み続けます。わたしは!あなたを見て進もうと思いました。貴方は·····強くない子ですか?」
「しん、ざき···さん。」
「和泉さん。まだまだ浅く脆い関係。でも強く楽しい関係にも出来ます。私は1人が怖いです。でも進み付けるつもりです。私の勇気をくれた人の為に。」
私は説得しているが、結果これも感情論。向こうで出ていくことが固まっているのならこんな言葉は通らない。
私の願いはただ一つ。楽にしてあげたい。
「新崎さんはいつも優しいです。」
スっと心に響く優しい声が横から聞こえた。
言葉には何か違う意味にも聞こえた…が、次の言葉が来たのでそれを飲み込んで聞く。
今はきっと聞くことが大事だ。
「新崎さんは。どうしてそんなに苦労するとわかっている方向に進もうとするんですか?」
和泉さんの純粋な疑問から来たのか首を傾げてこちらに質問をしてきた。
そしてその言葉の意味を少し考えたが、どうせ。考えても出て来ないと思い、今感じている事を話した。
「そうだな·····私は聖人君子ではない、だけど、身近にいて…手の届く範囲にいる人がいて…悲しそうな子を救いたいと思っている。それってかっこよく見えないか?」
私は少し冗談ぽく言いつつも本音を言った。
「それは治すこと出来ない難解な病気で合ったとしてもですか?」
しかし和泉さんは真剣に一切笑わずに質問してきた。
「あぁ。私の考えうる限りを尽くして救う。寂しい思いをする子を無くす。」
「··········こちらにいてもいいですか?こんな人に苦労させることしか出来ない厄災な少女でも。」
その言葉に少し笑ってしまう。
苦労させることしかできない災厄な少女?
「和泉さん。少し違う。」
「??」
「これから人々に勇気や希望を与え笑顔にする将来有望な人材を見つけて独り占めしようとしている一人のファンだ。」
私はそう言って出来るだけ笑顔で本心に話す。こんな薄汚い場所で悪いね。オジサンは一人は寂しんだ。だから強く優しく生きないと。
「·····ふふ·····ふふふっふふふ。あ···ふふ··ありがとうございます。まさか。そんな言葉を貰うとは思いませんでした。」
本当にそんな事を言われるとは思っても居なかったのか少しびっくりしたあと、目の端には雫を貯めながらも笑顔で話してくれる。
「新崎さん。ありがとうございます。·····いえ。」
苗字で呼ばれたがそれを自ら止める。
何かを確認するように数秒間目をつぶり静かにいた。
そして前とは違う何かが吹っ切れた顔で呼ばれた。
「慎さん。これからよろしくお願いします。」
「あぁこちらこそ頼む。翠華さん。」
私の出来うる限りはした。
後は和泉さん·····いや。翡翠さん次第だ。
心の中でそう言って和泉さん改めてすいかさんに変わり新しい一ページになるであろう物語の終着点を変えたのだと思う。
魔法少女。それは災厄をもたらすと言われる人達。その裏側はか弱き少女達が醜い大人たちに支配されている現代の奴隷。
私は一人で全てを救おうとは思ってはいない。そもそも出来るとは思っていない。でも。救いたい。辛い事がわかってしまったから。
私が憧れ夢を持って突き進むだ輝かしい少女のように……。
皆が誰か一人の人生に加入し助けようとしている。これからもあるかも知れないし、反対にこれ以降無いかもしれない。
私もできる事をやりたい。もう。あんな後悔はしたくないから。
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誤字・脱字や編集を致しまた。




